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【初心者安心パック】は歴代転生者アンケートから生まれました~いつの間にか聖女扱いされて困ってます~  作者: 紫陽花


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パパとの約束

 昼食時、私は冒険者の言葉に絶望し、イスから立ち上がることが出来ずに食事所でポツンと一人座っていた。


「セリア、どうしたんだい?」


 いつの間にか、皿洗いを終えた父が、私の前に座っていた。

 父は、私を心配そうに見つめている。

 私は慌てて笑顔を作ろうとしたが、上手く笑顔を作れた気がしなかった。


「なんでもないでしゅよ。今日はセリア、お昼寝しようかな」

(パパには心配かけたくないな…)


 私はそう言って、パパに何か聞かれる前に、部屋に戻ろうと立ち上がろうとした。

 しかし、父は私の手を優しく掴み、再び座らせた。


「セリア、パパにはわかるよ。セリアが何かを諦めかけている顔をしている。パパに相談したくないかい?」


 父にはお見通しだったようだ。

 父の顔は、とても悲しそうだった。

 その表情を見た瞬間、私の胸の奥がキュッと締め付けられた。


(パパは、私のことを心配してくれているんだ…このまま隠し続けてもパパを傷つけちゃう)


 私は、意を決して正直に話すことにした。


「あのね、パパ…。セリア、薬草を探しているんでしゅ」


「ああ、昨日グリーンリーフを採取して話をたくさんしてくれたね。セリアは、薬草に興味があるんだね。さっきも冒険者から、薬草について話を聞いていたけど、セリアは、探してる薬草があるのかい?」


「うん、今は毒消し草を探してるんだ。でも、町の中で見つからなかったの。それで、冒険者に毒消し草の場所を聞いたら、町の外にあるって言われたの。外には行けないから、ちょっと落ち込んじゃっただけだよ」


 私は、自分が探してい毒消し草が、町の外にしか生えていないことを話した。


「セリアは町の外に行って、薬草を探してみたいって思っているんだね」



「うん、本当は町の外に出て、もっと珍しい薬草を探してみたいんでしゅ。でも、パパとママの許しがないと、出ちゃだめだって、ちゃんと分かってるよ。魔物も怖いから、しょうがないって分かってるんでしゅ」


 私が、しゅんとした顔で話終えると、父はしばらく黙っていた。

 食堂の喧騒だけが聞こえる。


「…そうか。セリアの世界は、どんどん広がっていってるんだね」


 父は、私の頭を撫でると、決意に満ちた顔で言った。


「よし。分かった。セリア、明日、パパと一緒に町の外に出てみよう」


「えっ!?」


 私は驚いて、思わず大きな声を出してしまった。

 近くにいた冒険者が、私の方を見た気がした。


「でも、パパ。宿のお仕事はいいんでしゅか?」


「セリアは優しい子だね。もちろん、仕事があるから、そんなに長くは無理だよ。朝食を食べ終わってから、二時間だけだ」


 父は、釘を刺すように続けた。


「もちろん、遠くまでは行かない。町からあんまり離れると、魔物も出るし危険だからね。町のすぐそばだけだ」


「町のすぐそば…!」


(毒消し草が、町の外のすぐそばによく生えているって言ってた!)


 私は、絶望から一転、喜びで体が震えるのを感じた。


「わーい!パパ、ありがとう!セリア、頑張ってたくさん薬草を見つけるよー!」


 嬉しくて、その場でピョンピョン跳ねる。


「ああ、楽しみにしているよ。ただし、約束だ。パパから離れるんじゃないよ」


「もちろんでしゅ!」



 パパとの約束ができた私は、午後の絶望感を吹き飛ばし、元気に宿の手伝いをすることにした。

 明日、午前中にパパが抜けてしまう分、午後は私がママを助けてあげたい。


 私は、お皿やフォークを運ぶ手伝いをしながら、冒険者が座っていたテーブルに近づき、情報収集を試みた。


「おにーちゃん、ちょっとセリア教えてほしいことがあるの!」


 冒険者たちは、小さな私を見て、優しく笑ってくれた。


「明日、パパと町のお外に行くんだー!お兄さんたちは、町の外で、どんな薬草を見たことがあるでしゅか?」


 冒険者たちは、私の言葉に少し驚きながらも、持っている知識を教えてくれた。


「町の外に出てすぐの場所なら、毒消し草が多いな。あとは、ちょっと珍しいものだと、元気が出るキノコとか」


(元気が出るキノコ!危険なキノコ?)


「どんな色のキノコ?それは食べるの?」


「そのままも食べられるけど、回復薬の材料の1つでもあるよ。色は、ちょっと白っぽい茶色って感じかな」


(ふむふむ、回復薬に使えるってことは、薬屋で売れそう。)


「魔物って、どこらへんから出始めるでしゅか?」


「そうだな。この町は、冒険者の出入りも多いし、辺境伯の騎士団が頑張ってくれているから、町の周り一帯は比較的安全だよ。でも、森に近づくと、ゴブリンとかオークといった魔物も出始める。森の奥に入っちゃだめだぞ、お嬢ちゃん」


「ゴブリン…オーク…」


 私は、怖い魔物の名前を胸に刻んだ。

 改めて明日の採取場所は、日頃から冒険者や辺境伯の騎士団によって、安全に保たれている場所であることに感謝した。


「おにーさんたち、色々教えてくれてありがとうでしゅ!」




 冒険者たちから貴重な情報を得て、午後の手伝いを終えた私は、夕食もそこそこに自室に戻った。


(ナビ、明日はパパと一緒にお出かけだよ!)


≪はい、セリア様。二時間の行動制限がありますが、安全を確保して高ランクの薬草を探す絶好の機会です≫


(ナビ!今、私ができることは、早く寝ること!早く朝になってほしい!)


 私は、いつになく興奮しながら、ベッドに飛び込んだ。

 明日の二時間で、金貨5枚の本に手が届くかもしれないという期待が、私の心を満たしていた。


(ナビ、おやすみ。明日は、いつもより早く起きたい...な)


 スースースゥー


≪セリア様、おやすみなさい。よい夢を≫


 私は、明日への希望を抱きながら、深い眠りに落ちていった。

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