外交的逆襲
最高政策評議会が終結して間もなく、外務大臣代理になったエインは、即座に外務省に向かった。彼女の肩には、単なる外交職以上の責任と権限が課せられている。アリス総理は明確に宣言した。『全権を委任する』と。だからこそ、エインはその信頼に応えるべく、一切の迷いを捨てて動き出していた。
課題は明白だった。
ガフラヤサタ連邦による非難声明の連続と、その背後にある不透明な動き。神聖旭日連邦帝国が今、天の川銀河全体の視線の中心にあることを、エインは誰よりも自覚していた。どうするか。冷静かつ果断な判断が求められていた。議論を重ね、帝国情報庁からの分析も加味し、軍や諜報部門との連携も視野に入れつつ、エインは一つの方針に辿り着いた。
『外交的逆襲』それが彼女の選んだ道であった。非難を受け流すのではなく、あえて正面から応じ、むしろ神聖旭日連邦帝国の正義と透明性、そして平和的姿勢を全面に押し出す戦略だった。その中心には、ガフラヤサタ連邦が主張する『諜報活動への非難』があった。エインはそれを巧みに利用することにした。まず、銀河連邦元老院への即時通報が行われた。内容は簡潔かつ明確だった。『神聖旭日連邦帝国は、あらゆる国際規範に則った外交・安全保障政策を展開しており、いかなる違法行為も存在しない』と。更にはこれを証明するため、神聖旭日連邦帝国は自らの諜報活動のうち、合法的かつ必要最低限であった部分について、限定的に情報開示を行うと通達した。これは、各国に衝撃を与える動きだった。天の川銀河の歴史において、情報機関の行動を自ら語るなど、異例を通り越して前代未聞。だがそれを可能にしたのは、神聖旭日連邦帝国という超大国の信頼と、エインの大胆さであった。同時に、神聖旭日連邦帝国が長年支援してきた複数の星間中小国やゼンメホ帝国の首脳にも、エインは外交電を発した。「神聖旭日連邦帝国は揺るがない。今こそ、共に真実を見極めよう」と。その一文には、力だけではない誠実さが込められていた。
こうして神聖旭日連邦帝国帝国の大使館は一斉に動き始めた。銀河連邦本部では、神聖旭日連邦帝国大使が即時に記者会見を開き、エイン外務大臣代理の声明を読み上げた。
「……神聖旭日連邦帝国は、自由と安定、そして正義を重んじる国家として、いかなる虚偽の攻撃にも屈することはありません。必要ならば、我々は証明しましょう。我々が正しいことを。」
天の川銀河に向けて放たれたその言葉は、やがて静かに、だが確実に波紋を広げていく。敵意に満ちた非難に対し、神聖旭日連邦帝国は力ではなく理で返した。だがその理の背後には、確かに燃える意志がある。銀河全域が注視する中、アリスとエインという二人の若き指導者が並び立ち、反撃の幕は静かに上がったのだった。