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新世紀宇宙戦争  作者: 007
第4章 暴露
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闇の策謀、星を覆う

同時刻。銀河連邦元老院でのナタアワタ共和国への調査団再派遣とガフラヤサタ連邦への追加制裁可決の報は、天の川銀河に波紋を広げていた。ナタアワタ共和国とガフラヤサタ連邦は、それぞれの首都で、密やかな対策会議を開いていた。神聖旭日連邦帝国の剣が近づく中、闇の策謀が静かに蠢き始める。


ナタアワタ共和国首都、大統領府の特別会議室。黒大理石の壁に囲まれた部屋は、冷たく静まり返っていた。中央の長机に座るエクレール大統領は、黒のドレスに身を包み、妖艶な微笑みを浮かべている。だが、その碧眼には不自然な曇りが宿り、言葉の節々に微かな硬さが滲む。彼女の前には、ブライス補佐官と情報庁高官数名が控え、ホログラフスクリーンに元老院の議事録が映し出されている。ブライスの表情はまるで仮面のように無機質だ。エクレールがワイングラスを揺らし、ゆっくり言う。

「神聖旭日連邦帝国のエイン、やるわね。調査団の再派遣に制裁だなんて、天の川銀河の目をこっちに引きつけてきたわ。」情報庁高官が緊張した声で答える。「大統領、神聖旭日連邦帝国の諜報員が調査団に紛れて来るのは確実です。ノクティア・オルドも動いてます。証拠を…隠さないと…」エクレールが微笑むが、目が一瞬虚ろに揺れる。「隠すだけ?そんなちっちゃな考えじゃ、神聖旭日連邦帝国を出し抜けないわ。調査団を大歓迎して、目をくらますのよ。」ブライスが無感情に言う。

「調査団は、3日後にます。通信ログは既に消去済み。軍事倉庫のデータも偽装済みです。」高官が眉をひそめる。「でも、大統領…ノクティア・オルドがブライス補佐官の通信ログを追ってます。エルネスタ・タワーの爆破も、奴らが嗅ぎつけてるかも…」

エクレールの声が低くなる。「あの3万人のことは『事故』よ。次も事故でいいわ。調査団が来たら、ナタアワタ共和国の潔白を証明するような、派手な事件を起こすのよ。」ブライスが頷く。「エネルギー施設の爆破を準備中です。シュヴァルツ・シュトラークに要請済みです。神聖旭日連邦帝国を非難の的にします。」会議室に沈黙が落ちる。高官が震える声で言う。「民衆がざわついてます。ノクティア・オルドが偽装信号を流して、裏取引の噂が…」

エクレールの微笑みが硬くなる。「そのくらい、織り込み済みよ。民衆の不満は、神聖旭日連邦帝国のせいにすればいい。記者会見を開いて、神聖旭日連邦帝国がナタアワタ共和国の中立を脅かしてるって訴えるわ。ブライス、通信ログを完全に消しなさい。」ブライスが一礼するが、瞳に感情はない。「量子暗号で再暗号化済みです。痕跡は残しません。」エクレールが立ち上がり、窓の外のネオンに目を向ける。「神聖旭日連邦帝国は資金や物資の流れを追ってるけど…それ以上の闇には気づかないわ。」彼女の声に、微かな不協和音が響く。情報庁高官が気づかぬうちに、ブライスの指が端末を握り、微弱な信号を発していた。

エクレールの心は、ガフラヤサタ連邦の意のままに操られていた。




ガフラヤサタ連邦、統合政府議長官邸。地下深くの戦略指令施設は、冷たい金属の壁に囲まれ、闇に沈んでいた。中央の執務卓に座るゲルマヴァルド統合政府議長は、漆黒のローブに身を包み、燃えるような双眸でホロディスプレイを見つめていた。そこには、元老院の議事録と、ケタサカ王国宙域での敗北報告が映し出されている。机を叩く拳が、強化ガラスにひびを入れる。傍らには諜報総局長ヘルメスが立ち、ホログラフ通信端末にナタアワタから接続したシュヴァルツ・シュトラークの隊長、ネーベル・ファウストの姿が映っている。

「神聖旭日連邦帝国のやつら…!ナタアワタ共和国に調査団だと?エインの演説で、天の川銀河の目がこっちに集まってきた!」ネーベルが仮面越しに答える。「議長、調査団は神聖旭日連邦帝国の仕掛け。ノクティア・オルドがナタアワタ共和国で資金ルートを嗅ぎまわってる。けど、肝心なとこには気づいてないよ。」ゲルマヴァルドが目を細める。「プロジェクト・ラガッシュはバレちゃならん。ケタサカの民を再構成して、俺たちの標準民に組み込む。ナタアワタの物資がなきゃ、成り立たないんだ。」ヘルメスが冷静に言う。「ナタアワタのエクレールは、完全に我々の支配下です。洗脳装置はブライスのクローンが動かしてます。本物のブライスは、2年前に消しました。」ゲルマヴァルドが低く唸る。

「エクレールの洗脳、神聖旭日連邦帝国にバレてないな?」ネーベルが冷笑する。「まさか。エクレールの微笑みは、ただの『魔性の女』の演技だと思ってる。ブライスのクローンもバッチリやってるわ。ノクティア・オルドが通信ログを追っても、核心には届かない。」ゲルマヴァルドが拳を握る。「ノクティア・オルド…ヴァレリアのやつ。エルネスタ・タワーの3万人のことは警告だったのに、しつこく嗅ぎまわってきやがる…!」ヘルメスが言う。「次の警告は、10万人の血で刻みます。エネルギー施設の爆破を、準備済みです。エクレールが神聖旭日連邦帝国を非難のどん底に叩き落とします。」

ネーベルが仮面を軽く傾ける。「ヴァレリアは手強いけど、私の刃には敵わない。次の戦いで、ノクティア・オルドをまとめて片付けるよ。」ゲルマヴァルドが立ち上がり、言う。「プロジェクト・ラガッシュを、急げ。ケタサカの占領地で、遺伝子改編の試験は始まってる。ナタアワタ共和国の金が届くまで、神聖旭日連邦帝国にバレるな。」ヘルメスが頷く。「通信ログは全部暗号化し、証拠は消去済み。調査団が来ても、闇に沈めるだけです。」ゲルマヴァルドが目を細める。「神聖旭日連邦帝国は、資金や物資の流れを追うだけで満足してる。その先の真実には、絶対に辿り着かせない。」会議室の闇が、ゲルマヴァルドの野望を包む。

プロジェクト・ラガッシュは、帝国の知らぬ間に、静かに進行していた。ナタアワタの仮面とガフラヤサタの闇は、銀河を覆う。エクレールの洗脳された微笑み、ブライスのクローン、ネーベルの刃、ゲルマヴァルドの野望が、正義を試す。帝国は、資金と資源のルートを追うが、プロジェクト・ラガッシュの核心には気づかず、調査団派遣は、星々の審判を下す一歩となる。天の川銀河は、戦乱の渦へ突き進む。その中心で、帝国の光は、闇に挑む準備を整える。

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