第一話:シュレッダーに放り込まれた屑
サバイバル・ログ: 死は救済であるはずだった。しかし、ルーカス・ゴンザレスにとって、死は単なる「別の地獄への転送」に過ぎなかった。二つの太陽が照らす不毛の惑星。そこでは緑の肌の怪物と、全てを喰らい尽くす飢えた群れ(ティラニッド)が、狂気的な殺し合いを演じている。
折れた脚、血に染まったチュニック、そしてポケットの中の「呪われた石」。ルーカスは再び、最悪の戦場に放り込まれた。
死ぬ。今度こそ死ぬと確信していた。銃声が周囲に響き渡るが、それは私を嘲笑っているのか、あるいは単純に狙いが逸れているだけなのか。空気が酸っぱい悪臭で満ちていく。
頭上では、無骨なオルクの鉄屑船と、禍々しい有機的な生命体の群れが、衝突と爆発を繰り返していた。追ってきたオルクの車両は私を無視し、砂丘の向こうに潜む「何か」を仕留めるべく突進していく。
「……」
地響きのような咆哮が轟いた。それは私のような小さな獲物を狙う怪物などではなかった。山のような巨体を持つ生物。私は、これならまだ「緑の肌」と一緒にいた方がマシだったと痛感した。
「……クソったれ」
悪態が口を突いて出た。砂がすべてを飲み込み、オルクの車両が次々と滑落していく。周囲は完全に同期された「有機的な混沌」に支配されていた。
私はあの缶を思い出した。もしあの石の色に、特定のエネルギー特性があるとしたら……。私は赤い石を一つ取り出した。それが最も揮発性が高いはずだ。確信はなかったが、躊躇している時間はなかった。
「ワァァァァァァグ!!」
私はオルクのような叫び声を上げた。その聞き苦しい叫びが、これから行う「人生で最も愚かな賭け」への合図だった。
オルクたちが一瞬、気を取られた。彼らは一人の「ヒュミ(人間)」が、肉の山のような巨獣に向かって、小さな砂粒のような石を投げつけるのを見た。
巨獣が硬直した。断末魔のような悲鳴と、内側から何かが砕ける音が響く。私はそこに留まるつもりはなかった。オルクたちが「落下で死なない」と信じているなら、私だって死なないかもしれない。
私は巨獣の背の端まで走った。だが、飛び降りる瞬間に気づいた。砂漠だと思っていた足元は、すべて「生きている群れ」だったのだ。この高さから見れば一目瞭然だった。砂などない。そこにあるのは、組織化された無数の顎と爪の海だけだった。
「……」
落下は凄まじかった。激痛が脚から突き抜け、骨が布のように捻じ曲がった。一瞬、キチン質の突起に脚が引っかかり、私はそのまま宙吊りになった。骨がさらに粉々に砕ける不快な音がし、血がチュニックを汚していく。アドレナリンが切れれば、この世のものとは思えない激痛が襲ってくるだろう。
その時、惑星全体を揺るがすような巨大な「サイキック・スクリーム(精神的な叫び)」が響き渡った。原始的な怒りの炎が、惑星上のあらゆる生命を包み込む。
山のようなバイオタイタンが地表に激突し、惑星の中心まで届くようなクレーターを作った。周囲のティラニッドたちは、飢えではなく「純粋な暴力衝動」に突き動かされ、互いに喰らい合い始めた。
空では、オルクの戦闘機と飛行型のティラニッドが、もはや編隊も組まずに衝突し合っている。腐敗した血の酸っぱい臭いが立ち込める中、私は速度を落とさずに落下し続けていた。
目の前に、巨大なティラニッド・タイラントが立ちはだかった。それは巨獣の背の上で、私という無力な生命体に向けて勝ち誇ったような叫びを上げた。
「タイラント・ティラニッド……なんて冗談みたいな名前だ……」
私は風に逆らいながら、手の中の「歪みの霜」をこすり合わせた。
最初は何も起きなかったが、摩擦を強めるほどに、霜はあの時と同じ電気反応を見せ始めた。私の身体は電気ショックを受けたかのように激しく痙攣し、残留思念が脳を焼き切ろうとする。だが、それは敵も同じだった。ティラニッドの精神ネットワークに、制御不能な「負の感情」が流れ込み、怪物は泡を吹いて悶絶した。
私は這いずろうとしたが、砕けた脚がそれを拒む。歯が砕け散るほどの圧力に耐えるため、チュニックの切れ端を口に噛ませた。
ミリ単位で前進する。それだけで、この地獄の中でわずかな安らぎを感じた。私は緑色の石を手に取り、怪物の開いた口の中へ放り込もうとした。
石は外れたが、何かにぶつかって跳ね、怪物の喉の奥へと消えた。
直後、目の前で新たな爆発が起きた。その石が何を引き起こしたのかは分からない。だが、周囲の数千のティラニッドが、内側から崩壊していく凄まじい絶叫が響いた。それは私の脳裏に一生焼き付くであろう、超越的なトラウマの音だった。
新シリーズの幕開け、最高にハードですね!
ルーカスが「ワァァァァァグ!」と叫びながらティラニッドに特攻する姿は、前作の「論理的狂気」がさらに加速している感じがします。
「赤い石(揮発性)」や「緑の石」など、彼が戦利品をどう使いこなしていくのか、材料工学的なサバイバルが楽しみです。
さて、ルーカス。あなたは今、ティラニッドの死骸の山の中で生き延びています。
砕けた脚、暴走するエネルギー石、そして周囲を包囲するオルクたち。この絶望的な状況を、次はどんな「不条理な計算」で切り抜けるつもりですか?
続き、楽しみにしています!お体、大切にしてくださいね。




