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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星の絆

episode1

作者: おこと

赤子の泣き声に気付いた孤児院の「エミリー」という職員が建物から出てきた。

エミリーは門前に捨てられていた毛布に包まれた赤子のナリアとアリアを身元が分からないという理由で孤児院に受け入れた。身元が分からないと言っても毛布に「ナリア」と「アリア」という言葉が書かれていたため、エミリーはこの言葉が名前だと思い、そう双子を呼ぶことにしました。

このノクターナ孤児院は建物は老朽化していたが、経済的には他の孤児院よりもまだ良かったため、孤児たちを受け入れ、子供たちや職員は人間らしい生活が送ることができるはずだった。ナリアとアリアが3歳になり、国から派遣された新しい院長「ヴェクター」が来るまでは。

彼は孤児院のお金を私欲に使い、子供たちを虐待していた。更には職員にまで暴力や恐喝が行われ、今まで平和だった孤児院が地獄のような環境になってしまった。孤児院の職員はヴェクターが来る前は5人だったのに対し、ヴェクターが来てからは続々と辞めてしまい、ナリアとアリアを孤児院に入れたエミリーのみが残っていました。エミリーはナリアとアリアを我が子のように可愛がっていたため、自分はこの子達を守りたいと思っていました。ですが日に日にヴェクターに対する恐怖が大きくなっていき、結局は何も出来ずにただヴェクターの言うことを聞く操り人形になっていました。ですが、子供たちに対する想いは変わっていませんでした。ヴェクターは特に自分が来る前からいる子供に対して強く当たり、顔が良い子供は貴族へ人身売買をしたり、子供に労働をさせたりとしていました。

そのような環境だったので、子供の中でも格差が生まれ、いじめが起こっていました。ヴェクターに気に入られた子供が上に、嫌われた子供は下に……。上の子供は食事は満足とまでは行かないが、それなりには食べることが出来、軽い労働又は労働をしないで済むことが出来るのに対し、下の子供は食事は最低限で、キツイ労働を課せられていました。病気になっても寝かされるだけで、怪我をしても治療されないのです。

姉のナリアはヴェクターに対して生意気な発言をしたため、嫌われてしまっていましたが、妹のアリアは外見がとても可愛く、恐怖によってヴェクターに順従だったため、気に入られていました。ですが、気にいられているといっても、お気に入りの中では最下位のような立ち位置だったため、あまり待遇は良くなかったのです。

そんな中、双子は5歳になっていました。

暗闇に満たされた、冷たい部屋。隙間風はやけに冷たく吹いている。

石の壁にはひびが入っており、床には汚れた藁が敷かれていた。

「アリア……お腹、すいた?」

ナリアは妹を優しく抱いた。

アリアはか細い声で言った

「お姉ちゃん…私は大丈夫だよ。私は…お姉ちゃんよりかはお腹、すいてない。」

嘘だった。二人とも最後に満足に食べたのはいつだったかと思いました。

「お願い……神様、どうか妹だけは……。」

ナリアは窓から見える星に向けて心の中で何度も願いを唱えました。

しかし、その祈りは届くことはありませんでした。


朝日が昇り、やっと光が当たるようになると2人はたった1枚の毛布から起き上がり、動き出しました。

子供は1日に食事が朝と夜の2回しかないため、朝を逃すと、1日をほぼ何も食べずに過ごすことになるため、子供たちは朝早くに起きなければならなかったのです。

「え、今日もこれだけなの。」「空腹が限界だよ…。」

子供の中でもヴェクターに1番気に入られていた「カイン」という力が強く、他の子供を虐めていた子供がナリアに話しかけてきた。

「今日も食べ物寄越せよ。」

ナリアは今までは従っていたがこれまでで初めてカインに対して反発した。

「あげるわけないでしょ!なんで私がアンタになけなしのご飯をあげなくちゃいけないの?アンタがヴェクターにご飯くれっておねだりすればいいじゃない!」

そのようにナリアが言うと、カインはナリアに手を上げた。

ナリアは殴られた箇所を手で抑えて床に倒れ込んだ。

そしてカインはナリアが持っていた食べ物を奪い取ると大きな声で言った。

「お前らも俺に食べ物寄越さないとコイツと同じだからな!」

カインがどこかへ行くとアリアはナリアの元へ駆け寄った。

「お姉ちゃん!!大丈夫??お姉ちゃん!!ごめんね…ごめんね……。」

「アリア…大丈夫……私は、貴方の、お姉ちゃん………だから。ほら…い、てくる…ね?」

そしてナリアは痛みを堪えながら微笑むと立ち上がってゆっくりと今日の労働場所へと歩いていった。

「………お姉ちゃん…。」


しばらくするとヴェクターがアリアの元へやって来て、「今日はお前だぞ。」とアリアを見栄えの良い服に着替えさせ、引っ張るようにして町へ連れていった。町につくと、人気のないお店に2人は入っていった。そこには身なりの良さそうな男達が年代問わずに喋っていた。「お、ヴェクター、今日はどんな子だい??」「お嬢さん可愛いね。俺の子供になる?」

そう、ヴェクターはアリアを他の貴族に気に入られるように紹介し、アリアがもう少し大きくなったら売り飛ばせるようにするという目的のため連れてきたのです。ヴェクターはにやりと笑い、言った。

「そう焦らないで下さいよ、あと数年俺の元で育てればこの子はもっと可愛く!美人になりますよ?」

「そりゃあいい!じゃあ考えとくよ」

アリアはただただこの知らない男達を見て怖がっていた。何も言えずに顔がこわばり、それでも怒られたくない、殴られたくないという一心で必死に笑顔を作っていた。

そんな調子で1時間ほどすると、話は終わったようで店から2人は出た。そしてヴェクターはアリアに言った。「お前よりもっと金を稼げる子供は居るんだからな?アイツらにチヤホヤされたからって調子に乗るなよ」「……は、い。わかって、います。」


2人は孤児院にもどると貴族のような身なりをした女性が孤児院に訪問しており、子供を引き取りたいとエミリーに申し出ている場面に遭遇した。「私は赤茶色の髪をしている子供を引き取りたいのですが、自分の目で引き取る子供を決めたいので子供たちを集めて欲しいのです。」彼女はマリー・ルコント。そして子爵位を持つ貴族でした。貴族と言っても先の戦争で手柄を上げたとして平民から子爵位を叙爵した新米子爵だ。マリーはヴェクターを見ると言った。「貴方がこの孤児院の院長ですか?私はマリー・ルコントと申します。要件は先程の通りなのでお願いしますね。」それを聞いたヴェクターはこの人は貴族だと気付き、今日はとても運が良いと感じながら微笑み、マリーに言った。「分かりました。ルコント子爵様、今から子供達を集めますので是非ともじっくり見てくださいませ。あ、アリアは部屋に戻っていてね。エミリー、子供たちを集めなさい。」「「…分かりました。」」

エミリーが数人の赤茶色の髪をした子供たちを連れてくると、マリーは子供達をひとりひとりよく見てからある子供に対して言った。「貴方、私の元に来ない?」「……え、いや」「この子はナリアと言いましてね、今年で5歳になります。エミリーに拾われた子供なんですよ。身元が全く分かりませんでしたのでね。」ヴェクターはナリアの言葉を遮るようにしてペラペラと喋りだした。それと同時にエミリーはナリアを別の部屋へ連れていった。「それでは私が引き取るのはナリアにしますわ。」「はい!了承しました!書類にサインをして頂ければ明日にでも引き取ることが出来ます!」ヴェクターは急いで書類を持ってくると手続きを始めた。30分程で終わり、ヴェクターはマリーを見送った。ヴェクターはよし!やっと邪魔でうるさかったナリアをここから追い出すことが出来る!と思った。

「ヴェクター…院長、なんで私なの?アリアと離れちゃう…よね?」

「ああ、そうだよ?お前はここから消える!それだけで俺は楽だ。うれしいよ」

ナリアは泣き出した。「いやだ!!いやだ!私は…お姉、ちゃんなの…。」

「あぁもう!うるっさいな!早くどっかにいけ!!」ヴェクターは手を上げようとしたが、咄嗟にエミリーがそれを止めた。「院長様、もしこの子に傷でもあれば問題になります。……控えた方がよろしいと思います。」ヴェクターは苛立った声で言った。「ああ、そうかじゃあ早く、コイツうるさいからどっかに連れてけ!」「…わかりました。ナリア、行きますよ。」ナリアはエミリーに手を引かれて部屋を出た。そしてエミリーの部屋に連れていかれた。

「ナリア、言葉に気を付けなさい。ヴェクターは恐ろしい人だから…。」

「…でもっ、で、も!私、アリアと離れ、たくないよ…。」エミリーはナリアを撫でた。

「……離れるだけであなた達は仲が悪くなっちゃうの?忘れちゃう?」ナリアは首を横に振った。

「うん、だから大丈夫。ほら、明日から会えなくなっちゃうんだから……アリアとお別れをしないとだよ。行ってきなさい。」「わかった。……エミリー、アリアをよろしくね。」エミリーは一瞬少し困った顔をしたが微笑んだ。ナリアはそれを見てエミリーが今までとは違うような気がした。アリアを【守ってくれる】のではないかと思った。そしてナリアはアリアの元へ行った。

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