prologue
そこにいたのは十数人の少年だった。
「おいッ」
1人の少年が声をかけたのは、少年達の中でも一際小さな、中学生ほどの体つきの帽子を被った少年だ。
帽子からはシルクの様になめらかそうな白い髪が見える。
「例のブツは持ってきたのかッ」
少年達が、さながらゾンビの様に白髪の少年の周りに群がる。
「心配しなくても。ほら。持って行ってください」
白髪の少年は少し独特の間を持った話し方で少年達に小さな袋を投げ渡す。
「お、俺んだ!」
「ふざけんなこれは俺のだ!」
「テメェ多くとるんじゃねぇ!」
「俺によこせぇ!」
阿鼻叫喚というのはまさにこのことだろう。
数少ない袋をめぐって男達が奪い合い、殴り合う。
下手をすれば相手を殺しかねないほど鬼気迫って袋を取ろうとする。
「あははっ。これはすごいですね」
白髪の少年はその様子をただただ見ている。
「【桔梗】。何を遊んでいる」
「あ。【椿】。どうしたんですか?」
【桔梗】と呼ばれた白髪の少年の背後には大男がいた。
身長は2メートルほどになるのではないかというほど高い。
それでありながら身長に見合わないほど細い、とはいっても筋肉はそれなりについている大男。
「流石に遊び過ぎだぞ。我々の目的を忘れたか」
「やだなぁ。ちゃんと覚えてますよ」
ニヤリと【桔梗】は恐ろしい笑みを浮かべる。
「『災禍』の混沌をこの世界に。彼らはその礎ですよ。あははっ」