彼女の意思
「みんなで旅行に行きましょうか」
年が明けた後最初の生徒会会議で、副会長の鎌倉真理はそんなことを言った。
この物語は、生徒会に所属するいち男子生徒の館山圭と同様に生徒会に所属する女子生徒たちを描いた物語である。
「かいてん」 スピンオフ 恋愛模様と慰安旅行
突然の真理の言ったことに一様に反応できない生徒会メンバーたち。
突然旅行に行こう、と言われて対応できる人間の方が珍しいであろう。
そんな中生徒会長を務める名古屋霙は落ち着いて対応した。
「なんで旅行なの?別にどこかにご飯を食べに行くだけでもいいじゃない」
「ちっちっち、甘いですね。霙ちゃんは甘すぎます。旅行ということに意味があるのです」
真理が言ったことに全員が首を傾げる。首を傾げた真理は可愛いと校内でなかなかの評判である。
そんなに首を傾げる機会があるのか。
「どういったところに意味があるのですか、真理先輩?」
至極当然の疑問を真理にぶつけたのが2年生の愛媛心。
「そりゃあ、新しく入った蜜柑ちゃんと親交を深めるところに意味があるのですよ」
「まぁ、それなら良いですけど……」
「言いくるめられるなよ……」
やはり心は簡単に説得されてしまった。
それを見越していたのか、真理を説得しようと試みる圭。
「親交を深めるならプールとかハイキングみたいなものでも良いんじゃないですか、真理さん?」
「先ほども霙ちゃんにも言った通り、旅行に行くことに意味があるのです」
「では、どういった意味があるんですか?」
「楽しいからです!」
真理は、満面の笑みで言い放った。
その屈託のない笑顔に、圭は旅行に行くことを決めた。
あんな笑顔見て嫌ですと言えるわけがないと後に圭は語る。
「霙さん、旅行に行きましょう」
「まぁ、仕方ないわね……」
霙の一言で旅行に行くことが決まったので、改めて旅行について皆で話し合う。
「それで、行くあてはあるの?」
当然、旅行に出かけるには旅行先や旅費など、問題が山積みなのである。
「私の別荘でいかがでしょう?軽井沢で避暑地なので涼しいですよ」
「真理がそれでいいなら、ね」
「もちろん、オーケーです」
おもむろに真理が携帯を取り出すと、電話をかけ始めた。
話から察するに執事さんであるが、いつものことなので誰も気にしない。
ここはそういう生徒会である。
「と、言うわけでいつでも大歓迎みたいです」
いつもはお嬢様を感じさせないのに、
ちょっとした仕草がとても綺麗だったり大舞台でも落ち着いていたりと、
やはり良いところの出身なんだなぁと感じざるを得ない、などと考える圭。
「日程を決めましょうか」
「今日は1月4日ですね。うちの学校の冬休みは1月15日までと長めなので、この間で皆が空いている日にしましょう」
霙と真理がコンビネーションで話を進めていく。
この辺りは流石1年間以上付き合ってきただけある。
霙と真理は中学校からの付き合いで、一応幼馴染にあたる。
「1月5日から15日までの間で予定の入っている人はいるかしら?」
「特にないです」
「私もないです」
心と蜜柑が答える。特に予定はないらしい。
「あ、俺12日から野球部の練習が始まります」
「となると、5日から11日までの7日間ですね」
「何日間にするんですか、霙先輩?」
「そうね……。2泊3日あたりが妥当じゃないかと私は思うけど」
「決まりですね!」
「「「「即決!?」」」」
圭のスケジュールについて考慮して、旅行の予定を立てる彼女たち。
心の問いかけに霙がこの程度が妥当だろうという日数を答えると、
普通は何泊何日かを決めるのは時間がかかるところを、
その霙の例示した日程で真理が決めてしまったので、霙と圭、心と蜜柑までが驚きの声をあげる。
「そういえば蜜柑はあまりこういうイベントは来るイメージ無いけど、なんで参加したの?」
霙がそう尋ねた。
彼女、国立蜜柑は真面目な少女で、あまりこういうイベントは参加しない傾向にある。
「偶には、こういうのも良いかなって思ったんです」
珍しく蜜柑が笑顔を見せてそう答えた。
彼女はそれほど良く笑う人間ではない。
「「「「か、可愛い……」」」」
思わず蜜柑の零れた笑顔に他の4人は動揺した。
何せ見とれるような綺麗な笑顔だったから、見とれざるを得なかったのだ。
零れる笑顔に少し裏がありそうな真理とは大違いである。
「な、なんですか!?それより、早く旅行の予定を決めましょうよ」
「お、おほん。そうですね。じゃあ朝11時に駅集合で良いですか?」
「大丈夫よ」
「了解です」
「わかりました」
「了解しました、問題ないです」
霙と圭と心、蜜柑がそれぞれ答える。
楽しい旅が始まりそうな予感が全員にしていたのは、言うまでもないことだった。
桃崎とか氏作の「かいてん」の二次創作となります。
作者に敬意と感謝を込めて、この作品を贈ります。皆さんにも気に入って頂けると幸いです。




