表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飽き症の天才は飽くなき無限の世界へと旅立つ  作者: 聖花 シヅク
第1章・プロローグ:天才はかくして無限の世界へと旅立った
2/36

第1.5話:飽き症の天才(結華視点)

前話でも報告した通り「第1話:飽き症の天才」の結華視点での話となっています

読み飛ばしても今後の話に支障はありません

1話の深堀のような形になっていますので楽しんでいただけたらと思います

*ユイ視点


「飽きた」


 私の目の前に座る少年————(ひいらぎ)(みこと)————は開口一番にそう言った。

 彼は自他ともに認める天才で、運動、勉強、芸術などなど、様々な分野で結果を残してきている。運動の分野に限れば、今までやった個人技では全ての種目で全国に出場するレベルになっているほどだ。

 また、女優と元プロサッカー選手の間に生まれた尊は容姿にも優れ、時折読モをやっていることもある。


 かく言う私————海藤(みふじ)結華(ゆいか)————も周りからすれば、天才の部類に属するだろうし、容姿も尊ほどではなくともかなり優れている方だと思う。

 しかし、尊と一緒にいるせいか今のところ告白の1つすらもされたことがない。尊は度々放課後やら昼休憩などに呼び出されては告白を受けているというのに。別に好きな人以外に告白されても嬉しい訳では無いが、なんだかモヤモヤする。


 こほん。私の話は置いておくとして、彼には少ないながらも弱点がある。

 その一つが、途轍もないほどの飽き症だという事だ。

 高校に入ってからだけでもバスケ、書道、軽音、アルティメット、水泳、カバディ、短距離走とすでに七種目も経由している。がしかし、どれもこれも三月(みつき)と持ったためしがない。一番続いたのがバスケだが、一人だけ別の種目をやっている様にしか見えなくなってからほどなくして辞めてしまった。


「で、今度は何をやろうと思っているの?」


 この言葉は毎度尊が『飽きた』というたびに言っているが、どうせこの後の言葉は決まっている。


「特に決めていないが?」


 はぁ。やっぱりだ。尊はただ本能の赴くままに努力し、一定以上の実力を身につけたらそこで飽きてしまう。


「毎度のことながら、貴方のその性格は面倒よね。いつになったらその飽き症は治るのかしら?」

「一生治らないと思うがな。特に不自由に思ったこともない」


 確かに、尊にとっては何一つとして不自由ということは無いのだろう。

 きっと尊にとってはそれが普通のことで、何一つとしておかしなところはないのだから。

 それに付き合わされる此方の事も考えてほしいものだが、天才と莫迦は紙一重というし無理なのだろう。


「そう言う問題じゃないのだけど‥‥」

「まあ、過去のことなどどうでも良い。次にやることを決めるとしよう」

「この状況に慣れた私が嫌になるわ‥‥」


 本当に嫌になってくる。尊のことは嫌いじゃないし、何なら好ましく思っているが、それとこれとは話が別だ。

 きっと尊と一生を共にする人は、尊との付き合い方に四苦八苦することになるだろう。


「そうだな‥‥ここ最近やったのは『水泳』、『カバディ』、『陸上』‥‥見事にスポーツばかりだな」

「どの分野でも成績遺せるんだから、続ければいいのに」

「どの分野でも、ライバルがいなくなってしまってはつまらないだろう。程々が一番だ」


 尊の言い分は分からないでもないが、それでも私には理解が出来ない。

 何処までいっても、尊は周りを圧倒するレベルの天才なのだろう。天才のことは天才にしか分からないというが、恐らく本人たちもお互いのことを理解など出来てはいないのではないだろうか。


「そうだな、久しぶりに音楽関係にでも手を出すか?」

「あなたの場合、音楽なんてやったらひと月持たないでしょう。もっと長持ちしそうなもの選びなさいよ。そうね‥‥例えば、ゲームとかいいのではないかしら?」


 尊が音楽に手を出したことで、その道を諦めた秀才たちは数多存在するだろう。

 一年ほど前にやっていた軽音でも、その道で食っていこうとしていた実力の高い生徒がいたが、尊の圧倒的なまでの成長速度を見て諦めてしまったらしい。まあ、それでも軽音自体をやめたわけでは無いらしく、趣味のレベルでやることにしたらしいが、その彼はまだましな方だろう。酷いときはその種目自体やめてしまう人もいたのだから。


 そんなことを考えながら、私は尊が前々から調べてきたゲームを紹介する。

 前回陸上をすすめたのは、このゲームの開始日が丁度来週からだったからだ。勿論、タイミングが良くなったのは偶然だが、陸上はひと月も持たないのは分かり切ったうえで進めたのだから問題ない。


「ふむ、ゲームか。あまりやった事がないが‥‥」

「最近はVRの技術も進歩しているみたいだから、昔とはかなり変わっていると思うわよ」

「VR?」

「フルダイブ型のやつよ。たしか、ゲームとしては3年前くらいに市場に出始めていたはずよ」

「そのくらいは知っている。しかし、フルダイブの技術はまだゲームに用いるのには難しかったのではないか?」

「数カ月前まではそうだったみたいだけど、先月初のフルダイブ型ゲームも発表されていたわ。コンセプトは無限に広がる世界だそうよ。飽き症の貴方にピッタリじゃない」

「たまには息抜きをするのも悪くないか‥‥」


 尊は息抜きと言っているが、息抜きといえども尊はそんなに長く同じことをやり続けることは早々ないのだ。

 だからこそ、毎度毎度長く続けられそうなのを考えては来るのだが、なかなか思うようには行かない。が、今回のゲームは別だ。いつもは最後には決まって周りを負い抜かして飽きてしまうが、今回のゲームは勝てない敵が出てくることもあるだろう。

 周りと比べられることはあっても、それは直接的な飽きる要因にはならないだろう。尊が飽きる最大の理由はライバル————競える相手————がいなくなることが理由だ。

 だからこそ、何処までも進めば進むほど敵が強くなる、このようなゲームを探していたのだがようやく見つけることができた。


「『Mondo Infinito[モンド・インフィニット]』か。イタリア語で『無限の世界』。コンセプトそのままだな」

「分かりやすくていいんじゃないかしら?誰もが貴方のように多言語をマスターしているわけでは無いのだから」


 尊はスマホを取り出し、ゲームについて調べる。


「それもそうか‥‥気に入った。今回はこれにするとしよう」


 少しの間記事を読んでいたが、気に入ってくれたようで一安心だ。


「貴方がこれをやるというのなら、私もやろうかしら」


 元々一緒にやるつもりで進めたのだ。

 私もたまには尊と同じように、一緒に何かをしてみたかったのだ。


「たまにはユイと一緒に何かをやるのも悪くはないか」

「そうね、ミトと一緒に何かをやったのは、もうしばらく前になるものね」


 私は尊と顔を見合わせ、尊と一緒に何かをしていた頃のことを思い返した。


「第1.5話:飽き症の天才(結華視点)」をご覧いただき有難うございました。

次話の投稿は未定ですが明日の同じ時間に投稿する予定です


続きが気になる、結華頑張れ、など思っていただけたら


ブクマ登録いいねや☆の方をつけてくださると励みになりますのでよろしくお願いします




では、また次話でお会いしましょう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ