狩猟クエスト! 【緊急】聖夜の死闘!サンタクロースを捕獲しろ!
「ああ、君たち」
赤い服を着た男は呻く。
網の中に捕獲された男はいう。
「駄目だよ、君たちこういうことしちゃあ。サンタさん困っちゃうよ、いい子にしてないとサンタはやってこないし、やってきたとしてもプレゼントをあげないの、あげずに帰っちゃうのよ」
網によって動きを封じられた男、サンタクロースと思われる男は呻く。
唇にも、たこ糸が絡んでいるので喋りづらい。
罠にかかった害獣の心持ちだ。
「第一、私がね、サンタクロースだっていう………サンタクロース?なにそれ、そんな証拠がどこにあるんだい?」
「赤い服着てるし、絶対サンタだよ」
女の子は言う。
「あれ、でもおっさん、髭生やしてないね」
今度は男の子。
「ていうか若いね」
そう思うのなら、おっさん呼ばわりはやめてほしいな。
「っていうか………あれ、サンタのおっさん」
「お兄さんって呼んで」
「お兄さん………」
生返事しながら男の子は周りを見回し………いう。
「プレゼント、どこ?」
「モンハン!モンハンXちょーだい」
「エックス?」
「クロス!」
「はぁ」
サンタクロースは気だるげに言う。
「どんなプレゼントかと思ったら、ずいぶん流行りのものを選んだな。『テンプレ乙』………!君たちにはその言葉を贈ろう。一般的なサラリーマンと、そしてOLになるといいよ」
「でも、でもみんな持ってんだよ!」
「ていうか一般でもないよ。だってみんなもう発売日に買っちゃって、クリスマスは別のもの頼んでるんだよきっと」
「わがまま言わない!大人だってそれは思うけどね、我慢してるのよ、あいつのほうが稼ぎがいい、あいつはもう結婚している………あいつのほうが顔がいい、お前はお菓子を食べるときの音がうるさい………」
途中から愚痴っぽい口調になったが、雑念を振り払う。
「でもそれを喚けば何でも手に入るわけでもないの、そんなこと思わないの、そんなことをしなくても、一人一人に良さがあるの」
「よさ。良さってなんだよ」
「君たちが生きているだけで、ご両親は幸せな気分になれるんだよ」
サンタクロースは子供への教育を怠らない。
心のきれいな子供の味方。
それがサンタである。
「えー、でも、欲しいもん」
純粋な子供の欲求で返してくる。
「ただ餌を待っているだけのひな鳥は卒業したいんだよ」
「そうだよ。生きてるだけならニートでもできるじゃん。欲しいものを全力で手に入れるために人生はあるんだよ」
かと思ったら、少し違った。
見たところ小学生かと思われるが、なかなか言うじゃないか。
「はやくクエスト進めないといけないんだよ、ディノバルトとかガムートを倒さないといけないんだ」
「なにそれ、新種?サンタのお兄さんはね、2ndまでしかやってないからわかんないよ」
「新しいモンスターだよ、そいつらを捕獲するための装備とかも、切れ味装備とか考えてノートにメモしてるんだ。あとはもう実践あるのみなんだよ」
「実戦ならもう経験したでしょう。もう君はサンタクロースを捕獲クエストしたでしょう?」
「捕獲したし、じゃあクリアしたからそろそろ報酬くれよ、ていうかプレゼントの袋どこだよ、たんまり持ってきてるんだろ?早く出さねーとここからは討伐クエストになるぞ、サンタのおっさん!」
捕獲の次は鹵獲である。
欲しがりさんめ。
だが、白い袋は今ここに、表立って『存在はしていない』。
「サンタのお兄さん、早く出して、私たちこの日のために作戦を練り直してきたんだから」
女の子も言う………こっちの子も中々、したたかな性格だな。
「ふうむ、わがままな子供は嫌いだがそういうものはいいね、欲しいものを手に入れるために策を練るのはいいことだ、だけどね、大人のメンツを潰しちゃあいけないよ」
「そうそう、こっちも大変なんだから、こんにちは」
それはサンタクロース(?)の男の声によく似た、青年の声だった。
しかしそれは、窓のほうから聞こえてきた。
サンタクロースはにやりと笑ってそちらを向く。
「ああ、やっと来たか」
「こんにちは、間に合ったようだね」
もう一人のサンタが答える。
「えっ!」
「嘘!」
子供たちは驚愕する。いつの間にか、『もう一人』サンタクロースが入ってきている。
捕獲した一人目に気を取られた。
男の子は立ち上がって、二人目のほうをにらむ。
「もう一人………?ていうことはプレゼントも二倍ってこと?」
『一人目』は、男の子のセリフに少し呆れた。
この子すごい欲張りだな。
一ミリくらい尊敬してしまう。
サンタクロース『一人目』は言った。
懇願した。
「早速だが捕まっちゃってさ。ロープ、どうにかしてくれないか」
「今日は忙しいのに、こんなイージーミス。お安い御用さ」
二人目はにこりと笑って、口を大きく開く。
その口は、サッカーボールが入るくらいに大きく、人間離れして開き。
その口から、白い煙が吐き出された。
激流のように。
「うわっ!」
狭い子供部屋に煙幕が急速に満ちてゆく。
「『メリー・クリスマス!』『はーっはっはー!』」
「くっそ、煙幕か!」
聖夜の死闘は続く。
もう少し続きます。




