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プレゼントが欲しければいい子にして寝ていること

クリスマスの、子供部屋に広がる煙幕。

腕白な男の子、狡猾な女の子によるトラップに掛かったサンタクロース。


「やれやれ」

男の子が背中からどいてくれたおかげで、少しは動けるようになった。

作業を開始できる。

赤いモフモフの服を身にまとった男は、先ほどポケットに突っ込んだ手を出す。

手には、短刀が握られていた。

侵入時に使ったものである。

「本来は窓切り用なんだけどね」

折り畳みナイフのようなそれをパチリと開くと、超振動のブレードが、たこ糸をぷつりぷつりと引き裂いていく。


「見えない………」

「げほっげほっ―――くっそう、サンタめ!卑怯な真似をしやがって!」

むせながら毒づく子供たち。

自分にプレゼントをくれる大人に対して網を投げつけて捕らえたことなどに罪の意識はない。

煙だらけの現場に新鮮な風が吹き入り、矢庭に視界が回復した。

窓を開けたサンタが立っている。

網に捕まって転がっていたはずの一人目である。

その隣には口をだらしなく開けた二人目が、白目をむいている。


「なかなかのトラップだと言いたいが―――まだまだ、甘い。ゆとり化が進んだ今の日本では少ないが、昔はもっと全力で捕まえようとするガチ(ぜい)はかなりいた」

一人目が二人目の背中に手を回して何かの操作をすると、二人目の身体が急速にしぼんでいく。

あっという間に空気の抜けた風船のようなものになった。

「こいつは分身さ。煙幕を吐き出す装置もついている」


赤服七つ道具(セブンズ・サンタ) ―――『二人目の侵入者!』


「クリスマスイリュージョン。子供に捕まった時の対策なんて12種類用意しているし、警察に職質された時の言い訳は24種類用意してある」

大人の余裕を浮かべたサンタに、

「おのれええ!」

激昂し、とびかかる男の子と女の子。

赤い服の男はすでに、その対策を持っていた。

構えていた。

赤服七つ道具(セブンズ・サンタ)  ―――『良い子は寝る時間』………!」

男はスプレー状の何かを子供たちに噴射し、それを吸い込んだ男の子は視線をさまよわせながら急速に脱力した―――二秒と待たずに、倒れる。

意識を失った男の子が床にぶつかる前に、男は片手で支え、激突を防いだ。

「東南アジアかアフリカあたりの子供たちのほうがレベルは高い………。そのほかの国でも、親に傭兵経験がある子などはトラップを複数張っている場合がある」

吸い込みが甘かった女の子は床に座りながら悔しげに睨む。

「君たちみたいな悪い子には―――プレゼントは無しだなぁ」

男が言うと、女の子の目が見開かれる。

「なんてね、嘘だよ」

男は微笑む。

「下を見てみなさい」

女の子は、床に置かれている箱を二つ、見た。

赤と緑を基調としたストライプ、クリスマスカラーの包装が成されている箱だった。

金色の星マークがちりばめられている。

「久しぶりに、なかなか面白かったよ。寒いから早く寝なさい」

女の子は心底喜び、お礼を言おうとしたが。

「メリークリスマス!」

男が叫ぶ。

そして手に持ったリモコンのスイッチを押すと、箱が破け、白い閃光が瞬いた。

女の子の意識はそこで途切れる。





息が白い朝、鳥の鳴き声が意識を撫でていく。

徐々に日が昇っているようだが、寒いし、まだ朝ご飯の時間ではないようでお母さんが呼びに来ない。

二人は布団から出られないでいた。

男の子は、カーテンを少しずらして、朝日に照らされて白くなった窓を眺める。

窓のカギ、錠の付近は切り取られてもいない、綺麗なままの状態だった。

もう少し念入りに観察、精査しようとしたところで、母親の声が聞こえた。


「二人とも、起きなさい!サンタさんが来たの、プレゼントがリビングに置かれているわよ!」


廊下から聞こえたその声を聞き、二人は布団を跳ね飛ばす。

二人は、それが夢だったのかをもはや考えずに、ドアを開けて元気よく駆けていった。


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