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新世紀宇宙戦争  作者: 007
第3章 陰謀
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秘めたる決意

ヴァレリア・セラフィム上級指揮官は、総理直轄特命部隊としての初任務のため、衛兵に導かれ無言で執務室へと向かう。扉が開かれると、そこにはアリス総理とエイン外務大臣が待ち構えていた。


「ようこそ、ヴァレリア上級指揮官」


アリス総理は穏やかな声で迎えたが、その目にはいつもの柔らかさはなかった。


「本日、あなた方ノクティア・オルドに総理直轄特命部隊としての初任務が下されます」


ヴァレリアは一歩前に出て敬礼する。


「ご期待に沿えるよう尽力いたします」


その時、アリス総理の表情に陰りが走った。


「……実は、ある報せが届いたの」


その横でエイン外務大臣が口を開く。


「ヴァレリア、ナタアワタ共和国での諜報任務には、あなたの同期……ヴァイスとルゥナが関わっていたわよね?」


ヴァレリアは小さく頷いた。


「ええ、彼女たちは……」


アリス総理が視線を落としながら告げた。


「そのヴァイスとルゥナが、今朝未明……任務中に死亡したの」


言葉が空気を凍らせた。ヴァレリアは目を見開き、何も言わず立ち上がり、窓際へと向かった。執務室の照明が、静かに彼女の横顔を照らしていた。アリスとエインは沈黙のまま、その背中を見つめる。数分が過ぎた後、ヴァレリアは再び席に戻った。


「……彼女たちの任務を、私が引き継ぐのですね?」「その通りよ」とアリス総理。


エインが、穏やかだが心配そうな声で語る。


「辛いなら、他の部隊に任せてもいいわよ。無理をしなくていい」


だがヴァレリアは、まっすぐに彼女を見据えた。


「お気遣い感謝します、外務大臣閣下。でも私は、私情を職務に挟みません」


アリスとエインは、顔を見合わせ、深く頷いた。


「では……ノクティア・オルドに出撃を命じます」


ヴァレリアは立ち上がり、姿勢を正して敬礼した。


「必ず任務を完遂いたします」


アリスとエインも立ち上がり、「健闘を祈るわ」と言葉を送った。

執務室の扉に手をかけたその時、アリス総理が再び声をかけた。


「ヴァレリア」


振り返るヴァレリアに、アリスは一枚の文書ファイルを差し出した。


「これは白紙委任状。今回の作戦において、あなたには完全な自由裁量を与えます」


驚きの表情を浮かべるヴァレリア。


「宇宙軍総司令部、国防大臣、そして私の名で発効されているわ。全てあなたの判断に委ねる。結果については、私が全責任を負う」


隣にいたエイン外務大臣も、静かに頷いた。


「遠慮なく暴れてきなさい」


その瞬間、ヴァレリアの凛とした顔に、初めて小さな笑みが浮かんだ。


「光栄です、閣下」


扉が閉じた後も、アリス総理とエイン外務大臣は、その余韻にしばし身を浸した。ヴァイスとルゥナの無念を継ぐ者。


新たな戦いが、静かに動き出していた。

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