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新世紀宇宙戦争  作者: 007
第2章 秘密
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玉座の決断

首都地下を走る極秘移動ルートを通じて、ヴァレリアとノクティア・オルドの精鋭たちは、拘束したカレヴォス国政院筆頭代理を連行し、ゼンメホ皇宮の中枢へと進んでいた。光のない廊下を静かに進む黒衣の影。護衛も儀礼もなく、ただ一点、カレヴォスを女帝のもとへ届けることが任務であった。


玉座の間。

女帝アナスタシアは厳粛な面持ちで玉座に座していた。群青色の皇衣を纏い、銀糸で織られた王冠のようなティアラが、彼女の威厳と美貌をさらに引き立てていた。ヴァレリアは沈黙のまま、カレヴォスを玉座の前に引き据える。カレヴォスは拘束されながらも、女帝を見据え、唾を吐くように言い放った。


「貴様のような甘い女に、国家の舵など握れるか……!所詮は血筋だけの操り人形だ!」


即座にヴァレリアが反応した。彼女の腰から一閃、カガヤキ型三式光子剣が引き抜かれ、その刃は青白い光を放ちながら、カレヴォスの首元にピタリと寄せられる。


「それ以上喋れば、舌ごと落ちることになる。」


静かでありながら、鋭い威圧感を持った声が玉座の間に響く。アナスタシアは立ち上がり、玉座からゆっくりと降りた。


「カレヴォス。あなたは国政を預かる立場にありながら、自己の野心のために国を売り、我が同盟国を裏切ろうとした。あなたの決断は、誤っていた。」


それでもなおカレヴォスは嘲るように笑い、最後の悪態をついた。


「この国は貴様には向いていない。すぐにまた、別の誰かが立ち上がる……」


その瞬間、ヴァレリアの手刀がカレヴォスの首筋を打ち抜き、彼は気絶した。



そして、翌朝。

ゼンメホ帝国の中央議会。女帝専用の壇上に立つアナスタシア女帝の姿が、議場に集う数百人の議員の視線を集めていた。場内は重苦しい沈黙に包まれ、女帝の第一声を待っていた。アナスタシアは深呼吸の後、強い意志を宿した眼差しで演説を始めた。


「諸君。我がゼンメホ帝国は、かつてない危機に晒されていた。」


議場内に、ざわめきが走る。


「国政院筆頭代理であったカレヴォス・ザカリエルは、自らの権力維持のため、神聖旭日連邦帝国との同盟を破棄せんと画策し、その過程において政府機構を歪め、独裁体制を築こうとしていた。その実態は、軍事力を用いずとも、すでに『クーデター』であった。」


議員たちは沈黙のまま聞き入っている。誰もが心当たりがあり、誰もが目を背けていた事実だった。


「だが、我が盟友、神聖旭日連邦帝国アリス総理は、カレヴォスの動きを察知し、密かに『カウンタークーデター』を遂行すべく、精鋭部隊ノクティア・オルドを我が帝国に派遣してくださった。」


アナスタシアが手を振ると、壇上脇から黒衣の女性兵たちが現れた。その中心には、凛然とした表情のヴァレリア上級指揮官の姿があった。


「この者たちは、我が帝国を混乱から救い、陰謀を断ち切ってくれた英雄たちである。そしてこの手により、カレヴォス・ザカリエルを確保した。」


その言葉に合わせて、カレヴォスが囚人衣姿で引き出され、議場中央の特設檻に座らされた。


「あの者は、国家反逆罪により裁かれる。だがそれだけでは、我が国の再生は叶わぬ。」


アナスタシアは一拍置き、静かに宣言する。


「よって私は、この議会に対し、我がゼンメホ帝国の統治体制を見直し、立憲君主制を廃し、『直接帝政』への移行を提議する。」


場内に一斉に驚きの声が上がる。だがそれを静めるようにアナスタシアは続けた。


「この国の未来は、民意だけではなく、決断力ある統治によってこそ守られる。私は、この玉座に命を懸けて誓う。我がゼンメホ帝国を、再び混乱に沈ませることはない。」


議場は静寂の後、拍手の奔流に包まれた。ひとり、またひとりと議員たちが立ち上がり、女帝に向けて賛意を示す。その拍手の中で、ヴァレリアは無言のまま、アナスタシアに敬礼した。


ノクティア・オルドの任務は、終わった。かくしてゼンメホ帝国の内乱は終結し、神聖旭日連邦帝国の最も重要な同盟国は、再び揺るがぬ絆を取り戻したのであった。

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