星々の審判、議場の陰謀
帝国歴1500年4月2日。神聖旭日連邦帝国首都地球、首相官邸の大円卓会議室。薄暗い照明の下、巨大な円卓を囲む閣僚たちの顔は、緊張と決意に引き締まっていた。議長席に座るアリス総理は、緋色の正装に身を包み、ホログラフスクリーンに映る銀河連邦元老院の議事録を見つめていた。そこには、3日前、ナタアワタ共和国への調査団再派遣とガフラヤサタ連邦への追加制裁が賛成多数で可決された記録が刻まれている。エイン外務大臣が隣の席に座し、銀髪を揺らしながら静かにスクリーンを見上げる。彼女の碧眼には、元老院での演説の余韻と、新たな戦いへの覚悟が宿っていた。
アリス総理が静かに口を開く。「銀河連邦元老院での決議は、私達の正義を一歩前進させたわ。だけど、ナタアワタ共和国の裏取引とガフラヤサタ連邦の野望は、未だ闇の中。この調査団派遣を、私達がどう導くかが、天の川銀河の未来を決める事になるわ。」会議室に集うのは、神聖旭日連邦帝国の最高指導層。
国防大臣、宇宙軍総司令部総司令官、宇宙軍連合艦隊司令長官、帝国情報庁長官、エイン外務大臣、そして各閣僚達。全員の視線が、アリス総理とエイン外務大臣に集中する。エイン外務大臣が姿勢を正し、落ち着いた声で補足する。「ナタアワタ共和国は、中立を装いながらガフラヤサタ連邦と裏取引を行ってきたわ。ノクティア・オルドが確保したデータチップは、その証拠の一部を示している。だが、エクレール大統領は調査団を『受け入れる』と表明した。これは、さらなる隠蔽の策略と見るべきです。」国防大臣が重い声で応じる。
「エイン外務大臣の言う通り、ナタアワタの『綺麗すぎる』情報統制は異常だ。調査団が送り込まれても、証拠を隠滅される可能性が高い。」帝国情報庁長官が頷き、端末を操作して新たなデータを投影する。「我々の諜報員が、ナタアワタ共和国の都市でシュヴァルツ・シュトラークの活動を確認しました。エルネスタ・タワーの爆破も、彼らの仕業だ。調査団が到着する前に、さらなる『事故』を仕掛ける可能性がある。」アリスが目を細め、静かに言う。「ならば、調査団を私達の手でコントロールするわ。ナタアワタ共和国の仮面を剥がし、ガフラヤサタ連邦の闇を暴く。それが今回の会議の目的よ。」円卓の空気が一層張り詰める。
宇宙軍総司令部総司令官が口を開く。「総理、調査団の編成には、どの程度介入しますか?銀河連邦は中立性を重視します。過度な干渉は、神聖旭日連邦帝国の信頼を損なうリスクが…」エインが冷静に答える。「中立性は、ナタアワタ共和国が盾にしている幻想です。私達が送り込むのは、神聖旭日連邦帝国の諜報員と外交官。表向きはただの代表団として、だが裏ではナタアワタ共和国の情報統制を突破する。ノクティア・オルドが現地で別動で動いている以上、連携は可能です。」国防大臣が懸念を口にする。「しかし、ノクティア・オルドはすでにシュヴァルツ・シュトラークに狙われています。前回の証拠破壊も、彼らの手によるものでした。調査団が現地に到着すれば、さらなる攻撃の危険が…」アリス総理が手を上げ、議論を制する。
「その危険を承知で動くわ。ノクティア・オルドには、白紙委任状を与えている。ヴァレリア上級指揮官なら、必ず結果を出すはずよ。」エイン外務大臣が補足する。「調査団の編成は、神聖旭日連邦帝国から3名、ゼンメホ帝国から2名、ブレクティア同盟から2名、エリュシオン連合から1名を提案します。神聖旭日連邦帝国の諜報員は、帝国先端科学査察局(ARIA)と宇宙軍遠征隊から選抜します。表向きは技術顧問と記録官として潜入させ、ナタアワタ共和国の軍事倉庫と通信網を調査させる。」帝国情報庁長官が頷く。「ARIAのエージェントは、ガフラヤサタ連邦の暗黒物質技術の痕跡を追えます。宇宙軍遠征隊は、調査団の護衛を担い、シュヴァルツ・シュトラークの動向を監視。しかし、ナタアワタ共和国のエクレール大統領とブライス補佐官は、調査団を誘導する可能性が高いです。彼女たちの策略をどう封じますか?」エイン外務大臣の瞳が光る。「エクレールは、元老院で中立を装った。だけど、彼女の『魔性の女』としての本性は、裏取引を隠すための演技よ。私は銀河連邦元老院で彼女と直接対峙した。その心理戦を、調査団でも続けるわ。」アリス総理が微笑む。「エイン、貴女ならできる。だが、エクレールの策略は、単なる外交戦では終わらないわ。シュヴァルツ・シュトラークの『10万人』の警告を忘れないで。」会議が進む中、閣僚たちの議論は白熱する。
宇宙軍総司令部総司令官が提案した。「調査団の護衛には、宇宙軍遠征隊の精鋭部隊を派遣すべきです。ノクティア・オルドが諜報に専念する中、遠征隊の30名で調査団の安全を確保するのです。輝刃型三式光子剣とオーロラ-9突撃銃で武装し、惑星降下の訓練を活かします。」エイン外務大臣が頷く。「遠征隊なら、軍事介入の印象を強く与えず、シュヴァルツ・シュトラークに対抗できる筈です。表向きは調査団の警護員として潜入させ、ナタアワタ共和国の軍事倉庫や通信網を監視させる事も可能です。」国防大臣が続ける。「ノクティア・オルドは12名で現地に潜伏中です。遠征隊の30名と連携すれば、計42名で調査を強化できます。しかし、シュヴァルツの暗殺部隊が動けば、戦闘は避けられないです。」アリス総理が答える。「その時の戦闘は、遠征隊とノクティア・オルドに委ねましょう。ヴァレリア上級指揮官は、ヴァイスとルゥナの無念、エルネスタ・タワーの3万人の犠牲を背負っている。彼女たちの正義を信じるわ。」
帝国情報庁長官が端末を操作し、データを投影した。「ナタアワタ共和国の資源ルートが資金源と推測される。調査団がこれを暴けば、ガフラヤサタ連邦は完全に孤立する。」エイン外務大臣が言う。「調査団の公開調査は、ナタアワタ共和国の都市インフラ、軍事倉庫、通信網を対象に。しかし、裏ではノクティア・オルドがエクレールとブライスの動向を追います。ブライスの通信ログに何かしらの痕跡があるはず。」アリスが頷く。「その通り。調査団の目的は、ナタアワタ共和国の仮面を剥がし、ガフラヤサタ連邦の闇を暴くこと。エイン、貴女に調査団の交渉全権を委任する。」エイン外務大臣が一礼する。「謹んでお受けします。総理の信頼に応え、必ず真実を暴きます。」会議の終盤、エイン外務大臣が提案を重ねる。「調査団の公開報告を、銀河全域に中継しましょう。ナタアワタ共和国の民衆に、真実を直接届ける。これでエクレールの統制を崩せます。」アリス総理が目を輝かせる。「素晴らしい。エイン、貴女なら民衆の心を動かせる。ナタアワタ共和国の『綺麗すぎる』統制を、粉々にしなさい。」宇宙軍連合艦隊司令長官が言う。
「遠征隊の装備を強化すべきです。暗黒物質シールドに対抗するため、光子力テレポート装置を支給します。瞬時に移動し、シュヴァルツの奇襲を防げます。」エイン外務大臣が頷く。「光子力テレポートは、エターナルナイトの技術由来。ARIAが調整済みなら、即配備可能の筈です。ノクティア・オルドと遠征隊の連携で、完璧です。」帝国情報庁長官が最後に言う。「ノクティア・オルドからの最新報告では、ブライスの通信ログに次の取引の日時が含まれていました。調査団到着と同時のタイミングです。エクレールの策略を、必ず封じます。」アリスが締める。「ならば、全てを準備しなさい。天の川銀河の審判は、私達の手で下す。諸君、神聖旭日連邦帝国の正義を、天の川銀河に示す時よ。」
会議後、アリス総理とエイン外務大臣は執務室に二人きりで残る。窓の外、地球の夜景が瞬いている。エイン外務大臣が静かに言う。「総理……この戦いは、天の川銀河の未来を変える。だが、シュヴァルツの刃、エクレールの策略、危険はあまりに大きい。」アリス総理がエイン外務大臣の手を握る。「貴女がいるから、私は怖くない。貴女は私の……大切な人よ。」エイン外務大臣の頬が紅潮し、微笑む。「総理……私も、貴女のために戦う。どんな闇も、共に乗り越えるわ。」二人の視線が交錯する。天の川銀河の戦乱は、なお続く。だが、彼女たちの絆は、どんな試練にも折れない剣だった。ナタアワタ共和国の闇は深い。エクレールの策略、シュヴァルツの刃、ガフラヤサタ連邦の野望が、正義を試す。だが、アリス総理とエイン外務大臣の決意、ノクティア・オルドと遠征隊の覚悟は、銀河の希望として輝く。調査団派遣は、星々の審判を下す第一歩だ。天の川銀河は、戦乱の渦へ突き進む。その中心で、神聖旭日連邦帝国の剣は、闇を裂く光となるだろう。