②
説明の時間
痛む頭をさすりながら身体が動くことに感心する
「さっきまでは、反応しなかったのに」
じっと掌を眺めて握って閉じてを繰り返してみる、問題はないようだ
「ユキノ様が覚醒なされてから意識と身体のリンク確立までタイムラグが
あったようですね、今なら歩くことも可能かと」
フラウが言うように歩けるかもしれない
寝床を這い出し、立ち上がる
軽い立ちくらみを覚えたが、どこも異常はないようだ
「では、運動しながらでいいので聴いてください」
「ああ、頼んだ」
屈伸、伸脚とじっくり足をほぐしボクは部屋の中を歩き始めた
「前回の顛末からです。協定を無視して結託した二国が森の種族を殲滅し、夜の一族の封印まで
行った挙句、お互いを喰らい合い世界崩壊でした」
「簡潔で、分かりやすい説明アリガトウ。協定無視って、何のために定めたんだよ」
「そのきっかけを作った、あなたが言う事ではありませんね」
「えーと、そうだっけ?」
「そうです」
断言されたよ、出来るメイドは違うね
◆
さて、何を言ってるか分からないと思うので
まずは、世界の成り立ちを説明せねばなるまい
今、ボクたちがいる世界はかつて地球と呼ばれていた星である
ボクにとっては六千年くらい前の事なので、かつての姿は分からない
ある日、世界は信じられない存在と遭遇する
当時の人間が言うモンスター(今は差別用語だ)という異形とだ
人間族はその時代の持てる力を発揮し撃退というか殲滅した
それが、世界の問題となったのだ
信じられないことに空想や幻想の産物と思われていた魔法や魔物が
現実となりはじめた
モンスターが来たことにより交わらないはずの次元が歪みを産み
融合を始めてしまった
やがてモンスターと人間族の種族をかけた争いが起きる
そうした結果お互いが全滅寸前まで追い込まれた
ソレを見ていた神様←うさんくさいがそういうものらしい が地球の生命が
絶滅するのを悲しんだらしく、あろうことか次元の壁を取り払ってしまった
そういう訳でモンスターの生き残りに幻想の文化、人間族の生き残りに人間族の文化
それらは生きるために交じり合うことを選んだ
子供は出来ないと思われていた異種族の婚姻も人間側の技術に幻想側の知識の混合により
可能とした、そのほか足りない所をお互いの補い合いで発展していった
世界は平和になったのだ、表面上は
いくら混血が生まれて世代を重ねたとて、諍いは生まれる
種族が一緒でも誰だって喧嘩するし、それが多種族が混じれば、なおさらだ
そこで神様は6人の守護者を選び、世界の平定を目指した
6人は様々な種族のトップから選ばれたようだ
でもそれは上手くはいかなかった、6人の意見が分かれた時に
客観的に見れる者がいないため、結果的に争いを産んだのだ
しかも、今度は一人一人が世界崩壊を起こせる化物クラス、地球崩壊は必然
頭を悩ませたらしい神様は、統率するための存在を創造する
なので、調停者として7人目の守護者のボクが生まれたのだ
世界守護、恒久平和を実現していくために
でも、6度世界崩壊を引き起こしてしまって失敗してしまった
現実は厳しいものだ、本当に