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契約書のサインはよく考えましょう

作者: 茶緒
掲載日:2026/06/11

オメガバースではないです。俺様系ヒーローが好みなので書いてみました。

「私はもうすでに結婚している。貴方とは婚姻しない。」


目が覚めてすぐに私の番に挨拶をしたら、彼の隣にはすでに美しい桃色の髪の女性がいて、私の番のはずである王子の椅子に並ぶ椅子に、さも当たり前のように座っていた。



私はこの王子と結婚するために、家族や友人たちと同じ時間を歩むのも諦めて眠っていたというのに。





この世界には運命の番という不可思議な縁がある。


例えば兵士が運命の番を見つけると、肉体がさらに強化され最強の戦士となる。

魔法使いが運命の番を見つけると、魔力が高められ優秀な魔法使いになる。

運命の番は互いの才能を高め合う奇跡。

同じ形の痣がお互い身体のどこかに現れる。

世界中の各国は運命の番を探し、求めることが義務付けられているのがほとんどだった。

しかし運命の番の年齢差はランダムで、年が近いこともあれば、とても離れていることもある。

運命の番を得られる者は数少ない存在だった。



私ローザ・ブライアはオーロラ国の侯爵の一人娘として生まれた。

私が20歳の成人した時、王家から運命の番である栗色の髪の男児が生まれた。

法律で運命の番は結婚しなければならなかった。

しかし王族となると確実に世継ぎを産まないといけないため、王子の成長を待ってはいられないということで、王子が成人になられる20歳まで私は魔法による人口冬眠を王様から命令された。


そのことに父は大反対をしてくれた。

二十年は長すぎるということ。

そして私は宮廷魔法使いに選ばれるほどの実力者で、何度も戦場へ父と参加し功績を挙げて、いつしか髪色になぞらえて赤い茨姫と呼ばれていたほど。

そのため大事な戦力を失うのはブライア家としても痛手だった。

しかし、父の抵抗もむなしく、人口冬眠が実行されることとなった。


「ローザ、すまない…っ!!」


人口冬眠用の棺のような箱に横たわる私の手を握りしめながら涙を流す姿が最後の記憶だ。

できるだけ私の魔法研究や魔法具の生成権利を家のために残し、国防を父に任せて私は氷に包まれ静かに眠りの世界に落ちた。



そして王子が20歳の誕生日、私は目覚めた。

目が覚めた場所は地下室のようで暗く、何も見えなかった。

手探り状態で隠し戸を見つけ這い上がった。

屋敷はメイド一人おらず、部屋中埃だらけでさびれていた。

物も少なくなっている。

私は固まる身体を無理やり起こして、誰かいないか呼ぶが、誰も来ないので必死に家中を探した。

ちょうど玄関から一人白いひげを生やした老人が入ってきて、私を見て目を見開き持っていた杖を床に落とした。


「ローザお嬢様!!お目覚めになられたのですね!」


老人は私に縋り付き、涙を流し始めた。

よく顔を見たら、父の執事をしていたキースだ。


「貴方はキースよね?屋敷には誰もいないのはどうして?お父様は?」


言い淀み、しばらくして決意したように口を開いた。


私が眠っている間、運命の番を研究している者によって運命の番を他人に変えられる魔法が発明されたという。

それは世界各地に広まり、運命の番を解消して新しい番を得る者、愛した人を運命の番に変えるものなど、愛を優先する者で溢れかえった。

愛という人を思う気持ちを大事にすることはいいことだが、貴族社会でそれはいいのだろうかと疑問に思った。


「一度、陛下と殿下に謁見をします。手配をお願いできますでしょうか。」

「おっお待ちくださいローザ様!実は殿下は……」


慌てて止めてきたキースの話を聞いた私は目を見開いた。

しかし、自分の目で見て耳で聞かないと信じられず、キースに手配してもらった馬車に乗り込み、長い時間揺られながら王城へ向かった。


それが冒頭のセリフである。

王子とその隣の少女の手の甲には同じ花のような痣が刻まれており、私に見せつけた。


「貴族でなくなった私は用済みということでしょうか」


運命の番のあざがあった場所を震える左手で服の上から握りしめた。

キースの話では5年前、叔父の失態で巻き込まれた家は財政難に陥ってしまい、父は病死して家は没落したのだと言われた。

母は私が生まれた時になくなってしまったので、私には兄弟もおらず、父を助ける人がいなかった。

父は死ぬ前に私財をすべて売り払い、使用人たちに十分な金を持たせ解雇し、キースの一家に私の安否だけを定期的に確認してほしいと頼んだのだ。



「いくら運命の番でも、貴族でなくなった平民の貴方と結婚などできるはずもない。今では運命の番は変えられる。」


20年前ふくふくとした可愛らしい天使のような赤子が、今では人を見下して笑っているとは。

王子の言葉に私は爪が立つほどさらに強く握りしめた。


「取り決めでは父が万が一死亡したとしても、爵位は私が継ぐことになると陛下が取り決めてくださいましたが…。」

「なるほど…確かにでは貴殿の父が亡くなってからのブライア家の領地5年分の税を一括で支払いたまえ。遅延金は免除しよう。それで貴方が貴族だと認める。」

「5年など払えません。一族の土地や事業を取り上げられ、どう働けと?」


貴族は没落すると自動的に土地は王家に回収される。

父がやっていた事業は叔父が担保にしてしまい、奪われたという。


「貴族社会は民のために慈善事業をするものだが、貴族に対して慈善を施すことはない。貴族は貴族なのだから。王家は褒美しか与えないものだよ。自分でなんとかすることだな。」


ここでノブレス・オブリージュとは笑わせる。

王都に来るまで私の家の領地だった場所は荒れ果て、民は苦しんでいた。

王族の所有地となったあの場所の民に慈悲もやっていない人が使っていい言葉じゃない。

かつての生まれたばかりの無垢な子供は、20年でこうも心が汚れるのかと唇を噛みしめた。

しかし父が守っていた故郷を取り戻したい。


「……金の算段が付きましたら、またお伺いしてもよろしいでしょうか。」

「構わない。できるならな」


こちらに目も合わさず王子は変更した運命の番と共にさっさと退場していった。

私は一礼し、すぐさま城を出、馬車に飛び乗った。

袖をまくりあげ、王子と同じ形の痣がある腕を見たが、痣が何処にもなかった。

番を解消されると痣も消えるのか。

ずっと堪えていた涙が次々と零れ落ちスカートに染みを作った。


屋敷に戻ってきたものの、金になるものはない。

食事はキースが父に恩があるからと、温かい食事を彼の家で振舞ってもらった。

私はお金になるものはないだろうかと埃が被った父の執務室の机を触っていると、隠し棚を見つけた。

そこには金貨と銀貨と手紙が入っていた。


『起きた時に困らぬよう少しだが残しておく。使わないでいればそれでいい。それと迎えがすぐに来るはずだ。その男についていきなさい』


と書かれていた。

迎え?男?誰がくるかはわからないが、父は私のために準備してくれていたようだ。

まだ私は生きていられる。

このお金で何ができるか、得意な魔法で用心棒をまずは始めるか考えていると、ヒヒーンと馬の鳴き声と、馬車の車輪が止まる音が外から聞こえてきた。

二階の窓から馬車の方を見下ろすと、一人の男が降りてくる。


手紙に書いていた迎えの男とはあの人だろうか、と急いで下の階へかけ降りた。

勢いよく玄関のドアを開くと、丁度相手も扉を開けようとしたのか、宙に手が浮いているポーズのまま、扉がかってい開いたのを驚き目を見開いていた。


「…ああ、二十年前と変わらないな君は。赤い茨姫?」

「っ貴方は!?」

「そうか、今の俺ではわからないか。俺はシルヴァン・プルヴィアス。先の戦で公爵の位を賜った。君とは戦場で何度も剣を交えた男だ。」


私は目の前にいる男を見て固まってしまった。

シルヴァン・プルヴィアスと言った…?

シルヴァン・プルヴィアスは二十年前、戦で何度かしのぎを削った敵であり、隣国アルステッド国の英雄だ。

彼はアルステッド国で最強の剣士と吟われていた。

その当時の私より年下で十八歳の若き天才剣士であり、軍の采配に関しても才能があった。


戦いで私が考案した幻影魔法や魔法の罠を頭脳で解き明かし、痛手を負わされてきた。

私が勝てたのは当時運命の番であった王子が生まれて私の魔法を強くしてくれたからだ。

彼にも運命の番がいたのであれば、私は確実に負けていだろう。


なぜそんな敵人が私の家の前に堂々と立っている。


戦場での鋭く冷たい目をした十七歳の時と打って変わり、私より一つ頭が抜けた高い身長、服の上からでもわかるがっしりと筋肉がついて大きくなった肩幅、そして、余裕がありますと言わんばかりの整った顔での微笑み。

黒い髪の隙間から見えるアメジストのような紫色の瞳は不敵に私を見つめている。

今の年は三十七歳ということか。

令嬢達が放ってはおけないような、立派な男性に成長していた。


「何の用でしょうか?」

「君の父君から頼まれた。君の世話をして欲しいと。」


敵国の貴方に父が?


「私は父に売られたのでしょうか?」

「逆だ。君をただ守るためだ。腐った貴族からな。」

「信じられません!敵国の英雄が堂々と我が国を馬車で移動している。偵察にしてもおかしい。」

「大事な協議があったから代表としてこの国参上しただけだ。入国許可は出ている。」


書状を私に見せ、そこには確かに両国の代表のサインが魔法で書かれていた。

魔法契約書は偽造が難しい。

魔法を分析すると偽物ではないのがわかった。


「さて本題を話そう。ローザ嬢、俺と隣国に来ないか?」

「は?」

「言っただろう。お前の世話をすると。そのために俺の国に来てもらわないとなにもできん。ここに君の父と交わした契約書もある。」


別の契約書を渡してきて、それを広げると見慣れた父のサインがあり、目の前の男が命に代えても私の命を守ると項目に書かれている。

なぜ隣国の英雄が、憎んでいてもおかしくない敵国の女をどうして?


「ブライア侯爵との契約は俺にとっても利益があるものだったからだ。契約を破ると俺は力の大半を失い、闘えなくなり英雄ではなくなるだろう。君を無理やり自国へ連れていけるが、まあ君に考える時間を与えてやってもいいと思った。」


それは私が断っても意味がないということではないか。

シルヴァンをにらみつけるも、彼は腕を組んで一ミリも動じていない様子だ。

実際今の私は金も家も土地も兵士もいない。ただのちょっと強い魔法使いなだけだ。

彼にとってはいつでも組み敷ける弱い人間なのだ。


「…お前の父が死んだ理由を知りたくはないのか?」

「過労で病死したと…」

「違う。他者に嵌められたせいだ。」


どういうことだ。叔父を助けるために父も身を削っての結果だったのではないのか。


「契約書にサインすればすべてを教えよう。サインしないのであれば、この国で何も知らず搾取され続けて生きていくんだな。」


守るというのは命だけではないのですか?生活まで援助してくれる契約なのですか?

「いいや?君の人生、我が国で許せる範囲で全て幸せにするつもりだ」


シルヴァンはペンを取り出し、魔法契約紙にすらすらと契約項目を書き出していく。


甲=シルヴァン・プルヴィアス 乙=ローザ・ブライア

一つ、甲は乙の生命を守ること

一つ、質問には答えること(秘匿情報はこれ限りではない)

一つ、甲は乙を娼婦や奴隷に落してはならない

一つ、甲は乙に衣食住を提供する

一つ、甲からの要望を受ける受けないは乙の自由である

一つ、双方事情もなく側を離れないこと

一つ、合意がなければ夜の行為は行えない


書かれていて内容はこうだった。


「真実を知った上で復讐したいとなったら、共に旗を上げてもいいぞ」


復讐したいと思うほどの内容は、この男が作り出した物語なのか。

父は脅されて、目の前の男の策略にはまって没落したのではないか。

ぐるぐると不安な考えに呼吸が浅くなっていく。


いいや、一人で生きることを選んで土地を奪う返すことが何十年もかかるようなら、目の前の男を利用すればいい。

契約書には私が彼を殺してはいけないとは書かれていない。

都合のいい内容ばかりだ。


「ひとつ質問です。この最後の分は何でしょうか…?」

「記載がないと困るだろう?俺は無理矢理は興味ないんでな。」


困るとはなんだ。

私から求めることなんて天地がひっくり返ってもないのだが。

しかし純潔を守られるのは安心だ。

眉間にシワをつくりながらも納得した。


彼が事の首謀者であるのであれば、近くにいればいつでも剣を心臓に突き刺すことができる。

契約の抜け穴はないかとじっくり考え、私はシルヴァンからペンを貰い、ペンにも細工がないかしっかりと確認してから契約書にサインをした。

シルヴァンはサインを見て口端を上げ、自らも同じようにサインをし、書き終わったものを私に渡した。

双方のサインが並んでいるものを見て、私は契約書をまき直した。


「俺は君を我が国で許せる範囲で不自由させず幸せにするつもりだ。最初は敵国の女として冷ややかな目を向けられるだろうが、君ならきっとそれすら変えてみせてくれるだろう」

「敵国に寝返ったなど知られたら貴方の国で受け入れてもらえないと思いますけど?」

「君はもう貴族ではない。国に先に裏切られたのだから正当な復讐理由として我々は受け入れるぞ。それに俺がいれば問題ない」


雑すぎる。その自信は何だ。不安でしかない。

しかし契約書に私を守ると書かれているのだから、この男の前ではそうそう私に手を出してくるはもいないだろう。


「さて、詳しい話は馬車でしようか。持っていくものを馬車にのせてすぐ出発するぞ。国境まで2日、ゆっくり話そう。」


私は父の執務室から見つけた手紙とお金と、少々の着替えをカバンにつめて、馬車に乗った。

キースにも声を掛けたいと、家に寄ってもらいことを隠して挨拶だけして去った。

かつての敵国に行くと言ったら全力で止めに入るのはわかっていたからだ。


「それで…、父の件についてですが…」

「今は証拠となるものを一切持ってきていないから話だけになるが、いいか?」

「もちろんです」

「君の叔父は先代からほぼ勘当状態で家を出されたと聞いている。そのことから後を継いだ弟を憎み、家を取り戻そうとしていたが、君が王家の子供と運命の番になってしまって、より難しくなっていた。不幸中の幸いが君と番の王子が歳離れていること、君が人口冬眠することを知り、君が寝ている間実行したということをブライア侯爵直々に聞いた。ブライア侯爵は君を殺されまいと、俺に契約を持ち掛けたということだ。調べたらすぐわかるが叔父が今君の父の全事業を奪って懐が潤っているだろう。」


叔父が私の父を陥れた?

お父様は私を何とかして守ろうとあんな地下室に私を隠していたのか。

これが本当であれば、叔父から事業を取り戻す計画を立てなければならない。


「国についてからゆっく調べるといい。商人に聞けば簡単に情報がでてくる。それでほかに質問は?」


そういわれて質問の内容を考えた。

この人は私を敵国に連れていき奴隷魔法を掛け、魔法の才能を戦場に使う気だろうか。

いやしかし、契約書に要望を聞くのは自由だと書かれていたから、国からシルヴァンに命が下ったとしても、私には関係ないと突っぱねてもよいと考えられる。

これから一緒に暮らすということになるのだから……


「あの…シルヴァンには奥様がいるんですか?」

「パートナーはまだいない。だから気にしなくていいぞ。」


その年でまだ結婚していない?

公爵の位をもって、その見た目なら引く手数多だろうに。


「私は使用人の部屋で構いませんから。お世話になると言っても間借りさせてもらう身。番が見つかったら私の存在は迷惑だし、あ、いや番は変えられるんだっけ。」

「俺の国では貴族や上級の兵士や魔法使いは運命の番を書き換えるのは禁止している。」

「どうしてですか?」


我が国では貴族が喜び舞いあがって、喧嘩したり合わなくなったら、ばかすか運命の番を変えているらしいというのに。


「運命の番を変えるという魔法は最大のデメリットがあったんだ。本当の運命で決められた番と共になったカップルの能力向上の上昇率よりも、運命を書き換えた者のペアは能力向上の上昇率が著しく落ちたのだ。」


運命の番の効力が落ちる?

それは国からするとかなりのデメリットだ。


「それは我が国も知っているのですか?」

「最近分かったことだ。それに他国が勝手に弱っていく絶好のチャンスだから秘匿情報だな。」

「私にしゃべってよかったのですか?」

「二十年眠っていて貴族でなくなった君の言葉を他者が信じると思わない。」


相変わらず目の前の男は冷静に物事を判断して話す。

私に敵側の情報をわざわざ話してくれることが戦場でもあったが、知ったとしてもどうもできなかったことばかりだ。

いつも掌で踊らされている感じがする。


「現在は婚姻が許される年の16歳まで男女とも運命の番の変更を禁止している。それまでに才覚が出たものはそのまま禁止となる。つまりは平凡な一般人は自由ってわけだ」

「恋愛婚を禁止するのは王政が揺らぐのでは…。」

「暴動が起きるほどに禁止を反対する者はいなかったぞ。運命の番というのはただ側にいるとお互いが強くなるということだけで、運命の番の間の子供が、優秀な子供が確実に生まれるということでもないからな」

「運命の番同士のカップルは優秀な子が生まれるのではないのですか?!」


オーロラ国では運命の番の間に生まれた子は才能豊かな子が生まれると考えられている。

だからお互い好みでなくても必ず子作りをしなければならなかった。


「昔はそういう話もあったが、ここ数十年の我が国の統計では微妙な話だ。魔法特化の両親の間に生まれた子が天才もしくはかなり優秀である確率はだいた七パーセントという結果が出た。」


その研究が本当なら、微妙な数字である。

私はあんぐりと口が開いてしまった。

運命の番は結婚して子供を産まないといけないとずっと思っていたので、二十年も眠ったというのに必要性がなかったことに驚き虚しさを覚えた。

この話が二十年にあったら、叔父の策略を防げたかもしれない。

父や友人たちと同じ時間を人生を過ごせた。

じわりと涙が目の膜を張った。


「友人関係もしくは相棒として関係を持ち、別の人間と結婚していいと昔からなっている。君の国では運命の番同士で結婚するべきだと法律があるが俺の国にはない。しかし一部の人間は愛する人こそが特別であるべきだと嫉妬心とロマンスで運命の番の書き換えを求めるやつがいるのは確かだ。」


シルヴァンはため息をついた。

その場にいてみていたのだろうか、呆れかえった表情だ。


「さて、君に一つ伝えておかないといけないことがある。」

「なんでしょう?」

「俺は三十七になるまで番がこの世にいなかったのだが、つい最近番が存在していることがわかった。その上誰が番かも判明している。君にも大きく関わることだから、困ったことがあれば素直に言ってくれ。」

「貴方の番についてこちらから何か要望や指摘することはありませんが…?」

「そうか、それは助かる。」


シルヴァンは安心したように手袋を外し、手の甲に剣のような痣を私に見せた。


30歳差……?それはなかなかだが、先ほどの話を聞いているので、よき親子のような間柄になるだけなので侮蔑の気持ちは湧かなかった。

それよりも自分の不安でいっぱいだった。

番解消された番はこれからどうなるのだろうか。

王子との縁が切れて魔法の力は弱まっていた。

番がいたころの戦力はもう私にはない。

私は痣があった右腕をさすった。


シルヴァンはそれを見て、徐に私の腕を自分の方に引き寄せ言った。


「これからよろしく頼む。俺の番様?」


袖が上げられ私の腕には以前の番の痣ではなく、目の前の男の痣と同じものがあった。

今日起きてから一度も腕の痣を見ていなかったから、新しいものに変わることは思ってもみなかった。

なんということだ、私は敵国の公爵と番になってしまった!


「待ってください!運命の番を変えてはならないとさっき…!」

「言っておくが俺は一切何もしていない。昨日突如現れたのだ。」


運命の番の解除や結ぶのは上級魔法使いが複数人で強力な魔法を掛けて処置を行うという。

近くに番となりたい者、解除した者が側にいなければならないなど、血が必要だとかいろいろ決まりがあるらしい。

私は先日起きたばかりで、儀式などしていない。

これは本当に自然に番になってしまったのか。


「側を離れるなよ、ローザ」


そう言って私の痣に唇を寄せ、キスを落とした。


私は混乱する頭の中で、側を離れないと記載された魔法契約にサインしたことを思い出した。

私が番だと分かっていてこの男はあの契約書を作ったのだ。

さーっと青くなった私を見下ろしながら、不敵に笑う目の前の男が憎らしかった。

私は敵国の公爵に騙されてしまったのだった。

シルヴァンはローザの事を戦場でおもしれ―女と思っていて初めから好意的に思っています。

番になれてすごくうれしく思っていて、溺愛してくれると思います。

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