第二話 夢
「こっちにこないかい、聖?」
そいつは繰り返した。なんだ!?この化物は・・・
「な、何だ、お前は?何で俺の名前を知ってる?」
そいつはフッ笑った。
「なんだ、聖。俺を知らないのか?教えてやるよ。俺は
「お前自身」だ。」
「な、何だって言ってる意味がわかんねぇよ・・・」俺は自分の前で起きてることが信じられなかった。このコウモリみたいな化物と会話していることもそうだが、街道を通る人たちがまるで俺達が
「みえていない」ように素通りしていくからだ。
そいつはそんな俺の恐れおの退いた行動を見て、楽しむ様に繰り返した。
「俺は
「お前自身」だ。」「な、なんでそうなるんだよ。俺はお前みたいな奴知らないぞ?・・・」
俺は自分に
「落ち着け」と言い聞かせそいつに質問した。
すると、そいつはこの世のものとは思えないえげつない声で高笑いした。
「当たりまえだ、普通の人間に
「俺達」が見えるわけないだろ!」
「「俺達」・・・だと?お前みたいなのが他にもいるのか??」
そいつ笑うのを止めてため息をついた。
「しょうがねぇ、見せてやるよ。」
そういうとそいつは
「パチッ」と指を鳴らした。その瞬間、目の前が真っ暗になった。
「きこえるか?聖?」
暗闇の中からそいつの声がした。正体も判らない化物に自分の名を呼ばれるのには少し抵抗があったが、仕方なく返事をした。
「ああ、聞こえるよ。」
「今から目に映ることはお前にとってはぶったまげることだろうが、絶対に声を出すなよ」
俺はそいつの言うことを信じていいのかどうか迷っていた。
「・・・声をあげたらどうなるんだ?」
「声をあげたら・・・死ぬぜ、今も狙われているからなお前は。」
・・・成程。そういうことか・・・不思議なことに俺に恐怖はなかった。恐いもの見たさというのだろう。この感覚は・・・これから起こることに俺は期待していた。「俺の言うことを聞くも聞かないもお前次第だ。じゃあ行くぜ!」
そいつが言い終わると目の前が明るくなった。
(なんだ、さっきまでいた街灯じゃないか。)
しばらくたっても何の変化もない。
(何だ・・・悪い夢でもみてたのか俺は・・・)
何も起こらずぼぉっとしていると、向こう側から人が歩いてくるのが見えた。
(なんだ、人が歩いてじゃないか、やっぱり夢でも見てたんだ。)
向こう側から歩いてくるのは若い女性とさっきみたような化物だった・・・