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新世紀宇宙戦争  作者: 007
第1章 ジレンマ
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銀河連邦3

ナタアワタ共和国の首都星系に浮かぶ銀河連邦本部。その中心に設けられた元老院本会議場において、緊急会議が幕を開けようとしていた。議題はガフラヤサタ連邦によるケタサカ王国への軍事的圧迫に対する、銀河連邦としての制裁措置の是非である。厳粛な鐘が三度鳴らされ、議長が登壇する。会場に集うのは天の川銀河星間国家の代表たち。整然と並ぶ円形の議席の中央で、静かに制裁案提出国のブレクティア同盟大使が立ち上がった。

「諸君、我々はいま、銀河憲章の理念そのものが問われている局面にある。ガフラヤサタ連邦によるケタサカ王国への武力行使は、紛れもなく一方的な侵略であり、我々がこれを黙認すれば、銀河全域において力こそ正義の前例を許すこととなる。我がブレクティア同盟は、即時の経済制裁と外交的孤立措置を提案する」

拍手とざわめきが交錯する中、対抗する勢力であるガフラヤサタ連邦大使がゆっくりと起立した。冷淡な笑みを浮かべ、声を低く、だが会場全体に届くよう通る声で語る。

「ケタサカ王国は我が連邦との旧来の協定を反故にし、我々の経済圏から一方的に離脱を進めた。これは明白な敵対行為である。防衛的措置としての配備強化を、侵略と断じるのは過剰反応というほかない。いかなる制裁にも我々は断固たる報復措置で応えるであろう」

その言葉に、一部の辺境国家がどよめく。銀河東辺においてガフラヤサタ連邦が持つ軍事力の重さを、誰よりも知っているからだ。そして、静かに神聖旭日連邦帝国の大使が立ち上がる。漆黒の正装に銀の装飾をまとい、威厳に満ちた立ち姿は、自然と場の空気を一変させた。

「皆さん、我が神聖旭日連邦帝国は、力による現状変更を断じて認めない。ケタサカ王国への軍事圧力には深い懸念を抱いている。しかしながら、いま即座に制裁を発動すれば、事態は交渉の余地を残すことなく激化する恐れがある。我々は銀河連邦の秩序を守るためにも、まず外交交渉の道を模索すべきと考える」

一瞬の沈黙ののち、ゼンメホ帝国大使が続けるように立ち上がった。彼は銀河中域の老練な調停者として知られ、その発言には常に重みがあった。

「我がゼンメホ帝国も、神聖旭日連邦帝国の立場を支持する。非難は必要だ。しかし、制裁は最後の手段であるべきだ。ケタサカ王国に対する実質的支援と同時に、我々はガフラヤサタ連邦との対話を断ってはならぬ。いま重要なのは、火種に油を注ぐことではなく、水を注ぐことである」

議場の空気が揺らぐ。急進派諸国は、即時制裁を唱えて声を荒げるが、神聖旭日連邦帝国とゼンメホ帝国による『外交優先』という立場に、複数の中立国家が頷きを見せた。その裏では既に、水面下での根回しが進んでいた。神聖旭日連邦帝国は、経済支援と安全保障協力を材料に、中小国家の支持を取り付けつつあり、ゼンメホ帝国は長年築いてきた調停者としての信頼で、議決に対する慎重論を拡大していた。

最終的に、議長はこう宣言する。

「制裁案は継続審議とする。本件に関し、調査団の派遣と交渉の場の設置を決議する」

神聖旭日連邦帝国大使は静かに座しながら、薄く息を吐いた。制裁発動は退けた。だが、それは単なる外交的勝利ではない。神聖旭日連邦帝国は水面下で、ケタサカ王国への極秘支援と、宇宙軍連合艦隊の再編成を進めていた。そしてゼンメホ帝国もまた、軍の一部を密かにケタサカ側宙域へと移動させていた。


戦争と外交のはざまで、銀河は静かに軋みを上げていた。


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