就職活動
時間がかかりましたが、ようやく書きあがりました。ですが、本論にはまだ、かも?
もう少しお付き合いいただくと、私の本業である人事関連があちらこちらに出てきます。皆さんの実生活の参考にして下さい。
「え、何か問題がございますか?」
爺のすっとんきょうな顔。
「まずはこの会社に入社しなければならないだろう!そのためには最初に履歴書を用意して、送付しなきゃ。まあ学歴は良いとして、家柄は隠さないといけないな。」
「面接の準備もしなきゃいけないわね?」
「履歴書?面接?」
凛々が右手の人差し指を立てて下唇に当て、首を傾げる。
(おいおい、履歴書も面接も知らないのかよ!それにしても凛々可愛いぞ!)
「ほう!真田様は凛々のような女性がお好みで!」
爺がどこから出したのか『パッ』と拡げた白地の扇子を口許に当て目尻を下げている。
(って言うか、黒覆面に黒頭巾だから扇子を口許に当てる意味ないから。そして、凛々赤い顔しない!)
『ゴホン』
「えー、履歴書と言うのは、まあ身上書だな。住民票をかなり詳しいしたものと思ってくれれば良い。そして、面接は面通しだ。」
渡部の説明に爺も凛々も大きく頭を振る。揃っている様は小学生の授業中のようだ。
「でも、岳彦様のような方にその必要があるの?」
凛々からのしごくまともな質問。さっきと同様の仕草がやはり可愛らしい。
「そうだな、普通の状況であれば先ず必要はない。むしろ、今回の2代目オーナーは両手を挙げて歓迎するだろう。言い換えれば、実家から仕事を受けようとしたり、金銭的な援助を受けようとするだろうな。そうすると‥‥」
「ぼっちゃんは仕事をさせてもらえないのだな!」
(凛々正解!お、今度は腕組みかい。しかし、アップされたバスト凄いな!きっと走ると『たゆんたゆん』だな)
「そうよ凛々。ところで真田、あなたなにかふしだらな事を考えてない?」
(リサ、今度はお前かい!何でみんなして俺の考えが読める?)
「それはだな真田、お前の視線と不埒な事を考えている時その対象物に対して30センチ顔が近付くこと、そしてゴホン、下半身が‥‥」
「凛々!真田様がお相手をご所望のようだ。あちらのお客様用寝室で2時間ほどお相手をしてくれないか?」
渡部の言葉を受けてついに岳彦までが、被せてくる。
「ぼっちゃんのご命令だし、真田がそうしたいのなら凛々は構わないのだ。」
(俺ってそんなに餓えているように見える?おい、凛々。頭から湯気見えてるぞ!仕込みぼうきを股に挟んで、内股になるな!ホントに困るだろ!)
「まあまあ、ご冗談はそれくらいにして。本題に戻りましょう。」
「冗談なのか!凛々は構わないのだ!」
(いや、だからそうしたいのは山々だけど秘め事は隠しておきたいだろう!あれ?)
心なしか凛々の姿勢が前のめりになっているが‥‥そしてこれまでと違い上目遣いではあるが、目を合わせてくれている。
「ほう、凛々も真田様の事を、ット」
『キッ』
『ヒュン』
『キキン』
さっきとはうって変わった凛々の視線と共に2本の棒手裏剣が爺に向かって放たれた。しかし、そこは爺、扇子を閉じるや否や打ち落とす。どうやら扇子は鉄扇らしい。
だが、手裏剣よりも俺にとっては放つ際の凛々のスカートのめくれ具合に視線がいく。
「ほほほ、まだまだですな。」
軽やかに笑う爺。しかし、黒頭巾のてっぺんにヒマワリが刺さっていることを本人は知らない。端から見ると凛々が勝っている事が一目瞭然だ。
(お、黒のヒモタイプか?)
『キッ、ボン!』
厳しい凛々の視線。しかし、頭から出た茸雲が初々しい。
「まあまあ、戯れはこれくらいにして。先ずはリサ、履歴書はお前に任せる。大学名と住所に気を付けろよ!そして、岳彦さん。貴方は私たちのレクチャーを受けてもらいます。」
「ええ、渡部さん。貴方に一任いたします。」
この岳彦の一言でようやくドタバタ寸劇に終止符がうたれ、就職活動がスタートすることとなった。