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平等主義を後退させる平等主義

 親による“子殺し”の事例を集めると、血縁関係にない間柄、つまり養子の割合がとても多いのだそうだ。

 この事実は進化心理学という分野で説明可能だ。簡単に言ってしまうのなら、“自分に近い遺伝子”を共有する者を仲間として認識する傾向が人間に強いという事を示しているのだろう。だから近い遺伝子を持っていない養子の子供の殺人が多い。

 人間は“自分に近い遺伝子”を持った存在を優遇し、他を排除しようとしてしまう。だからこそ白人は白人を優遇しようとし、黒人は黒人を優遇しようとし、黄色人種は黄色人種を優遇しようとする。要するに、差別を行ってしまう。

 この人間の性質は、異なった遺伝子を持つ人間の間で協調行動を執りたいと思った場合には弊害になる。協調行動を執った方が互いの利益になるのに。

 “平等思想”、“平等主義”は、この人間のバグとも言える“差別を行う”性質を克服する為にある社会概念だと或いは説明する事が可能かもしれない。

 ――だからこそ、僕は欧米で平等主義を推し進める運動が活発化していると耳にした時、それを好意的に受け止めたのだ。

 “それは素晴らしい! 是非とも応援しなければ!”

 と。

 

 ……でも、

 なんかちょっと色々と様子がおかしかった。

 一部の人達(本当に一部に過ぎないから、そこは注意して欲しいのだけど)は、日本のアニメや漫画に黒人が出ない事に文句を言っているらしい。

 「黒人を差別するな!」

 と。

 

 ちょっとよく分からなかった。

 

 多分、多くの日本人も共感してくれるだろうと思うのだけど、僕はアメリカの映画に黄色人種が出て来なくても別に変だとも差別だとも思わない。そーいう社会のそーいう話なのだと受け入れるだけだ。

 だって、この世界には様々な社会がある訳で、その全てに黄色人種が存在していたら逆に変で、むしろ多様性が失われているじゃないか。

 (因みに、日本の漫画の多くは白黒で描かれているから、どうしたって色を塗る都合上、黒人は出し難いという事情もあるのじゃないかと僕は考えている。僕も軽い趣味程度で漫画を描くのだけど、色を塗るのにコストがかかるからよく分かる)

 その内に、このような話も耳にした。

 日本のアニメや漫画のキャラクターを、一部の黒人達が黒人に変えて描いているらしい。これは実は少なくとも日本の法律では著作権法に違反しているのだけど、それは原作者が許しているのだから目を瞑るとして、許容範囲を超える主張も彼らはしている。黒人化した日本人のキャラクターを示し、

 「これで正しくなった」

 と言っている人達がいるのだ。

 ちょっと意味が分からない。

 原作者が日本人として創作したキャラクターを勝手に黒人に変えて“正しくなった”ってどういう事?!

 まるで黒人の方が優位だから、日本人を黒人に変えたと言っているように聞こえる。この辺りで、僕は彼らの平等思想をかなり怪しく感じ始めていた。

 もしかしたら、彼らは知識が足らなくて、平等思想をはき違えていやしないだろうか?

 また、こんな事もあった。

 日本人の素人のイラストレーターが、あるアニメ会社に登場する様々なキャラを描いて炎上するという事件が起こったのだ。中東アラブ系のキャラを描いていなくて、「黒人を差別するな!」と一部の人達が怒ってしまったのである。

 黒人?

 僕は頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。

 そのキャラクターは、恐らくは人種で判断するのなら白人に当たるからだ。白人は主にヨーロッパ、中東、または北アフリカにルーツを持つ人々で、地域的にも顔付きで言っても中東地域の白人だろう。まあ、肌は褐色だから白人と呼ぶのには抵抗があるけども、少なくとも黒人ではない。

 もし仮に、アラブ系の人々が、そのキャラクターが黒人として扱われているのを知ったら、或いは侮蔑と考えて怒り出すかもしれない。文化盗用などという言葉は使いたくはないけど、これはそれに当たると言っても過言ではないだろう。

 ただ、多分、その人達にはそのような認識はないはずだ。恐らくは、ただただシンプルに知識がないだけだから。

 実はこのような事例は他にも数多くあるのだ。褐色の肌というだけで、黒人達がそれを黒人だと思い込んでしまう……

 

 ――ひょっとしたら、彼らはそもそも平等思想を理解していないのかもしれない。

 

 そんな風に思っていた矢先だった。このようなニュースが飛び込んで来た。「“平等主義を訴える”とある有色人種の女性が、白人差別を行って解雇されてしまった」というのだ。彼女は自分の職場には一切白人は雇わないと宣言をし、実際にその通りにしてしまったのだとか。

 そして、彼女はこのような事を述べていた。

 「白人に平等なんてあり得ない」

 彼女が平等主義を理解していないのは明らかだろう。

 “平等思想”、“平等主義”は、人間のバグとも言える“差別を行う”性質を克服する為にある社会概念だと先に述べた。しかし彼女はその平等思想を口にしながら、人間のバグである“差別”を行ってしまっているのだ。しかも、他の事例を鑑みるに、彼女以外にもこのような勘違いをしている人は多数いると考えた方が良いだろう。

 もしも、それだけなら、そこまで大きな問題ではないかもしれない。

 が、そのような一部の人が平等思想を語って差別を行う事で、或いは、本当の平等思想を訴える人達を嫌悪する風潮が生まれてしまうかもしれない。

 例え、それが誤解だとしても。

 するとそれは、平等主義を後退させる要因になってしまうかもしれないのだ。

 

 もう少し、強く問題提起をするべきじゃないだろうか?

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