第5話 裁判 in 政道
超お久しぶりです!
いやぁ、一回書くのに詰まるとなかなか書けなくなってしまって、気が付くと数ヶ月が経ってましたね。ビックリです!
そしてスミマセン
放置にも関わらずお気に入りに入れてくれた方有り難うございます。めっちゃ励みになりました!!
それではどうぞ。新キャラ視点ですが。
芳醇な香りがこじんまりとした部屋に満たされる。カップを傾けると、一層濃厚な香りと共に仄かな苦味が口いっぱいに流れ込んで来る。
これだから止められない。
研究に疲れた頭が苦味によって覚醒するのを感じながらそう思う。
私はこの時間を愛している。
休憩時にフォスを飲む。これ以上に至高な時間も無いだろう。
時に疲れを癒し、時に浮かれた心を落ち着かせ、時に励まし慰め、時に喜びを噛み締める。そんな時間だ。
しかしその時間も唐突に終わりを告げた。
バァンッッ!!
と扉を開けながら、30代くらいの小柄な男が部屋の中に転がり込んできた。その服装からして恐らく衛兵であろう。
男は転がり込んだそのままこちらに向かって言葉を発する。
「ネクロ様!!至急、審議の間まで来てくださいませんでしょうか!!ボリング王がお呼びです!」
「騒々しいわね。それに女性の部屋にノックの一つもせずとは、この国の兵はよっぽど教育が行き届いていないのね?」
私は至福の時間を邪魔された事に対する苛立ちもあって不機嫌を隠そうともせずそう返した。
それを聞いた男は、私の苛立ちを如実に感じ取ったのか、体を震わせながらも急いで謝罪を始めた。
「も、申し訳ございません!し、しかし、急ぎネクロ様をお呼びしろとの王様の命令でしたので……。」
少し意地悪し過ぎたかしら?
まあ、それはいいとして。
ボリングが私を呼んだ理由には、見当がつく。
半日前に起きた存在値の異常増加だ。この町の西方、フェロッツ樹林の東部に突如として3つの大きな存在値が現れたのだ。
今まで、このように存在値が急増する事などなかった。
と言うより、存在値を感知できる事さえあまりない。私が感知出来るほどの存在値を持った生物など、ほとんどいないからだ。
存在値は強者にしか感じる事は出来ない。強ければ強いほど他者から感知され、逆に感知しやすくなる。
私のように存在値を十全に感知する事の出来ない者にさえ感知できる程の存在値。明らかな異常だ。
これ程の存在値を持つ者ならば、この街の全戦力を合わせたとしても対抗するのは難しいだろう。
もし1対1で戦うとするなら、少なくとも存在値を感じ取れる者でないと話にならない。
この街で辛うじてでも、存在値を感じ取れる程の者は私と王の二人だけしかいない。
ただその二人で戦いを挑んだところで、勝負にはなるが勝てはしないだろうが……。
そんな存在がこの街のすぐ隣、フェロッツ樹林に突如として現れた。警戒しない方が可笑しいと言うものだ。警戒が意味を為すかは問題としても。
しかし、今頃になって私を呼びに来たと言うのはどういうことだろうか。
恐らくこの存在値急増の二次災害的な問題が起きたのだろうが。
それに、呼び出し先が審議の間であると言うのも気になる。
審議の間は文字どおり、人の罪や刑を'審議'するために作られた部屋のはず。では、何故……
「あ、あのー。出来れば着いて来ていただけると……。」
戸惑いがちに男が話しかけてきて、思考が中断する。
まあ色々疑問は有るが、実際に行ってみれば分かるだろう。
それにそう言えば、早急にと言っていたな。急いだ方が良いだろう。
「そうね。良いでしょう。確か審議の間に行けば良かったわね。」
「はい。来てくださるんですね。」
「ふふ。では、早速向かうとしましょうか。」
そうして、私はボリングが待っているであろう審議の間に出掛けた。
10分後。
私は一人で審議の間の前に立っていた。
衛兵の彼はあまりに遅かったので置いてきた。全速力で向かったので、着いて来れるとも思っていなかったが。
それにしても、久しぶりにこの街に降りてきたが殆ど何も変わっていない。
どの家も赤いレンガの壁に黒い屋根。画一的で何一つ個性もない。
町民たちの様子も没個性的。活気だけはそこそこあるものの、それも特筆すべきほどではない。
私はこの町が嫌いだ。
刺激がない。面白みがない。代わり映えがしない。
最も刺激に溢れた面白い町など、本当に存在するかは別なのだが。
町の様子はさておき、審議の間に入るとするか。
私はそう思いつつ目の前のドアを開ける。
ギィ と言う音とともに扉が開くと、そこでは何十人もの人が何か騒がしく話あっている。
私が入ってきたことでそのほとんどがこちらを確認し、部屋全体が一瞬静かになった。
かと思うと急に部屋が騒然とし始める。
「な、なんで心伝の魔女が…」
「本物なのか?!」
「わ、私は何もやっておらんぞ。」
そんな声が其処らじゅうで上がる。
ボリングに頼まれて数年前に不正を働いた貴族達を粛清したせいだろう。
私はその声を気にせず、真正面にいるボリングのところまで歩いていく。
彼の前まで行くと、私はわざと部屋中に通る大きな声で彼に向かって話しかけた。
「お久しぶり、ボリング王。それで、私を呼んだ理由は何かしら?」
「来たか、心伝の魔女よ。大体検討はついておるのであろう?」
「そうね。でも、呼び寄せたのはそちらなのよ。理由くらい言うのが筋ってもんじゃないかしら。」
「いつもは呼んでも来んのにな。まあよい。お前を呼び出したのは、他でもないそこの少年達の事でな。」
王が視線を向ける先には少年たち。
先ほどから気になってはいたのだが、やはり彼らがらみだったか。
このタイミングで審議対象になっているからには、存在値関連ではあるのだろうが。
しかし、その理由まではわからない。
ボリングの方に顔を向け、続きを促す。するとボリングはこちらにニヤニヤとした笑みを向けながら話す。
「ふむ。この少年達を見て気づかないかね?」
「何がだ?」
彼にイライラしながらもそう返す。
「彼らは丁度、フェロッツ樹林の東部で見つかったのじゃぞ。」
フェロッツ樹林東部。存在値が急増した場所ではあるが…。
…まさか! そう思って、私は彼らを注視する。彼らの存在値に気を向ける。
すると、彼ら3人共から異常に大きな存在値が感じ取れたのだ。
そういうことか。
彼らに対した実力が無いとはいえ、こんなことにも気付かないとは……。
これで、存在値急増の原因、少年たちの捕まっている理由、私の呼ばれた理由、全てに説明が着く。
つまり、彼らが急にフェロッツ樹林東部に現れ存在値が急増し、それを不審に思ったボリングがそこに向け兵を送った結果彼らが捕まった。そして彼らの処遇を考える際に保守的である貴族どもは彼らの処刑を選ぶであろうから、その対抗策として私が呼ばれたと…
そんなところであろう。
そこまで考えたところでボリングが今度は私にだけ聞こえるような声で話しかけてくる。
「大体事情が掴めたようじゃな。今、彼らの処遇について話あっていたのじゃが、彼らを処刑する方向に話が向っておる。わしとしては、高い存在値を持つ彼らを利用したい。彼らを殺すよりは生かした方が有益じゃ。」
そうだな…。彼らを生かすも殺すも私次第。どうするか。
彼らは、存在値の割合に実力が低いようだ。そうでなければ、一兵卒なんかに捕まるわけもないが。
彼らを育ててみるというのも一興ではないか?
そう思うと、急にそれが名案のような気がしてきた。
存在値は高いのだから、将来的に強く成るのは確実だ。そんな彼らを上手く育てれば、神にすら届くほどの力を身に付けさせることすら可能であろう。
なんとも、やりがいの有る事だ。
しかし彼らにその気が無いようならそれもままならない。
私は少年たちに向かって話かける。
「貴方たち、私の弟子にならないかしら?」
しかし、その言葉に反応したのは彼らではなく周りの貴族連中だ。
私の横暴を止めようと何かのたまっているようだが、無視する。
所詮自分達のことしか考えられないグズ共だ。大抵の者は私の威圧でどうにかなるし、汚職を盾に取れば残りも認めざるを得ないだろう。
「そういえば言っていなかったが、彼らは共通語が通じないようなのじゃ。」
と王の言葉。
共通語が通じない? ……まあいいわ。
たとえ言葉が通じなくとも魔法を使えば通じる。伝達魔法。心伝の魔女たるゆえん。私の持つ独自魔法。
その伝達魔法を使って私は再度彼らに話し掛ける。
{貴方たち、私の弟子にならないかしら?}
次回投稿は何時になるでしょうか?
とりあえず数日の内に書けるよう頑張ります。




