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新世紀宇宙戦争  作者: 007
第2章 秘密
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銀河に轟く巨影

帝国歴1500年2月16日。天の川銀河の各星系通信網に緊急報が走った。ケタサカ王国宙域において、ガフラヤサタ連邦が突如として攻勢を再開。外交戦で神聖旭日連邦帝国に敗北し、意気消沈したかに見えたガフラヤサタ連邦だったが、その矛先は再び実力行使へと転じた。しかも今回は、初動より遥かに苛烈で大規模だった。

侵攻対象となったのは、ケタサカ王国の広大な領域のうち、外縁星域と中間宙域の要衝に張り巡らされた「第二防衛線」。ケタサカ王国軍が長年にわたり築き上げてきたこの戦略陣地は、外宇宙への盾とも言える存在だったが、ガフラヤサタ連邦の攻撃はその想定を遥かに上回っていた。ガフラヤサタ連邦の連邦宇宙軍が投入したのは、従来の侵攻戦力に加え、新たに編成された独立強襲艦隊。そしてその先頭には、銀河の軍事関係者を震撼させるべき、巨大戦艦の姿があった。


「前方宙域にて質量反応! 推定全長、1200メートル!」

「……なに?」


出現したその艦影は、これまでいかなる偵察記録にも存在しなかった。その艦は、神聖旭日連邦帝国宇宙軍連合艦隊の象徴たる超弩級宇宙戦艦大和級をも凌ぐ巨艦であり、なおかつ構造的にはより攻撃特化されていた。

一切の事前露出がなかったその艦は、ガフラヤサタ連邦が外交敗北を想定し、水面下で建造していた『秘中の秘』である『超弩級宇宙戦艦ベルグドルファ級』だった。

そしてその巨影は、戦局を塗り替える現実を伴っていた。わずか三時間の戦闘で、第二防衛線は決壊。ケタサカ王国の各要塞衛星が破壊され、周囲の迎撃艦隊も壊滅。ガフラヤサ連邦は次々と艦艇を送り込み、ケタサカ王国宙域の重要資源帯まで制圧を開始する。今やガフラヤサタ連邦は、『秘密の保持』すら軍事行動の一環に転化し、外交敗北の汚名を正面から力でねじ伏せようとしていた。その凄絶な破壊の背後には、怒りと焦りがあった。


ガフラヤサタ連邦統合政府議長ゲルマヴァルド。彼が痛烈な敗北を味わったのは、外交の場であった。あの銀河連邦調査団の場で、特任筆頭外交官として現れた神聖旭日連邦帝国のエイン。あの女こそ、自らの策略を潰し、今や外務大臣代理として再び銀河の中心に立った張本人だった。


「……なぜ、あの女が……!?」


連邦最高司令部の執務室で、ゲルマヴァルドは狂気に近い声音で吠えた。未だにそれを口にし、怒り狂う事が続いていた。彼の背後では、ケタサカ王国軍の敗報が立て続けに報告されていた。

だがそれは、あくまで一時的勝利でしかなかった。神聖旭日連邦帝国が動くのは、これからだ。






そして、神聖旭日連邦帝国。

首相官邸の大円卓会議室において、状況報告を受けるアリス総理の表情に、わずかな翳りが差していた。その傍らに立つのは、外務大臣代理となったエイン。その視線には、敵国の暴挙に対する怒りよりも、静かな冷徹が宿っている。


「いよいよ動き出したわね……ベルグドルファ級」

「……想定通りです。むしろ、この展開を誘導したと言ってもいいでしょう」


エインは淡々と告げる。


「神聖旭日連邦帝国の戦略目標は、もはや一地域の紛争解決ではなくなりました。ガフラヤサタ連邦の排除こそが、天の川銀河の安定に不可欠だと、天の川銀河全域が認識する必要がある。……そのための材料は、揃いつつあります」


アリス総理はその横顔を静かに見つめた。外交官としての冷徹な判断力。そしてその裏に垣間見える、決して揺るがぬ意志。一人の女性として、国家の命運を背負い、銀河に立つ者の姿がそこにはあった。


「では、あとは答えを用意するだけね」

「……はい。次は、我が国の番です」


薄暗い室内に、静かに響いた声は、やがて銀河の遥か彼方へ届く怒濤の反撃となる。歴史が動く音が、確かにそこにあった。


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