第三話 神様とステータス
なんとか今日に間に合った!
2年ぶりくらいにサッカーして、体中が痛い!
そのせいで、午前中はつぶれてしもうたー
「それじゃあまず、この神界の成り立ちから話していこうか~。
遥か昔、あらゆる世界がまだ誕生していなかった頃、完全なる無から一柱の神が誕生したそうだ。創造神、全ての始まりであり全ての生みの親である存在。
しかし、しばらくの間創造神は何も作らず、何も作れなかった。そのため、一人寂しく生きていたみたい。
ある時、あまりの寂しさに耐え兼ねた創造神はついに自殺を決行した。でも、結果は失敗。死線をさまよったものの、生き残った。その拍子に創造神は創造神たる所以、創造魔法を手に入れた。創造魔法は自分の想像したものを創り出す魔法だよ~。
創造神はその力を使って、初めに4柱の神を創り上げた。四大神、すなわち、物質の神、生命の神、時空間の神、エネルギーの神。そうして、寂しくなくなった創造神はまた寂しい思いをしないですむよう数多くの箱庭を創った。それが君等の住む世界であり、これから行く異世界だね。
しかし、しばらくして問題が起きた。あまりにたくさんの世界を創りすぎたせいで、管理することができなくなったんだ~。
その結果、創造した世界が次々に滅んでいったのだ。すでに様々な生き物が息づいている世界もあったよ~。
そこで、5柱の神様は新たなる神を生み、一つ一つの世界を治めさせることにした。その時生まれた神は現在、上級神と呼ばれている。
かくいう僕も上級神で、生命の神とエネルギーの神、そしてもう一柱の上級神の間に生まれた子供なんだ~。
……何?3柱の子供とはどういうことかって?
神様なんだからそのくらいのことは訳ないよ。中には、13柱の間に生まれた子供もいると言うから驚きだよね~。
ちょっと脱線しちゃったね。話を元に戻そう。
そんなわけで、上級神たちに世界の管理を任せた5柱は長い旅にでた。そして現在に至るまで一度も帰って来ていない。
そうして、平和になった様々な世界だけど、5柱が帰って来ないのをいい事に神々は互いの世界を奪い取るため、争いを始めた。最初の頃は、上級神同士による喧嘩で済んでいたものが、中級神や下級神が生まれたせいで、徐々に戦争の様相を呈するようになった。
その結果、いくつもの世界が失われたり、統合したりしたそうだよ~。今ある世界は5柱が出て行ったときに比べ、1割にも満たない。
さすがにまずいと思ったのか、現在は平和協定が結ばれているよ~。そのおかげで大きな戦争はないけれど、ちょっとした紛争や直属の臣神による反乱などは未だに起きている。
ところで、今回の異世界召喚もそういったものの一つである可能性が高い。あの召喚まほうを使ったのはおそらく向こうの神だよ~。彼はお兄ちゃん達を異世界に誘拐することで、お兄ちゃん達を人質に様々な物の要求をしてくるんじゃないかな~。まあ、簡単に言うとお兄ちゃん達の世界でいうところの北○鮮と同じようなものかな?
ふう、まだ説明していないこともあるけど、一旦何か質問はあるかな~?」
神様は話を一旦区切って、僕たちに質問がないか尋ねてきた。
特に重要な質問が思いついた訳ではないけれど、気になったので聞いておこうかな。
「さっき、4人の神様にはそれぞれ役割があったみたいだけど、神様は何の神様なの?」
「あれ?言ってなかったけ~?僕が司るのは協力、協力の神様だよ。」
「協力って力を合わせる協力?そんな物にも神様っているんだね?」
「そうだね。抽象的って意味なら愛とかもあるし、しょうもないって意味でも、トイレの神様とかいるくらいだよ~。それと同じ。
他に質問は?」
「それじゃあ、僕も質問していいかな?僕達が人質となるならば、僕達に危険がおよぶんじゃないのかい?」
確かに、人質として僕らを扱うくらいだ、危害を加えられる事は十分に考えられる。
「多分だけど、大丈夫だと思うよ。神界から世界に影響を及ぼそうと思うと莫大なエネルギーが必要だからね。それこそ、その世界全体の戦略に関わる程度でないと~。今回の件みたいにね。
他に質問はないかな?……なさそうだね~。
じゃあ、今度はこれから行く異世界について話しておこうか。
といっても、僕が知ってることはそんなに多くはないんだけどね~。あの世界の様子は、情報統制のせいで、なかなか回ってこないからね。
あるのは断片的な情報だけだよ。
まあ、確実な事が一つ。あの世界は今までに沢山の世界と合併してきたと言うこと。
つまり様々なコンセプトの世界が混じりあっている。
それが一番如実に現れるのは種族だろうね~。
普通世界に存在する知的生命体は多くても3種族程度だ。でも、あれだけ合体した世界、流石に3桁は行かなくてもそれに近い位はいると思うよ~。
それくらい?あっ、あと、魔法とスキルがあるくらいかな~。まあ、どちらかと言うと、こちらの世界に魔法とスキルが無いと言うべきかな?
この世界のコンセプトが{魔法とスキルが発動しない世界}だからね~。
まあ基本はお兄ちゃん達が思うようなテンプレートな異世界だと思ってくれていいんじゃないかな?」
テンプレートな異世界って言うことは、スライムとかドラゴンとかもいるのかな?折角なんだから、あってみたいな。魔法も使えたら楽しそうだなあ。そうだ!僕達は魔法を使えるのかな?
「僕らの世界は魔法の使えない世界みたいだけど、僕達も魔法を使えるようになるの?」
「そうだった!ぼく忘れてたよ~!
お兄ちゃん達、この球に触れてみて?一人ずつね。」
神様が手元に人の頭位のサイズの球を召喚しながら言う。球は水晶球の様に透き通っているが、中では虹色の光が踊っている。
一番近くにいた僕から球に触ってみる。すると、球の中の光が外に出てきて目の前の空中に光の文字を描き始めた。
その内容は次のようだ。
名前:津村 水華
年齢:16歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:粘生魔法Lv0
スキル:女体化
…なんだろう。色々良く分からない所はあるけど、一つだけ言いたいことがある。スキルの女体化ってなに?!他の所はべつにいいよ?でも、女体化って!!
「あれ、お姉ちゃんは本当は男だったんだね?そんな格好してるからわからなかったよ~。」
そうなのだ。僕は女装のまま此処にとばされた。つまりは未だに女装のままなわけだけど…。神様にも気付かれず、スキルにさえ……。
「この球は触れた人のステータスを表す道具なんだな?他の所は大体わかるんだが、状態から下がよくわからない。」
軽く凹んだ僕をみかねたのか、小岩井君が話をずらすように神様にたずねる。
「そうだね。それであってるよ~。
状態は、現在その人の正常でない部分が表されるよ。病気とか骨折とかが具体例だね。
魔法はその人がどの魔法をどれだけ使えるかを表しているよ。
スキルは使える特殊能力と言ったところかな?」
「へぇ。ところで、スキルはその人の本質からとられたりするのか?水華の女体化からおもったんだが。」
どうやら、話をずらす意図は無かったみたいだ……。
「スキルと魔法はその人の人間性を写しているといわれているね~。本当かどうかはわからないけど。でも、お姉ちゃんを見ると正しいのかもしれないね。」
「あー、えーと。あっ。す、スキルと魔法の違いはなになの?」
「アハハ。あからさまに話を変えたね~。
魔法は一つの属性だけで色々な事が出来るけど、スキルは決められた一つの事しか出来ない。その上威力や性能も魔法に比べると低いね~。
あくまで、スキルは魔法の補助という粋をでないかな~。
じゃあ、次行ってみよう!残りのどちらか球に触れてね~。」
今度は伊勢君が一歩前に出て、球に触れる。先ほどと同じように光が文字を書いてゆく。
名前:伊勢 修哉
年齢:17歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:水魔法Lv0 鉄魔法Lv0 雷魔法Lv0 神聖魔法Lv0 偽装魔法Lv0 病原魔法Lv0
スキル:
魔法が6つもある!!僕と比べると本当に多い。
「魔法が6つも!……そこまでの素質があるとはね。本当にすごいよ~。
普通、魔法は0~2個、凄く多くても3個だよ?僕ですら4個迄しか見たことが無いのに!
お姉ちゃんの魔法も初めて見る魔法だったし、本当にお兄ちゃん達はすごいね~。」
やっぱり、6つは多かったみたいだ。というか、神様ですら驚くって相当多いのだろうか。
「そんなに多いのか?まあ、多くて悪いものでもないから、ありがたいかな。
ところで、全部の魔法にLv0と付いているんだけど、これはどういう意味なんだい?」
「それはレベルだよ!その人がどれだけ魔法を使えるかという目安だね~。
具体的に言うなら、
Lv0が適性:その属性魔法を使える可能性がある。
Lv1が発現:その属性を含む魔法を体から発する事が出来る。
Lv2が発動:その属性のみの魔法を意図して発する事が出来る。
Lv3が使用:その属性魔法に対しある程度の条件付けや操作が出来る。
Lv4が駆使:その属性魔法を思いのままに操る事が出来る。
Lv5が至高:Lv4保持者の中で最もその属性魔法を上手く使える。
という感じだね~。」
「つまり僕達はまだ魔法を使えないと言うことでいいんだね?」
「今は、そうだよ~。後でLv1までは引き上げれるから、異世界に行ったら使ってみてね~。
まあ、その為にも最後のお兄ちゃん、ステータスを確認しよう!」
そう言われて、小岩井君が球に触れる。ステータスは次のようだった。
名前:小岩井 千歳
年齢:16歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:創造魔法Lv0 空間魔法Lv0
スキル:最適化 鑑定
「最後の一人もすごいね。まさか、創造神様と同じ魔法を使える人がいるなんてね~。スキルもかなりいいものだし、僕の部下に欲しい位だよ~。」
「それはいいんだが、魔法とスキルはどうやって使うんだ?」
「魔法は後でね。まあ、ちゃんと使えるようになるには時間と練習が必要だからね~。それは自分で頑張って?
スキルの方は簡単だよ~。そのスキルを思い浮かべながらスキル名を言えばいいだけだからね。試しに僕に{鑑定}を使ってみてよ。僕のステータスが見れるんじゃないかな。」
そう言われて、小岩井君が神様を見ながら言う。
「鑑定」
……何も起きない。失敗かな?
そう思って小岩井君の方を見ると驚いたような好奇心に満ちた顔をしている。どうも成功しているみたい。
「小岩井君どうだったの?成功した?」
「ああ、成功した。こいつのステータスはみえたぜ。別に他の人に言ってもいいよな?」
「問題ないよ~。そうじゃないなら見せたりはしないからね。」
神様のステータスは次のようだったらしい。
名前:協力の神 デイティー
年齢:11537208754歳
種族:上級神
性別:男性体
状態:時間加速 間接魔法使用
魔法:間接魔法Lv5 召喚魔法Lv4 風魔法Lv4
スキル:世界干渉 神圧 瞬動
流石に神様なだけあって凄いステータスだ。Lv5はさすがだと思う。
というか、よく考えたら、僕だけ他の二人に比べてステータスがしょぼい気がする……。
ま、まあ、粘生魔法は神様も見たことが無いみたいだし、きっと凄いに違いない!名前的には凄そうにきこえないけど。
「ずっと気になってたんだけれど、状態のところの時間加速と召喚途中と言うのは何なんだい?」
「お兄ちゃん達はまだ召喚魔法にかけられたままなんだよ~。僕が魔法で阻害しているから異世界に飛ばされないだけで。あと、それが向こうにばれないように、ここら一帯の人に時間加速が掛かるよう魔法を施しているよ。殆ど周りの時間は動いてないね~。
それが状態:時間加速、召喚途中として表れているよ~。
その両方共に間接魔法を使っている。だから僕には状態:間接魔法使用がついているんだ。」
「なんで、間接魔法にそんなことが出来るんだ?名前からしたら、そんなこと出来そうに無いんだが。」
「間接魔法は人の魔法やスキルを使う魔法だよ。僕の部下の時間魔法を使ったり、召喚魔法に干渉したりね。
他にも色んな使い方が出来るよ~。例えば、初心者にの魔法を使う事で、ある程度魔法の使い方が分かって、Lvが上がったりね~。」
そういいつつ、僕らの方に手をかざす。すると体の中で何かが蠢く様な感触がする。蠢いているとは言っても気持ち悪い感覚ではなく、どこかリラックスできる感じだ。しばらくすると、その何かが体の中から抜けていった。
あとに残ったのは、運動をした後の様な心地よい倦怠感である。
「成功だよ~。いま、お兄ちゃんの鑑定て確認したけど、全員の魔法がLv1にあがったよ。お姉ちゃんの粘生魔法なんかは、Lv2になったしね。」
それを確認するように小岩井君が周りを見つつ{鑑定}を使う。それにしても、僕が魔法を使えるようになったと思うとなんだか嬉しい。ここで魔法を使ってみようかな。
そんなことを考えていると、神様が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「そう言えばお兄ちゃん達に嘘をついていたことがあるんだ。さっき、お兄ちゃん達は安全って言ったよね?それが嘘なんだ。」
「どういう事?」
「お兄ちゃん達のステータスがあまりに凄すぎて、そのままだと確実に向こうの神に目を付けられちゃうよ~。
なんたって、創造神様しか使ったことのない創造魔法に、それ以上にレアな粘生魔法、その上6属性持ち。どれも前例が無い事だよ~。その上、他の魔法も、神聖 空間 病原 偽装とどれも強力な魔法だからね~。
その対処としてなんだけど、お兄ちゃん達のステータスに偽装をかけさせてもらうよ~。」
そういって、神様はまた僕達に手をかざす。今度は特に何も不思議な感覚は感じなかった。
「これで大丈夫なはずだよ。ステータスを確認して、把握しておいてね~。」
球に触れて確認してみると、次のようになっていた。
名前:津村水華
年齢:16歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:土魔法Lv0
スキル:女体化
名前:伊勢 修哉
年齢:17歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:水魔法Lv0 鉄魔法Lv0 雷魔法Lv0
スキル:
名前:小岩井 千歳
年齢:16歳
種族:人
性別:男
状態:召喚途中 時間加速
魔法:火魔法Lv0
スキル:鑑定
「さて、みんな確認したみたいだね。その魔法は多分1日位しかもたないから気をつけてね~。
あと、普通はみられる事はないけど、神殿や協会、神社とかの中は神が干渉できる数少ない場所だから、入るなら偽装魔法をかけて入ってね~。」
みんな大分弱体化されている。僕の魔法も偽装されているのが不思議だけど、やっぱり強いのかな?
「さて、まだまだ聞きたい事とかあるかもしれないし、ほとんど一方的な説明だけだったけど、そろそろ僕の魔法でも召喚を邪魔するのが厳しくなってきたよ~。
もうすぐお兄ちゃん達は異世界に飛ばされる。もしかしたら、こっちに帰らせてあげられるかもしれないけど、期待はしないで。
むしろ、お兄ちゃん達ほど才能があるなら、自力で帰れるよ~。なんなら向こうの神を倒してから帰ってくる事だって可能かもしれない。」
「買いかぶりすぎだよー。」
「いや、そんくらいの気持ちでいけってことだろ?」
「そうだね、いつか僕らでここに帰ってくる事を目標にしよう。」
「僕もまた会えるのを楽しみにしているよ~。
それじゃあまた会う日まで、さよなら!そして異世界に行ってらっしゃい。」
ニコッと笑った神様に向かって、いってきます。と言おうとしたところで、僕は意識を失った。
見事なまでの説明回でしたね。
次回は……うーん? 水曜いや、木曜日に投稿します。
はよ書けたらもっと早く投稿するけどね。