16 思考
16 思考
思考作用 (概要・予想)
思考作用の形成 (仮定)
《 思考作用 (概要・予想) 》
1) 思考作用は意識に実装される
2) 思考も感覚と思われる
3) 意識にはかならず思考作用がそなわる
4) 思考作用の目ざすもの
5) 演算作用が目ざすもの
6) 生物の動きが形成される様相
7) 物質の状態変化は基本相互作用によりもたらされる
8) 生物の能動的な動きの疑わしさ
9) 生物の動きの原動力
10) 物理的秩序形成効果に知能は具わりていない
11) 思考作用は予測できない
12) 予測不可能性が新規性の鍵
13) 予測不可能性と包括性が生命の鍵
14) 包括性と統合性が物理的秩序の不可欠の要件の一つ
15) 生物のあらゆる活動は物理的秩序の形成に該当する
16) 意識にそなわる思考作用が自動的に動作する
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1) 思考作用は意識に実装される
クワリアをともなう感覚は何らかの作用の動きの影のようなものであり、なんらかの感覚が意識に感じられるなら、その感覚の元である作用は意識のうちに実装されていなければなりません。(感覚は、複数の実体――たとえば、脳という物質と意識――のあいだで伝達されることは、ありません。それは不可能です)。なので、たとえば、思考の感覚が意識に感じられるなら――これは主観的な事実――、思考作用は意識のなかに実装されていることに、なります。つまり、思考作用は、現実に、脳という物質でなく、意識により果たされます。
2) 思考も感覚と思われる
様相ないし質は根本的に異なりますが、五感(身体感覚)と同様、思考も意識に感じられる感覚と思われます。(そして、(おそらく意識に具わりている)思考作用の動きの影のようなものが、意識には思考の感覚として感じられるのだろう、と思われます。なので、動きが終息すれば、思考の感覚も消えます)。
3) 意識にはかならず思考作用がそなわる
意識は、原初の生物(生体)の段階――たとえば、(脳のない)微生物・単細胞生物・細胞――から発生する、と思われます。そして、意識には必ず思考作用が具わると、思われます。この思考作用は、生体を構成する物質群にそなわる演算作用から、自然、かつ、自動的、かつ、動的に、形成される、と思われます。
4) 思考作用の目ざすもの
そして、思考作用は、生体を構成する物質群の現在の状態や状況と物理的な性質におうじ、1個の生体全体の物理的秩序を形成(または、維持・更新)する建設的かつ生産的な方向の包括的な思考を果たすものとして、形成される、と思われます。また、状況の変化にしたがい、時々刻々、更新される、と思われます。
5) 演算作用が目ざすもの
それは、そもそも、物質にそなわる演算作用――物質作用の一つ――がそういうものと、想定されるからです。物質は、他者との基本相互作用に巻きこまれしあと、力やエナァジについての外因的な影響にしたがい、じぶんの状態をつぎの瞬間の状態に自分で更新しないといけません。これは、物質に具わる微視的な世界での物理法則に厳密に従うはずですが、そういうことは、この宇宙の存在の基盤をなす微視的な世界の秩序を維持することに該当する、と見なせます。ひいては、それは、巨視的なレヴェルでの秩序を維持することにもなります。その結果、様ざまな物理法則が定式化されるわけです。物理事象が物理法則にしたがい発生することは、この物理世界の秩序が維持されることと、同義です。(さもないと、物質の変化は無茶苦茶になり、宇宙は崩壊してしまうことでしょう)。
6) 生物の動きが形成される様相
ちなみに、生物の動きは、すべて、その動きに関係する全ての物質群の現在の状態が、時間の流れにしたがい、つぎの瞬間の状態に、次つぎ、果てしなく更新されていくことで、成りたちています。細胞内部の動きから始まり、筋肉運動により形成される身体動作に至るまで、生物の動きは、すべて、関係する物質群の物理的な変化により齎されます。しかも、ただの身体的な動作だけでなく、見る・聞く・考える・話すなどの、精神性をふくむ動作も含まれます。
7) 物質の状態変化は基本相互作用によりもたらされる
そして、物質の状態変化は、基本相互作用――または、そのあたりの何らかの作用――の発生により、受動的にもたらされます。意識の思考作用の包括的な演算にもとづき、生体の関係する全ての部分にて、基本相互作用が(不自然に)発生し、その結果として、物質群が動かされる、または、変換される、と思われます。(物質は外的には完全に受動的であり、物質が外的に動くということは、物質が基本相互作用に巻きこまれることを意味します)。そして、このような演算と動作のフィードゥバク ループが果てしなく繰りかえされることで、生体の巨視的で建設的で生産的な動き――動的な秩序の形成――が積分的にもたらされます。
8) 生物の能動的な動きの疑わしさ
つまり、生物が、意識での包括的な思考にしたがい能動的かつ建設的かつ生産的に動くためには、それを可能ならしめるに足る基本相互作用――または、そのあたりの何らかの作用――が、基盤の物質群にて不自然に発生しなくてはいけないと、思われます。
しかし、こういうことは、(現在の)物理学では認められてはおりません。なぜなら、(現在の)物理学では、思考という不思議なものと、物質のあいだは、切れており、両者のあいだに物理的な因果関係は生じえないからです。(正確に言えば、意識にとりての入力側――身体感覚・五感――では、因果関係は生じています。しかし、出力側――筋肉動作や器官の働き――で、因果関係がまだ発生できないのです)。手短に言えば、生物の能動的な動きは疑わしいのでありて、その物理的な合法性はまだ示されてはいないです。(詳細は別記してあります)。
9) 生物の動きの原動力
生物の動きをもたらす原動力は、生体内に発生すると予想される物理的秩序形成効果と思われます。そして、この効果は、生体内での酸素消費プロセスに起因する、エントゥロピの生成と、エントゥロピ生成速度の減少により、もたらされる、と思われます。ある系でのエントゥロピ生成速度の減少が、意識と思考作用という観念的(精神的)な物理的秩序の形成を経由して、その系での、なんらかの物質的な物理的秩序の形成を促がすわけです。(物理的秩序形成効果が生物の動きの直接的な原因ということでは、ないのです)。
10) 物理的秩序形成効果に知能は具わりていない
ちなみに、エントゥロピ生成速度の減少による物理的秩序形成効果に知能は具わりていない、と思われます。この効果は、たんに、ある系の全体での観念的(精神的)な物理的秩序の形成を促がすだけです。それでも、それが、生体のシステムにおき、物質の作用である(測定作用と)演算作用に働くと、不思議なことに、なぜか、生体の統合的かつ包括的な物理的秩序の形成をめざす観念的な思考作用が形成されるのです。
11) 思考作用は予測できない
さらに、どのような思考作用が形成されるかは、決して予測ができません。誰も知らないのです。誰にも分からないのです。形成の原動力である物理的秩序形成効果さえ、知りません。なぜなら、この効果は、単に、物質群の観念的な働きをはたす作用をくっつけて、大きな作用にするばかりだからです。この効果に知能は具わりてはいないです。思考作用は、生物(意識)の意図なしに、自然かつ自動的に形成されるばかりです。(逆に、自然に形成される思考作用が、生物(意識)の意図になります)。
12) 予測不可能性が新規性の鍵
しかし、予測のできないこと・不確実性・不定性が、生物での新規性の発現の原動力と思われます。(他方、プロウグラミン済で、動きが固定されている機械には、予測のできない新しいものを生みだすことなど、逆立ちしてもできません)。予測のできない新規のものを生みだせるか否かが、生物とマシーンをわける鍵の一つ、と思われます。
13) 予測不可能性と包括性が生命の鍵
また、1個の生体の全体を見渡しながら思考のできる大きな包括的な思考作用――言わば、知性――が形成されることも、鍵の一つと思われます。このゆえ、大きな物理的秩序が形成できるわけです。
14) 包括性と統合性が物理的秩序の不可欠の要件の一つ
物理的秩序は、かならず、複数(無数)の構成要素から形成されなくてはなりません。そして、構成要素群に物理的秩序の形成のための全体的な包括性と統合性をもたらせるものは、意識という大きな作用――知性――をおいて、他にはありません。
なので、概観能力を有さない機械に、あたらしい秩序を設計(または、計画)することは、到底できないのです。
15) 生物のあらゆる活動は物理的秩序の形成に該当する
こういう次第で、生物のあらゆる活動は、根本的に、物理的秩序の形成(と維持・更新)にあたります。
16) 意識にそなわる思考作用が自動的に動作する
ちなみに、意識が直接に思考を果たすわけではありません。意識は測定作用と思考作用から成りますが、これらの作用が自動的に動作するのです。そして、それらの動きの影のようなものを、意識は身体感覚と思考感覚として感じるわけです。
《 思考作用の形成 (予想) 》
微生物や細胞などの生体での包括的な思考作用――おおきな演算作用――の形成は、次のように予想されます。
a) 生体の全体についての包括的な思考は、意識の包括的な思考作用により果たされる。生体を構成する物質群の現在の状態や状況と物理的性質にしたがい、つぎの瞬間の状態が演算される。
b) 包括的な思考作用は、構成要素の物質群の現在の状態や状況と物理的性質に応じ、生体全体のつぎの瞬間の物理的秩序を形成(または、維持・更新)する建設的かつ生産的な方向のものとして、各物質の演算作用――物質作用の一つ――から形成される。これは、エントゥロピ生成速度の減少による物理的秩序形成効果の発生に負う。
(ただし、物理的秩序形成効果またはエントゥロピ生成速度の減少に知能が具わりているわけでない。そもそも、物質の演算作用は、その物質のつぎの瞬間の物理的な状態を演算するものである。そして、物質のつぎの瞬間の物理的な状態とは、すなわち、その物質のつぎの瞬間の物理的秩序である。つまり、物質の演算作用は、元もと、物理的秩序を演算するものであり、物理的秩序の演算が知性の根源である。そういうものが無数に融合することで、生物(生体)レヴェルの知性が形成される)。
c) 包括的な思考作用により演算されし全体思考(観念)は、生体全体のつぎの瞬間の状態を表現する。そして、これは、構成要素の物質群に自動的に伝達される。次期状態を表現する観念が、物質ごとに伝達される。(意識の思考作用は、物質群の観念的な働きをはたす作用群から形成されるので、全体思考は物質ごとの思考を合わせしものとして形成される、と思われる。かりに、最初から全体思考が形成されるとしても、その部分部分は、自動的に、個この物質の思考――つぎの瞬間の状態を表現する観念――になりている、と思われる)。
d) 各物質は、自動的に伝達されし次期状態の表現(観念)にもとづき、次の瞬間には、その状態になる。この物理的な変化は、各物質の実施作用――物質作用の一つ――により果たされる。
e) その結果、生体全体は、つぎの瞬間には、包括的な思考作用で演算されし状態になる。
f) また、包括的な思考作用は、物質群の現在の状態や状況と物理的性質にしたがい、時々刻々、変化する(更新される)。このゆえ、新陳代謝の遂行のような、時間のかかる動的な物理的秩序も、相互的なフィードゥバク ループの稼動によりて、積分的に形成されうる。