17 生体の動き
17 生体の動き
生体の働きは生体とその意識の協働と推測される
脳と意識の協働による脳の活動の予想 (暫定版)
《 生体の働きは生体とその意識の協働と推測される 》
脳の働きは、脳という物質と意識(知性)の協働と推測されます。両者は、それぞれ、脳が動作するための不可欠な働きをしていると、思われます。どちらかの働きが停止しても、脳は決して動作はしない、と思われます。
脳という物質は、意識を継続的に形成(または、維持)するという、きわめて重要な働きをしています。そして、意識には、包括的な身体感覚作用と思考作用という二つの大きな作用が実装されています。この二つの作用も、継続的に形成(または、維持・更新)されます。特に、思考作用は、生体の全体的な物理的秩序を形成(または、維持)するための建設的かつ生産的な思考(演算)を果たすものとして、形成(または、更新)されつづけます。その結果、思考作用では、その建設的な方向で、生体のつぎの瞬間の状態が、瞬間瞬間に演算(または、設計・計画)されます。(思考は、本質的に、大きく包括的です。そういう思考は、大きく統合的なものである意識の大きな思考作用以外のものには、決して果たせないと、思われます)。
そして、今度は、ぎゃくに、脳の、関係する全ての物質におき、意識での演算結果を参照し、じぶんの物質的な状態をつぎの瞬間の状態に更新する物質的な作用――実施作用――が果たされます。
こういう形で、脳での統合的な働きのフィードゥバク ループが形成されて、主観の意識での大きな思考や、体の様ざまな筋肉動作が、積分的にもたらされます。
また、生体とその意識の協働は、脳の働きだけとは限りません。微生物・単細胞生物・細胞・組織・器官など、あらゆる生体の働きについても同じと思われます。
さらに、生体の自発的・主体的・能動的な動きは、オートポイエシス――自己制作・じぶん自身の高度な物理的秩序の自発的・主体的・能動的な生産――に該当しますが、以上のことから、オートポイエシスの実現に、生体とその意識の協働が欠かせない、と判断されます。
受精卵についても同じです。受精卵では、どんどん細胞分裂が発生し、おのおのの細胞が専門化され、胎児の体が形成されてゆきます。このあいだ、細胞の役割の決定や、それらの体のなかでの位置の指定などは、受精卵の全体にわたる大きな意識によりて為される、と思われます。(こういう包括的な制御を現実に果たすことができるのは、そういう大きな意識をおいて他には見当たらない、と思われます)。
微生物・植物・動物の別を問わなく、脳や、あらゆる生体は、それらの全体的な意識において、統合的かつ包括的な(身体感覚作用と)思考作用が果たされないかぎり、決して動作しない、と思われます。
ただ、こういう協働の枠組を想定すると、どうしても、基本相互作用のあたり、または、物質作用のなかの実施作用のあたりに、根拠ない不自然な働きが予想されてしまいます。仕方がありません。
さらに、このことは、脳と体の可塑性と生物の進化に、ふかい関係あると推測されます。また、自由意志の問いの最後の1/3にも関係あると思われます。(自由意志の問いは、意識のことだけには留まらず、最後には、どうしても、思考により物質を動かすことの問いに突き当たらざるを得ないです)。
《 脳と意識の協働による脳の活動の予想 (暫定版) 》
意識が微視的なばあいでの、脳と意識の協働による脳の活動につき、一つの仮の予想として、次のようなことが考ええます。
(ちなみに、脳と同様、微生物・単細胞生物・細胞・組織・器官などの生体にても、その生体とその意識の協働により、その生体の活動が実現されるよう、思われます)。
さらに、生体の自発的・主体的・能動的な動きは、オートポイエシス――自己制作・じぶん自身の高度な物理的秩序の自発的・主体的・能動的な生産――に該当する、思われますが、オートポイエシスの実現に、生体とその意識の協働は欠かせない、と予想されます)。
思考クワリアをともなう思考感覚が意識に感じられる主観的な事実から、思考作用が意識に担われることは、もう判明しています。(感覚は何らかの作用の動きの影のようなものであり、感覚そのものの実体は存在しないので、感覚が複数の実体――たとえば、脳とその意識――のあいだで伝達されることはありません)。そして、脳細胞群では、意識の包括的な思考作用の結果にしたがい、物質側ですべきこと・物質側でできることが、果たされる、と思われます。さもなくば、脳細胞群の働きは停止してしまいます。
そして、脳作用局在論(Theory of localization of brain action)や脳作用マピン(Actional brain mapping)などから、脳で果たされる作用は細分されていることが分かりています。
さらに、思考作用は、必ずしも主観の意識だけで果たされるとは限りません。むしろ、準備電位(readiness potential)から、各種の思考は、まずは、大きな主観の意識でなく、それとは別の下位の脳部位のサブ意識群で果たされる、と推測されます。
(主観の意識によりてしか果たされない思考はあるかも知れません。たとえば、体の動作――筋肉運動――の制御には関わらない、ごく観念的な思考です。人間(や動物)の思考には、大きく、筋肉運動にかんする思考と、筋肉運動とは無関係な思考の、二種類がある、と思われます。(ちなみに、人間や動物のからだの動作は、ほぼ全て、筋肉運動により実現されます。かならず(観念的な)思考に基づく、話す・書くなどの動作も、筋肉運動により実現されます)。
もっとも、観念的な思考の一部が主観の意識以外で果たされることは、ありそうです。たとえば、インスピレイションや観念の連想は、むしろ、主観の意識の外部から訪れてきます。観念的な思考の多くも、主観の意識以外のべつの下位の意識で果たされているのかも知れません)。
そもそも、意識は、すべての脳細胞に発生する、と思われます。そして、おなじ一つの作用に寄与する脳細胞群が一つのグループを形成し、それにも少し大きな意識が発生する、と思われます。このように、脳では、作用の細分化に対応し、脳細胞グループの階層構造が形成される、と思われます。そして、これに対応し、意識の階層構造も形成される、と思われます。主観の意識は、その階層構造の最上位に位置するかも知れません。
つまり、脳には、おのおのの脳細胞に発生する意識を基本単位として、大きさの異なる無数の意識が発生し、複雑な階層構造が形成されているのです。そして、このような状況は、体についても同じです。なぜなら、意識は、微生物や、単細胞生物や、細胞の段階で、発生するからです。なので、筋肉組織や各種の器官においても、作用と意識の階層構造は形成される、と思われます。
脳の活動にかんし、脳という物質と意識の協働により為されることは、以下のようなことと思われます。
1) おのおのの脳細胞におき、新陳代謝の継続により、熱とエントゥロピが生成されるが、それらが外部に排出されることで、エントゥロピ生成速度が減少する。
2) おのおのの脳細胞におき、エントゥロピ生成速度の減少により、物理的秩序形成効果が生じる。
3) おのおのの脳細胞におき、物理的秩序形成効果によりて、小さな意識――脳細胞の意識――が、構成要素の物質群の状態や状況そして物理性質に対応するかたちで、自然に形成されて、維持されつづける。そして、脳の作用の階層構造に対応するかたちで、主観の意識をふくめ、各階層におき、大きな意識群も形成される。
(このことは、各階層における各意識の身体感覚作用と思考作用が、物質群の状態などの変化におうじ自然に更新されつづけることを、意味する。(また、厳密な意味での、直接的な自由意志が存在しないことも、意味する。なにしろ、意識や思考作用は被造物なので。被造物は、自分自身の形成には関与できない。それでも、体や脳の可塑性を経由する、間接的で、時間のかかる自由意志は、ある、と思われる))。
4) 上位の意識に実装される身体感覚作用および思考作用によりて、その意識の発生に関与する脳細胞群の全体にわたる次の瞬間の状態――関与する脳細胞群の全体にわたる、大きな、包括的な状態――が演算される。(そもそも、思考作用の源である量子の演算作用は、じぶんの量子のつぎの瞬間の状態を演算する作用である)。
5) (上位、または、みずからの)意識での演算結果にしたがい、おのおのの脳細胞がつぎの瞬間の状態に移行する。(これは、構成要素のすべての物質の実施作用により果たされる。この部分で、基本相互作用――または、そのあたりの何らかの作用――が、(微視的な)思考作用に影響されて、不自然に発生することが、疑われる。簡単には、生物の能動的な動きが現在の物理学ではまだ説明できないと、推測される)。
6) 1)~5)の手順のフィードゥバク ループが果てしなく繰りかえされて、脳での大きな物質的な動きが積分的に形成される。その結果、体の動きを実現するための何らかの指令群(パルス群)が運動神経群に送出される。そして、人間や動物は、意識――この意識は必ずしも最上位の主観の意識だけには限定されない――の思考作用により意図される動作をめでたく果たすことができる。
ちなみに、エントゥロピ生成速度の減少により生じる物理的秩序形成効果に知能(思考作用)は具わりていない、と思われます。この効果は、脳細胞群の物質群の観念的な働きをはたす作用だけをくっつけて、意識を形成する働きだけを果たす、と思われます。ところが、くっつけられる作用群が測定作用と演算作用なりしため、結果的に、意識には、おおきな測定作用(= 身体感覚作用)と大きな演算作用(= 思考作用)が実装されるわけです。
そして、意識の身体感覚作用と思考作用は、脳細胞群の現在の状態などにおうじ、次つぎに更新されます。このため、意識での思考結果にしたがう脳細胞群の状態も、どんどん変化します。そして体もダイナミクに動くことができます。