第2話 甘い魔法の使い方
遅れてすいません。
寝床は見つかった。後は、予定どうり魔法を使ってみよう!
寝床の木の下は、他の木が生えていないため少し広い空間が空いている。魔法の練習をするのにはうってつけだ。
小岩井君はおもむろにその場に座って座禅を組始めた。大きな木をバックに座禅を組む大男。なんだか様になっている。僕と伊勢君は立ったままで魔法の練習を始めた。
「…………で、魔法ってどうやって使うんだろう?」
誰からともなく呟いた言葉だが、今ここにそれに答えられる者はいない。誰も魔法を使った事がないのだから当たり前だ。
「うーん。やっぱ、こういうのは体の中にある魔力を感じることから始めるんじゃねえのか?」
「小説とかアニメとかではよく見るよね?多分神様が僕達に間接魔法を使った時に、体から出ていったのが魔力なんじゃない?」
「多分そうだろう。デイティーが偽装魔法を掛けた時も同じ感覚がしたからね。」
まず、魔法を掛けられた時の感覚を思い出す。確か、お腹の底の方から魔力だと思われるものが這いずり出てくる感じだった。そのまま魔力が体の中を蠢きつつ移動して、最後には体の外に放出された。
もう一回あれを感じればいいのだ。なら、魔力が出てきたと思われるお腹の底に意識を集中する。
……………………意識が体の中に引きずり込まれる感覚に陥る。鋭くなった感覚であの時と同じ感触を探す。だが、簡単には見つからない。更に意識を集中させる。何かが蠢く感覚が無いか探す………………「だあぁあっ!!」
急に叫び声が聞こえて集中が途切れる。短時間だったがかなりの集中力を使ったせいか何だかボーッとする。
叫び声の主は小岩井君だ。
「おい、千歳。うるさいぞ。君のせいで集中力が途切れてしまったじゃないか。」
「しゃあねぇだろ。全然魔力が感じられねぇんだからよ。そもそも魔力は体の中にずっとあるんだぞ。そんなもんどうやって感じろって言うんだよっ!!」
「だけど、あの時は確かに感じただろう。体の中を魔力が動いていたのがって…………それだっ!それだよ。魔力が動いて無いから感じられないんじゃないか?空気だって普段は意識する事が出来ないが、動いて風になったり、無くなったりすれば分かるじゃないか。」
「えーと。つまり、魔力を動かせばいいってこと?」
「そうさ。魔力さえ動かせればあの時とおんなじ感覚が分かるからね。」
「で、どうやって動かすんだ?」
その質問に、伊勢君の言葉が詰まる。
「……………」
「やっぱり、何とかして感じるしか……あっ!!」
そこまで言いかけて、名案が浮かんだ。普通では無理なら逆から攻めればいい。魔力は動かせなくても、体は動かせる。
「そうだよっ!逆転の発想だよ。魔力の方を動かすのでは無くて、体の方を動かせばいいんだよ!」
「なるほどな。確かにそれなら魔力の動きを感じれるかもしれねぇな。」
実際にやってみることにする。体を急発進させたり急停止させる時の緩急が大きいほど魔力の動きは感じやすくなるはずだ。取りあえずおなかの部分だけを前後運動してみる。…………うーんなんかよくわかんないな?体の中の物が動いてるっていうのはわかるんだけど、それが内臓なのか魔力なのかよくわからない。
周りに意識を向けて他の二人を見てみると、二人とも一生懸命腰を振っている。森の中で腰を振っている男性3人。なんだか間抜けだ。
それはいいとして、もう一回やってみよう。今度はちゃんとおなかに集中した状態でやってみよう。…結構難しいな、体全体を使いながら、おなかにだけ集中しないといけない。
………うん?今、あの感覚に似た感じがちょっとだけした気が?もう一回だ。やっぱりそうだ!!確かにおなかの中に魔力があるのを感じた。
それをきっかけに魔力を感じるセンサーが鋭くなったのか、体の中にある魔力がちょっとずつ動いているのが分かるようになった。
集中のために気付かない内に閉じていた目を開けると、他の二人も嬉しそうにしている。どうやら魔力を感じ取ることに成功したようだ。
「どう?うまくいった?」
「ああ、上手くいったよ。」
「俺もだ。そういう水華はどうなんだ?」
「僕も成功だよ。」
さて、皆上手くいったみたいだし、次の段階に進みたいな。魔力を感じる事が出来たから、今度は動かすかな?
「じゃあ、次は魔力を動かすかな?」
「そうしてみよう。」
体の中を少しずつ巡回している魔力に意識を戻す。この魔力を自分の思い通りに動かしたい。とりあえず、念を送ってみよう。……動け~、動け~………………駄目だ……全然動く気がしない。
今度は水の流れのようを想像して、魔力をそのように動かしてみよう…………
暫く試行錯誤していたが、あまり成果を挙げれない。魔力を思い通りに操るなんてもっての他、影響を与えることさえできていない。
ただ、色々やっている内に一つ気が付いたことがあった。体の中に2種類の魔力が流れているのだ。片方は特に特徴はないのだか、もう一つに特徴がある。なんというかその魔力は甘い?のだ。実際に味わった訳ではないし、体の中の感覚だから甘いはずはないのだけど、例えるなら甘いという言葉がしっくりとくる。
他の二人にも聞いてみたところ、伊勢君も魔力に種類が有ることに気付いていたみたいで、その数は7種類もあるらしい。小岩井君はその事に気付いていなかったけど、暫くしたら気付いたみたいで、魔力の種類は3種類らしい。もしかしたら、この種類というのは元の魔力と、属性の魔力なのかも知れない。
あと、魔力の感じ方は人によって違うみたいで、僕が味だったのに対し、伊勢君が色、小岩井君が重さだった。
さて、もうちょっと頑張ろうかな。そう思ったところで、目の前にいる伊勢君から光の球みたいなのが飛んできた。
「伊勢君!魔法使えてるよ。すごい!」
「うん、魔力を体の外に出しただけだけどね。」
「すげーじゃねえか。で、どうやって魔力動かしたんだ?」
「体を動かす感覚で魔力を動かしてみた。僕らが直接操作出来るものなんて体位しかないからね。魔力も動かせるならそうだろうと思ったんだ。」
「僕もその方法は試したけどダメだったよ?」
「普通に動かそうと思う位じゃ動かないよ。体を動かす感覚を精密に再現する必要がある。」
伊勢君のいう通りに魔力を動かす。手の動きを確認し、それと同じ感覚で魔力を動かそうとする。だけど、やっぱり動く気配はしない。
そうして、暫く訓練して一時間が経とうかという頃。
少し動かせるようにはなったものの普通に動かすにはまだ、程遠いという出来だ。
小岩井君は半分位の時間で習得した。なので、2人に教わりながら魔力を動かす。ちなみに2人は僕に魔力の動かし方を教えながら、属性別に魔力を飛ばす練習をしていた。上手くは行ってないみたいだけど。
今は2人とも僕の上手く行かない理由をかんがえている。
「何がダメなんだろうな?少しは動かせてるんだから、もうちょっとで行けると思うんだがな。」
「そうだね。途中までは上手くいってると言うことは、途中でなにかに気をとられてるとか?」
「そんな事はないと思うんだけどねー?」
もう一度やってみようかな。
まず、体の中で少しだけ動いている魔力をかんじる。次に魔力を動かす。まるで体の一部を扱うように体の奥から引きずりだす。魔力が動いたことによって魔力がもっと強く感じられる。そのままその魔力を外に押しだそうとするが、逆に魔力はいうことを聞かなくなり、体の中の巡回に戻ってしまった。
「ダメだー。魔力を感じる力は鍛えられてるのに、魔力操作はなかなか上手くいかないよ。」
「分かったよ、水華!魔力を感じ過ぎてるんだ。そのせいで、体を動かすって感覚が薄れているんだよ。」
「なるほど、そうかも!今まではできるだけ魔力に集中するようにしてたから。」
さっきと同じように魔力を動かす。今度はあまり集中しすぎないように。
すると、どうだろう。今まで苦戦していたのが嘘のようにスッと抵抗なく動いてくれる。興奮を押さえながらも、その魔力を外まで持っていく。すると、体から何かが出ていく感覚と共に、ポワポワとした不思議な球、魔力の塊がでてきた!
「やったー!出来たよ。ありがとう二人とも。やってみるよ。やっと出来るようになったよ。」
そういいながら、嬉しくていくつも魔力球を打ち出す。
すると二人も嬉しそうにしながら祝福してくれる。
「おめでとう。なんとか出来るようになってよかったよ。」
「待ちくたびれたぜ、水華。」
「ありがとう。あと、もうちょっとみてて。属性だけの魔法も撃てそうなんだ。
さっき練習してるとき、属性別の魔力も動かせたから。」
僕の魔力が2種類しか無いからなのか、属性別に魔力を動かそうとしても、そうしない時との差はほとんど無かったのだ。
今度は慎重に甘い方の魔力だけを動かす。多分こっちが粘生魔法の魔力だろう。
そうやって魔力を体の中から放出する。上手くいった。ついに僕の魔法がどんなのかわかる。どんな魔法か楽しみだ。
魔力の放出と共に出てきたのは少し透き通った青色の物体。それが地面に落ちる。魔法なのにも関わらず、地面にボタッと落ちた。それは、地面にぶつかると共に、今まで丸かった形が平べったい物に変わる。
そのまま、魔法にも関わらず何故かある目をこちらに向け、同時に音を発してきた。
「キュピーッ」
僕の魔法から発せられたのは間違いなくスライムであった。
ついに題名通りスライムが出せた(物理)!
次回の投稿は木曜位かな?




