調査の幕開け、影の追跡
帝国歴1500年4月5日、ナタアワタ共和国首都。銀河連邦元老院の調査団再派遣決定から3日、宇宙港に一隻の輸送艦が降り立った。銀河連邦調査団、神聖旭日連邦帝国3名、ゼンメホ帝国2名、ブレクティア同盟2名、エリュシオン連合1名、そして神聖旭日連邦帝国宇宙軍遠征隊の精鋭30名が護衛として随行していた。
ネオンの輝く滑走路に、エクレール大統領が黒のドレスで立ち、妖艶な微笑みを浮かべていた。だが、その碧眼には不自然な曇りが宿り、言葉の節々に微かな硬さが滲む。宇宙港の歓迎ホールは、ガラスと鋼の無機質な空間に、ナタアワタ共和国の国旗が揺れている。調査団の代表、神聖旭日連邦帝国の帝国先端科学査察局(ARIA)エージェント、セリア・アルヴァンが先頭に立つ。彼女の鋭い視線が、エクレールとその背後のブライス補佐官を捉える。ブライスは微笑むが、目の動きに一瞬の空白があり、会話の間に不自然な間が生じる。エクレールが手を広げ、滑らかに言う。「ようこそ、銀河連邦の皆様。ナタアワタ共和国は、中立と透明性を大切にしてるわ。思う存分、調査してってね。」その声は甘美だが、抑揚がどこか単調だ。
セリアが冷静に応じる。「大統領閣下、歓迎に感謝します。都市インフラ、軍事倉庫、通信網を調査します。全面的な協力をよろしくお願いします。」エクレールの微笑みが一瞬硬くなる。「もちろんよ。ナタアワタに隠すものなんてないわ。ブライス、案内してあげて。」ブライスが丁寧に答える。「承知しました。調査ルートは準備済みです。インフラ管理センターから始めましょう。」だが、その声に感情の深みが薄い。ゼンメホ帝国の使節が眉をひそめる。「インフラだけ?軍事倉庫の調査も必須だ。」エクレールが笑う。「焦らないで。順番に全部見せるわ。ナタアワタ共和国の潔白、しっかり証明するから。」セリアの目は、エクレールの不自然な微笑みと、ブライスの微妙な違和感を見逃さない。
宇宙軍遠征隊の隊長、カレン・ヴォルフが30名の護衛を率い、輝刃型三式光子剣「カガヤキ」とオーロラ-9突撃銃を携えて周囲を警戒する。そんな中でカレンがセリアに囁く。「大統領の喋り方…何か変だ。ブライスも、笑顔が不気味よ。」歓迎式典が終わり、調査団はブライスの案内でインフラ管理センターへ向かう。エクレールはホールに残り、ネオンの光を見つめる。「神聖旭日連邦帝国…どこまで嗅ぎつけるかしら。」その声に、微かな不協和音が響く。ブライスの端末が微弱な信号を発し、エクレールの洗脳された心を、ガフラヤサタ連邦の意のままに操っていた。
ナタアワタ共和国首都、宇宙港に停泊する特殊作戦艦アルヴィオン・ノクターン。漆黒の艦は光学迷彩で隠れ、司令部として静かに息を潜める。ブリーフィングルームで、ヴァレリア・セラフィム上級指揮官は12名のノクティア・オルドを見渡す。ホログラフスクリーンには、調査団到着の映像と、ブライスの通信ログの解析データが映る。ヴァレリアの瞳には、ヴァイスとルゥナの無念、エルネスタ・タワーの3万人の犠牲が刻まれている。「銀河連邦調査団が着いたわ。エクレールは歓迎を装ってるけど、ブライスの通信ログに次の取引の痕跡がある。奴らの裏取引、絶対に暴くわよ。」第2班班長イリナ軍曹が頷く。「ヴァレリア、ログ解析で軍事倉庫の座標を絞ったわ。今夜、地下倉庫で取引よ。」第3班班長セリス軍曹が言う。「民衆の不信が高まってます。偽装信号が効いてるけど、シュヴァルツ・シュトラークの『10万人』の警告が気になります。次の罠を警戒しないと。」ヴァレリアが目を細める。「エクレールの微笑み、ブライスの動き…なんか変ね。帝国情報庁も、ブライスの通信に妙な暗号パターンがあるって。資金ルートの証拠、掴むわよ。」隊員たちが一斉に敬礼し、「了解!」と答えた。
ヴァレリアは光学迷彩の戦術装甲服を着込み、光子力テレポート装置を調整する。イリナ班は通信網のハッキングを、セリス班は民間人エリアの監視を準備。アルヴィオン・ノクターンの戦術AI『エクリプス』が、量子暗号の解析を支援する。
その夜、ナタアワタの地下軍事倉庫。ヴァレリアは光子力テレポートで瞬時に潜入し、輝刃型三式光子剣『カガヤキ』を握る。倉庫には、ガフラヤサタ連邦の鉱物資源と軍需物資のコンテナが並ぶ。ヴァレリアが端末でデータを転送中、暗闇から気配が動く。シュヴァルツ・シュトラークの隊長、ネーベル・ファウストが現れる。「ヴァレリア、また会ったね。しつこい亡魂だよ。」ヴァレリアがカガヤキを構える。「ネーベル、貴様の刃は民を傷つけた。もう逃がさない!」プラズマナイフが赤い軌跡を描き、カガヤキが受け止める。火花が散り、光子力とプラズマが軋む。イリナ班が通信網から取引データをハッキング、セリス班が周辺のドローンを無力化する。だが、ネーベルが冷笑する。「10万人の血、楽しみにしてなよ。」シュヴァルツのドローンがEMP爆弾を投擲し、ヴァレリアの端末がノイズに包まれる。彼女は咄嗟に光子力テレポートで回避、データを一部確保。「くそっ…まだ足りない!」ネーベルが煙幕で撤退する中、ヴァレリア達は艦に帰還した。
ブリーフィングルームで、隊員たちに言う。「資金と物資のルート、掴んだ。けど、エクレールの動き…何か裏がある。」イリナが頷く。「ブライスの信号、変だよ。人間っぽいけど…なんか、妙に完璧すぎる。」セリスが続ける。「民衆のデモが拡大中です。次の取引を暴けば、エクレールの仮面、剥がせるよ。」ヴァレリアの瞳に決意が宿る。「調査団と連携して、ナタアワタの闇を暴く。次の戦い、決めるぞ。」ナタアワタの闇は深い。エクレールの洗脳、ブライスのクローン、シュヴァルツの刃が、正義を試す。帝国は資金と資源ルートを追うが、ガフラヤサタの真の計画には気づかず、調査団の到着は、星々の審判を下す一歩となる。天の川銀河は、戦乱の渦へ突き進む。その中心で、帝国の光は、闇に挑む準備を整える。