星海の誇り、剣を掲げ
ナタアワタ共和国首都星系の銀河連邦元老院で、ガフラヤサタ連邦への追加制裁とナタアワタへの調査団再派遣が賛成多数で可決された数時間後。天の川銀河の辺境、ケタサカ王国宙域では、星々の光を切り裂く戦火が上がっていた。ケタサカ王国首都惑星の第二防衛線。かつてガフラヤサタ連邦の超弩級戦艦ベルグドルファ級に決壊させられた宙域は、今、新たな希望の戦場と化していた。神聖旭日連邦帝国から譲渡された艦艇、ノクティルカ級宇宙巡洋艦18隻、クレイヴァル級宇宙駆逐艦24隻、セラフィム級宇宙フリゲート艦40隻、そして予備艦隊の旧型宇宙巡洋艦18隻、旧型宇宙駆逐艦43隻、旧型宇宙フリゲート艦74隻、合計197隻で構成されるケタサカ王国宇宙軍が、ガフラヤサタ連邦の連邦宇宙軍と対峙していた。
敵は、艦隊主力宇宙戦艦グロムマルグリット級を中核とする50隻の編成。陽子加速砲の赤い光が、星海を切り裂く。ケタサカ王国宇宙軍の旗艦、ノクティルカ級巡洋艦『エルシア・プライド』の艦橋。司令官カイル・ヴェラノス中将は、戦術ホログラフを見つめながら、低く指示を出す。灰色の髪と鋭い眼差しは、歴戦の指揮官の風格を漂わせていた。「全艦、陣形を維持!敵の陽子加速砲に正面から突っ込むな!」
副官が叫ぶ。「中将、敵のグロムマルグリット級、12隻が前方に展開!ミサイルが接近中!」カイルは歯を食いしばる。「セラフィム級、迎撃陣形!光子力防壁を最大展開!」セラフィム級フリゲート艦40隻が前衛に進み、光子力防壁を展開した。ガフラヤサタ連邦の連邦宇宙軍放ったミサイルが火花を散らし、防壁に弾かれるが、その衝撃で艦隊の陣形が揺らぐ。ケタサカ王国宇宙軍の乗員は、神聖旭日連邦帝国から派遣された軍事顧問団の訓練を受けた新兵が大半。艦の操作も、戦術の連携も、未熟さが露呈していた。「くそっ……敵の火力は、予想以上だ!」通信士が叫ぶ。「旧型巡洋艦『ルミエール』、被弾!機関部損傷!」カイルは拳を握る。「ルミエールを後退させろ!クレイヴァル級、側面から敵を撹乱!」クレイヴァル級駆逐艦24隻が高速で機動、ガフラヤサタのグロムマルグリット級の側面を狙う。
だが、敵の40センチ陽子加速砲が唸り、クレイヴァル級ステラが直撃を受けて爆散する。艦橋の乗員たちが悲鳴を上げる中、カイルは冷静さを保つ。「慌てるな!神聖旭日連邦帝国軍事顧問団の戦術を思い出せ!敵の火力を分散させろ!」ケタサカの新兵たちは、神聖旭日連邦帝国の訓練で学んだ戦術を必死に実行する。
ノクティルカ級が光子力砲を放ち、グロムマルグリット級の装甲を削るが、練度不足で照準が定まらない。旧型フリゲート艦が援護射撃を試みるも、ガフラヤサタのVLSから発射されたミサイルが次々と命中する。艦隊の3分の1が損傷し、陣形が崩れかける。「中将、このままでは……!」副官の声に、カイルは目を細める。「まだだ。民の誇りを守るため、諦めるな!」
ケタサカ王国首都惑星、王宮の玉座の間。女王エルシアは、ホログラフスクリーンで戦況を見守っていた。白銀のドレスに身を包む彼女の瞳は、決意に満ちている。側近が報告を上げる。「陛下、カイル・ヴェラノス中将が第二防衛線で戦闘中。練度不足で劣勢です。」エルシアは静かに頷く。「我々の誇りは、経済と平和で築かれた。だが、今は力で守らねばならない。カイル中将を信じなさい。」側近が心配げに言う。「しかし、陛下……ガフラヤサタのグロムマルグリット級は、火力と数で圧倒的です。」エルシアの瞳が光る。「ならば、民の意志で支えるわ。国民に放送を繋ぎなさい。」王宮の通信網が起動し、エルシアの声が惑星全土に響く。
「ケタサカの民よ!我々の誇りは、力なき幻想ではない。今、王国宇宙軍が命を賭して戦っている。彼らの剣を、民の意志で支えよう!」民衆の歓声が王宮に響き、艦隊の士気を高める。エルシアはスクリーンを見つめ、静かに呟く。「カイル……民の未来を、託したわ。」エルシア・プライドの艦橋。カイル・ヴェラノス中将は、通信で届いたエルシアの演説を聞き、目を細める。「陛下……ありがとう。」彼は全艦に号令をかける。「全艦、突撃準備!ノクティルカ級、光子力砲を最大出力!敵の陣形を突き崩せ!」ノクティルカ級18隻が一斉に前進、光子力砲が青白い光を放つ。グロムマルグリット級の陽子加速砲が応戦し、星海に光の嵐が広がる。
だが、ケタサカの練度不足が響き、旧型フリゲート艦が次々と被弾。カイルは歯を食いしばる。「このままでは……!」その時、通信士が叫ぶ。「中将!セラフィム級『オーロラ』の艦長から提案!敵のVLSをハッキングで無力化し、側面から一気に叩く!」カイルは即座に決断。「許可する!全艦、オーロラを援護!」セラフィム級「オーロラ」の艦長、若き女性士官レナータが戦術AIを操作。帝国顧問団から提供された量子暗号技術で、ガフラヤサタ連邦の連邦宇宙軍艦艇のVLSでミサイルを誘爆させた。ミサイルの誤爆に、グロムマルグリット級の陣形が乱れる。
「今だ!全艦、集中砲火!」ノクティルカ級の光子力砲が一斉に火を噴き、グロムマルグリット級3隻が爆散した。クレイヴァル級が高速で突撃し、敵の側面を崩す。旧型艦も援護射撃に加わり、ガフラヤサタ連邦の艦隊は後退を始める。だが、カイルは息を呑む。遠くに、超弩級戦艦ベルグドルファ級の巨大な影が迫っていた。「まだ終わらん……撤退準備!」ケタサカ宇宙軍は辛うじて勝利を掴むが、艦艇の3分の1が損傷。カイルは艦橋で息をつき、「陛下の誇りを、守れた……」と呟く。
王宮の玉座の間。勝利の報が届き、エルシアは静かに微笑む。顧問が報告。「陛下、カイル中将の指揮で辛勝しました。だが、ベルグドルファ級が接近中です。」エルシアは頷く。「我々の戦いは始まったばかり。神聖旭日連邦帝国に感謝を伝えなさい。そして、次の戦いに備えなさい。」彼女の瞳には、ケタサカの誇りと未来への決意が宿っていた。民衆の歓声が響く中、宙域の戦火はまだ消えていなかった。
ガフラヤサタ連邦首都惑星、統合政府議長官邸。統合政府議長ゲルマヴァルドは、ケタサカの勝利の報に机を叩く。「あの小国が……!」通信端末に、シュヴァルツ・シュトラークの隊長ネーベル・ファウストが映る。「議長、ケタサカは帝国の艦艇で抵抗しています。だが、ベルグドルファ級で叩き潰せます。」ゲルマヴァルドの目が光る。「プロジェクト・ラガッシュを加速しろ。ケタサカの民を『再構成』する前に、力で屈服させる。」闇の中で、ガフラヤサタの野望が蠢く。ケタサカの宙域は、戦火に染まる。だが、カイル・ヴェラノス中将の指揮とエルシアの意志が、民の誇りを守った。神聖旭日連邦帝国の支援が、ケタサカに希望の剣を与えた。銀河の戦乱は、さらなる激動へと突き進む。