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始まり
『ご臨終です。』
白い部屋に無機質な声が響く。
『やだっ、蓮! 目を覚まして! お願い…… やだ! やだ! 蓮!!!』
『おいっ!何寝てんだよ!?早く起きろよ。穂香が泣いてんだろう!いい加減にしろよ……くそっ』
男女の慟哭が部屋に響き渡る。
その隣ではとめどなく流れる涙を拭うことなく、ただ、ひっくひっくと嗚咽する女の子が一人。
そして白衣を着た医師とみられる男性とその補助として看護士が二名ベッドの横に立っていた。
ここは不知火病院。
全国的にも有名な大病院だ。敷地は広いし、神の手なんて言われる医師まで在籍している。
その中の緊急病棟の隅の部屋で、この騒ぎは起きていた。
「蓮」という男が亡くなったことが原因で慟哭が洩れているのだが……
「あれ、俺やっぱ死んだの?」
当の本人は、いたってマイペースに、自分の身体と友人の姿を、医師の隣から見ていた。