第18話 血牙の熊狩り
ポーション作りが成功してから丸一週間が経ち、その間にエーリッヒ兄さんはすっかりその技に熱中していた。彼は次から次へとポーションを作り、常に新しい組み合わせを試し、技術を磨いていた。彼が錬金術に打ち込んでいる間、私は戦闘訓練に集中した。
その朝、私は新しい鉄の剣を腰に巻いて森へ向かった。私はその剣をシュトゥルムベルクの熟練した鍛冶屋から買ったのだが、それは私たちが育った哀れな村で見たことのないものよりはるかに優れていた。そこのいわゆる鍛冶屋は、本物の武器どころか、ちゃんとした包丁の作り方さえほとんど知らなかった。
私はその刃を鞘から抜いた瞬間、違いが分かった。それは完璧なバランスで、刃先は剃刀のように鋭く研がれていた。私はこの剣で、実戦で自分の限界を試すために、さらに自分を追い込むつもりだった。
しかし、私はブラッドファングベアに遭遇するとは思っていなかった。
深い、喉から出るうなり声が木々の間を響き渡り、私が頭を回すとちょうどその獣が見えた。高さは3メートル近くもある巨大な獣で、皮膚は鮮血の色をしており、悪夢のような怪物のように二本足で立っていた。長くギザギザの牙からは唾液が滴り、赤く光る目が私を見つめていた。
獣は耳をつんざくような咆哮をあげ、前方に突進し、その巨大な爪が恐ろしい速さで私に向かって切りつけてきた。
しかし、それが私に届く前に
半透明の金色の光の障壁が私の周囲に弾けた。
ブラッドファング・ベアの爪が盾に当たり、空中に衝撃波が走ったが、その衝撃は無駄だった。私の球状のシールド呪文がその打撃を完全に吸収した。
私は息を吐き、一度に複数の呪文を唱えながら自分の心拍が安定するのを感じた。
「ブースト」。私の手足に力がみなぎり、私の筋肉が引き締まり、私の強さ、敏捷性、反射神経が高まった。
「集中」。最後のためらいの痕跡は消えた。私の心は晴れ、獣の動きに対する私の認識は研ぎ澄まされた。
「鉄壁」。私の剣は魔法で脈動し、その鉄の表面はこれからの戦いに耐えられるように強化された。
一度に4つの呪文を維持するのは大変だったが、私には他に選択肢がなかった。私が盾を放った瞬間、戦いは本格的に始まる。
私は深呼吸してバリアを解いた。
熊は時間を無駄にしなかった。熊はまたもや大地を揺るがすような咆哮を上げ、巨大な爪を凶暴な弧を描いて振り回しながら、まっすぐ私に突進してきた。
我は動いた。鋭いサイドステップ、死から一息のところ。
爪は我がいたばかりの土に食い込んだが、我はすでに位置を変えていた。ブラッドファング・ベアは苛立ちに唸り声をあげ、巨大な体をよじって再び攻撃を仕掛けたが、我はすでに動き出していた。
かわす、踏み出す、旋回する、移動する
攻撃はどれもその怪物の体全体の重量で繰り出されたが、我は1つたりとも攻撃を許さなかった。我は強化されたスピードだけに頼っていたのではなく、我の動きを読み、1秒ごとに攻撃パターンを学んでいた。
左にスワイプ、右に爪を立てる、前方に突進、繰り返す
永遠のように感じられた時間、我は攻撃の間を縫うように動き、あらゆる動きで死をかろうじて避けた。しかし、我はただ無目的に避けていたのではなく、私は隙を待っていた。
そして、我はそれを見た。
獣は再び後ろに下がって叩きつけ、首が完全に露出した。
さあ。
私は前に飛び出し、一瞬で距離を詰めた。魔法で強化された私の剣は、私が高く掲げると太陽の下で輝いた。
流れるような動きで、私は振り回した。
刃は稲妻のように空気を切り裂き、肉、筋肉、骨をきれいに切り裂いた。
ブラッドファングベアの頭が胴体から外れ、土の上を転がると同時に、森に重々しい音が響き渡った。その巨大な体は一瞬凍りつき、その後、雷鳴のような音とともに倒れた。
沈黙。
私は鋭く息を吐き、剣を下ろし、目の前の光景を眺めた。獣の死体の周りには血が溜まり、かつては恐ろしかったその目は今や鈍く生気を失っていた。
それは死んでいた。
そして私はまだ立っていた。
戦いの後の静寂は、妙に平和に感じられた。私は巨大な死体の前に立っていた。血はまだ地面に染み込んでおり、空気中には鉄の匂いが濃く漂っていた。かつては輝いていた私の剣は、今や真っ赤に濡れていた。
しかし、立ち止まっている暇はなかった。
私はそれを殺した。今度は私がそれを屠らなければならない。
私は獣の横にしゃがみ込み、鉄の剣の柄をしっかりと握りしめ、息を吐いた。本当の仕事が始まった。
「まず第一に…このものがどれだけの価値があるか見てみましょう。」
ブラッドファングベアは高位のモンスターで、希少で危険で貴重だった。私が適切に扱えば、そのすべての部分を大金で売ることができた。
毛皮：耐久性で知られる深紅色の皮は、貴族の仕立て屋や甲冑師に非常に求められていた。これで作られたマントは、少なくとも金貨15枚の価値があっただろう。もし私が適切な買い手に売れば、もっと売れるかもしれない。
牙: この生き物の長くてギザギザした牙は、武器の製作や高価な装身具として使うことができる。最低でも1本あたり銀貨5枚。
爪: 鋼鉄をも引き裂くほど鋭く、牙と同じくらい価値がある。爪1本あたり銀貨8枚くらいだろうか。
肉: 高品質のモンスターの肉。まともな都市ならステーキ1枚で銀貨1枚で売れるが、私は売るつもりはなかった。これが私の食事になるのだ。
血: 集めるのが最も面倒な材料。錬金術師の中には、魔力の高いモンスターの血にフラスコ1杯あたり金貨20枚も払う者もいる。問題は、私にはそれをきちんと保管する方法がなかったことだ。少なくとも今のところは。
私は舌打ちした。「ちくしょう。私が毎日狩りをしたら、これだけで大儲けできるのに。」
でも文句を言っても何も変わらない。私は持参していた狩猟用ナイフを取り出した。ただの鋼鉄の刃だが、これで十分だった。
解体作業はゆっくりと慎重に行われた。
私は毛皮から始め、熊の腹に沿って長い切り込みを入れた。皮を剥いだ瞬間、血と生肉の悪臭が私を襲った。
「うわあ。こんなに長い間やってきても、この臭いには慣れないと思う。」
私はこれまでもウサギ、シカ、イノシシなど動物を屠殺したことがあったが、これは別次元だった。一度のミスで皮が傷つき、価値が下がってしまう可能性がある。
「安定した手。一度にきれいに切る。」
ゆっくりと、私は脂肪と筋肉の間にナイフを入れ、体から皮を剥ぎ取った。新鮮な切り傷から血が流れ出て、私の手に滴り、私の下の土を汚した。
私が終える頃には、私の腕は血でぬるぬるしていた。
「次は、牙と爪だ。」
私はナイフを使って、頭蓋骨から牙を慎重にこじ開けた。牙は不快な音とともに外れ、その下のギザギザの根元が露わになった。爪はもっと簡単で、数回強く引っ張るだけで、足から飛び出した。
私は貴重な部分を小さな布袋に入れた。「これで約…5ゴールド分になるはずだ。」悪くない。
最後に、私は肉に移った。
私は最初はモンスターの肉を食べるのをためらっていたが、前に食べたウサギを食べた後、私はよく分かった。高ランクのモンスターは通常、普通の動物よりも強くて濃厚な味がする。きちんと調理されていれば、これは私が長い間食べた中で最高の食事になるかもしれない。
私は肩と腿から最高の部位、つまり厚い肉を切り取った。私が作業している間、血はまだ温かく、私の手には血が付いていた。
「きちんと乾かせば数日はもつはずだ」
一番大変だったのは血だ。
ちゃんとした容器がないと、血を集めるのは大変だった。私は大きな葉っぱと木製のフラスコを使ってすくい上げたが、理想的ではなかった。
「これを全部保存できれば、農作物に課せられた税金で父が一生稼ぐお金よりも多くの金で売れるだろう」
イライラした。でも仕方がなかった。
私が作業を終える頃には、太陽はすでに地平線に向かって沈み始めていた。私の腕と服は完全にベタベタして乾いた血でびしょ濡れになり、かつて巨大だった熊は今や皮を剥がされて解体された死骸になっていた。
私は額の汗を拭き、自分の仕事を見つめた。
「この狩りは価値があった」
私は解体した獲物を魔法のマグに収めた後、立ち上がった。その日はまだ終わっていなかった――私はまだ戦利品を持ち帰らなければならなかった。
