③
中々進まなくて読んでる方には申し訳ない
自室に入れば、くつろげるかと思いきやソコは異世界
パステルカラーで彩られた家具や壁紙がボクの視界を塗りつぶす
「あれぇ・・・寮内と部屋がまったく合ってないぞ」
ナンダコレ、ナンダコレ??必死に首を傾げるが誰も答えてはくれない
変わりにテーブル(桃色だ)の上のポケット端末が自動機動した。
「はろぉ、はろぉ・・・聞こえますか?」
聞き覚えのある声・・・フラウナイトだ。
「ユキノ様、無事お着きになられたようですね?フラウは一安心です」
「早速だけど聴きたい事がある」
「何でしょう?」
「この部屋はなんだい・・・?」
「なんだ・・・とは?」
「質問を質問で返さないでほしいな。少女趣味全開で手配しただろう!?」
画面に映るフラウの表情を見れば一目瞭然だ、眼は真剣っぽいが口元がニヤニヤ
緩みっぱなしだ・・・確信犯なのだな
「ユキノ様の新生活の為、フラウ頑張っちゃいました」
てへっ☆という擬音がバックに飛び出てくる。どこに技術を注ぎ込んでいるんだ?
「ボクは期待したんだよ、ちょびっとだけ・・・寮の外観を見ればシックで高級感の
有る家具や室内が迎えてくれると思ったじゃないか!」
実を言うとボクは落ち着いた部屋や景色が好きだ。しかし、この部屋は今までの
ボクの記憶に無い世界の象徴だ。
「お部屋の手配のときに学園側に申請する事で個人個人でアレンジできるんです。
せっかくの学園生活なのでユキノ様が幸せな女学生ライフを送る為、フラウは
占星術や風水等ありとあらゆる手段を用い導き出した答えがここに!」
荘厳なファンファーレが鳴り響く。だから何故無駄な所に技術を注ぐのだろう
「い、今から元に戻せないのかな?」
「戻せないですよ♪」
最早、諦めろと言う事か・・・一気に学園生活が灰色に染まりそうだ。
室内の確認を始める。窓や設備、家具の中身等を調べてゆく
「へぇ、荷物は送付済ってのは聞いてたけど、収納まで済んでるとはね」
クローゼットやタンスの中には既に予備の制服や私服の類や下着類が収められている
ベッドはゆうに二人は眠れそうな大きさでテーブルは大小二卓ある、どちらも必要無い時は
収納できる親切設計だ。小さいほうはベッド横のサイドテーブルとして使うのも良いかな
そのテーブル上には先ほどフラウが映像を繋げてきたポケット端末が有る。
文字通り携帯可能なサイズの通信端末だ。古くは携帯電話やスマートフォンに分類される
電子制御機械だけど、魔法技術も取り込んだ今の時代は機械内に小型の人口魔動精霊が
入っていてネットワークを繋いでいる。今も昔も人々にはこういうシステムが
必要不可欠なのだろう情報は紙媒体やネットワーク上と様々な分野から得ることが出来る。
それは、太古の昔より変わることのない文化だ。昔の学生達も、こういう風にポケット端末で
友達と会話したり色々な情報を得ていたに違いない
一通り点検して備え付けの学習机の椅子に落ち着く。そういえば、これから勉強もしなくては
ならないんだな・・・。今まで勉強ってしたことないや
机の上に綺麗に並べられている教科書の一冊を取りパラパラとめくる、うん理解出来ない
これ大丈夫か、ボクは学生生活についていけるのか?
更に灰色具合が高まってきた。こういう時はアレだ、食事とって寝よう
時刻を確認すればまもなく夕食の時刻だ。いそいそと動きやすい私服に着替え
ボクは一階の食堂へ向かう。まだ学校が始まらない為か、他の学生の姿が見えない
入学式が明日に迫るというのにゆっくりしすぎな気がしないでもないけど、間に合うのかね。
食堂も閑散としていたが料理長は常駐しているようで、いい匂いが漂ってくる
メニューは各テーブルに置いてありレストランみたいにウェイターが注文を取りに来る
仕組みだ。室内を軽く見回してみると壁にテーブルマナーや食堂利用に関しての注意事項が
掲げられている。こんな所にもお嬢様らしい生活が見え隠れする、今日はもう
余り疲れることはしたくないのでマナー関係ないメニューにしたい・・・んだけど
「う、うーむ・・・余り馴染みの無いメニューばかりだな」
もっとこう分かりやすいメニューは無いのだろうか、何々の何とかソース仕立てとか止めてほしい
隅から隅まで眺めること数分、ボクは諦めてベルをならす。
「お待たせいたしましたぁ」
鈴を鳴らすような声でフラウとは違うタイプのメイド服の女性が現れた。
「アルミ先生?!」
「ユキノさん、お夕食ですか?注文承りますねぇ」
寮監だけでなく給仕係までしてるのか、この人は?
「あ、どうです?似合いますかしら。ワタクシ時々ウエイトレスもしてるんですよ」
くるりと回転してポーズを決めるアルミ先生・・・かわいい。
どこで、何をしてても楽しそうな人だな。それにしても豊かなお胸が強調されてグッドです
「その、これをお願いします」
名前が複雑なメニュー内で唯一理解できたメニューをお願いする。
「ま、まあ・・・これですか・・・コレ・・・」
何故だ?驚愕の表情でふらふらと厨房にオーダーを伝えに行ってしまったぞ
大して待たずに料理が運ばれてくるトレイでは運べなかったらしくカートで
「お、お待たせしましたぁ。ドラゴンバーグカレーです」
カレーという単語だけしか見てなかったから、ソレを選んだのだが・・・ドラゴンバーグ?
「開校以来誰も注文する事の無かったメニューだったので、ワタクシ驚いてしまって・・・
料理長は歓喜して調理してましたわ」
ふうふうと息を切らしテーブルにカレーを置く、少し揺れた・・・地面もアルミ先生の胸も
「その残しても良いですからね?料理長も調理できただけで満足とおっしゃってましたし」
引きつった笑みを浮かべ離れていくアルミ先生。先生を見送りボクは目の前のソレに視線を
合わせた。デカイ、何がデカイかといえば何もかもが・・・
「ゴクリ・・・・」
このまま見てても埒が明かないのでスプーンを手に取りカレーに挑む事にした
ドラゴンバーグとの名があるとおりライスとカレーの中心にドンと大きな肉塊が鎮座している
少々苦労しながらカレーと肉とライスを上手くスプーンに乗せ口に運ぶ・・・美味い!
「ふわぁ・・・・」
顔がにやけてしまう、目覚めてから一度も食事らしい食事を取っていない事を思い出す
そんな事情もあってボクは口いっぱいに広がる美味にしばし感動に打ち震えた
「あら、あなた確か・・・?」
ボク一人しかいないハズの食堂に声が響く。
そちらに眼を向けると、昼間アーケードで出会った少女が立っていた。
「お食事なのね。ワタシもご一緒してもいいかしら?」
そう言いながらボクの向かいに座る。初対面でも物怖じしない少女に感心する。
「寮生は今、ワタシを除いて帰省してるものだから一人きりでの食事になると思って
来たら、あなたがいるのを失念してたわ。新入生さん」
微笑しながらボクの口元を紙ナプキンでふき取る。うわあ、恥ずかしい
「ご、ごめんなさい。」
「ふふ、謝らなくてもいいわよ。口いっぱいにほおばるアナタを見てたら、ついね」
一心不乱に食べ続けてたのを見られていたのか。ボクは羞恥に身を捩った
「かわいい・・・っと、ワタシも注文しなくっちゃ」
彼女はメニュー片手にベルを鳴らす、アルミ先生が素早く現れた
「はぁ~い、承ります。あら、カグラさんじゃないですか」
カグラというのが目の前の子の名前か、不思議な響の名前だ
「アルミスト先生、ワタシ今日はパスタのセットをお願いしますね」
「はい!少々お待ちくださいね」
元気に厨房へ向かっていく。ボクの時とは大分違う、やはりドラゴンバーグカレーは
よっぽど珍しい注文だったのだろう。
「あ、そうそう自己紹介がまだだったわね。ワタシはカグラ・ツキノセといいます」
「ボクは、ユキノ・エルスティンです」
お互い名乗りあう。改めてカグラさんを見ると本当に綺麗な女の子だと思う。
ゆるくウェーブのかかった赤毛を纏める事無く自然に流し、ちょっとつり眼気味の瞳は
翠玉色で印象的だ。唇は薄く紅をひいているのか魅惑的な艶を放っている。
「ワタシの顔そんなに気になる?」
「あ、あはは・・・・」
悪戯っぽく微笑むカグラさん。ボクは彼女の顔を穴が開くほど見つめてしまっていたようだ
「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ」
カグラさんの前にパスタセットが並べられる。これも古のレシピを元に作られている。
「ありがとうございます。さ、いただきましょう」
彼女が食べ始めるのを見て、ボクも食べるの再開した。
「・・・・全部、食べてしまうなんて」
食器を下げに来たアルミ先生がぽかんとした顔でボクの前にある空になった巨大な皿を
見つめている。確かにとんでもない量だったが、以外にぺろりといけてしまった。
「ユキノさんはちっちゃな身体に似合わずたくさん食べるのねぇ」
感心したようにカグラさんが言う。彼女も既に食事を終え、食後のコーヒーを楽しんでいる
「すごくおなかが空いていたみたいです。作ってくれた料理を残したくなかったというのも
ありますし。それに、凄くおいしかったし」
「まあまあ、料理長が喜びますわ!ユキノさんってば良い子良い子」
頭を撫で回された・・・どうも、ここに来てから子ども扱いが続くな
「それでは、食器下げてきますね。お二人はゆっくりくつろいでいて下さいね」
カートを押してアルミ先生は、厨房へ消えていった。
「アルミスト先生は楽しい方でしょ」
「ええ、可愛らしいし見てるだけでこっちも何だか朗らかな気持ちになりますね」
カグラさんと顔を合わせて笑う。誰かと笑いあう、こういうのも新鮮な体験だな。
「ユキノさんは明日から入学だったわね。やっぱり不安?」
「ええ、色々理由もありますけどね。ボク自身この生活に馴染めるかなって」
これは偽らざる本心だ。目覚めてまもない上、女の子生活においてはまだ三日と経ってない
いくら習慣や知識がこの身に備えられていても実践無しでは心許ない
「でも、不安と同じ・・・いえそれ以上に期待も大きいです。」
これも本心だ。ボクにとっての新しい始まりでもある生活なので少々楽しくもある。
女の子になり女子校に通う事になりへこんだりもしたが、ポジティブに考えれば
過去の人生よりかなり楽しい生活が待っている気がする。あれやこれや、うふふふ
「ユキノさんに素敵な出来事が起きることを祈っているわ。困った事があったら
いつでも相談に乗るわ」
「ありがとうございます。頼りにしちゃいますね」
「ワタシは高等部の二年生よ。あなたにとっては一年先輩になるわね」
先輩か。やっぱり敬意を表したほうが良いのかな?名前で呼ぶのはマズイだろうか
「そうそう、ワタシのことはカグラでいいわ」
先手を打たれた、この身体のボクは考えている事が顔に出やすいのかもしれない
「では、これからもよろしくお願いします。カグラさん」
「ええ、こちらこそ」
ボク達は微笑みあい、昼間通りすがった時と違い今度はしっかりと握手したのだった。
今回も大幅加筆予定です、すみません