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第5話『魔法少女の甘い罠』

 二月十四日になって、学校にチョコを持ち込む女子が今年も現れた。バレンタインの日はいつも土日になったりで悲しむ女子で溢れるんだけど、今年は月曜日と奇跡が起きた。 

「七海ちゃん、チョコあげよっか?」

「いいって気を遣わなくても。そのチョコは好きな人にあげな」

 クラスの仲良し女子グループでチョコを渡し合ったり、もしくは顔も性格も良いらしい、女子人気のあるイケメンにチョコを渡しに行ったりと賑やかな一日だった。

「一緒に帰ろ♡」

「ねぇ〜、今日家行かない? お父さんお母さんには事前に言ってある からさ‼︎」

「君の家でお泊まり、良いかな……?」

 男女もイチャイチャ、女女もイチャイチャ。リア充達は見ていて羨ましい気持ちと爆ぜてほしい気持ちが複雑に入り混じってくる。その感情はまだ憎しみが混ざってないからマシだけど、三十代独身になったら流石にどうなるかなんて想像が付かないや。

「ただいま〜」

 部屋に入ってすぐベットへ倒れ込む。そのままふて寝しようとする前に少しだけ、二週間前の魔法少女バトルを思い出す。

『蹂躙の炎‼︎』

 見るだけでくどいレベルの甘いお菓子に囲まれた衣装をした、あざとい魔法少女が相手だった。あんなキャラは一度見たら結構忘れられないのは言うまでもないかな。

『ふゆぅ…… あこ、負けちゃった……』

 小柄な体型だったのも相まって、所々作ってるって分かる喋り方も頭から離れない。

 えっと、私は今何ポイント貯まったんだっけ? あの子との戦闘で280ptになったんだっけ?

 あぁもう、面倒くさいからいいや。

「あれで高校生とかだったら、流石に無いわ……」

 そう思いながら帰路を歩いてる途中、激しい足音と共に背後からいきなり抱きつかれる感触が。そして突然の出来事に遭遇した私は受け身を取れず倒れこむ。

「みーっけ‼︎ あなたこの前会った魔法少女でしょ⁉︎」

「うぐ…… その甘い声は……」

 馬乗りしてる女の子をよく見ると、やっぱりこの前戦った甘過ぎる魔法少女だった。しかもよく見ると私と同じ制服を着ていた所に大きなショックを覚える。

「えーっと、確か名前は高宮七海ちゃん…… だったよね? 合ってるよね?」

「まぁそうだけど…… まず降りてくんない?」

「えっ、あ、あぁごめんね‼︎ こっそり七海ちゃんの白綿パンツを触っちゃって‼︎」

 おい待てや変態‼︎ 勝手に人のパンツ触んなや‼︎

「まさか、私をずっとストーカーしてたの?」

「ううん違うよ‼︎ あの日出会ったのも何かの縁だから、少しお話したいなぁ〜って思って‼︎」

 そう言いながらニコニコする少女あこ。まぁ戦った事のある私目線だと、この子は多分悪い子じゃないはず。根拠はハッキリ言って無い。

「……まぁ、良いけど」

「ありがとう七海ちゃん‼︎ それじゃあ、あこに付いて来て‼︎」

「あぁちょっと‼︎ 手を引っ張らないでよ‼︎」

 あこに無理矢理連れて行かれながら辿り着いた先は、まさかまさかの大きめなスイーツ店。しかも八王子では若干知名度のある、そこそこ有名な店の裏口へ引き込まれていった。

「あんまり緊張しなくて大丈夫。五分くらいで済ませる様にするから、安心してね」

 しばらくしてあこがカットしたチョコケーキを二人分、お盆に乗せて部屋に入る。

「ウチのお菓子、食べた事ある?」

「多分ないと思う……」

「そっかぁ、じゃあこれが初めてになるんだ……」

「……甘い」

「でしょー? チョコの甘さが自慢なんだもの‼︎」

 あまりの美味しさに丸ごと平らげた頃に、あこがフォークを置いて真剣な顔つきになる。

「ねぇ、あことパートナーにならない?」

「パートナーって、魔法少女の?」

「そう。あこの魔法がどんなのかはもう知ってるよね? だから一緒に戦ってさっさとポイント稼いで、魔法少女なんか卒業しちゃおうよ‼︎」

 魔法少女を、卒業……?

「一度魔法少女になったら、ポイントが0になるか目標まで貯めないと終わらないって。だから二人で姉妹契約してポイントを共有した方が手っ取り早いと、あこは思うんだ〜」

 少しずつ歩み寄っていき、目の前まで接近してくる。

「あこの魔法、覚えてるよね? 守ったり動きを封じたりする魔法で、七海ちゃんが炎の魔法で倒す。うん、とっても良いパートナーになれると思うなぁ」

 今度は私の身体に覆いかぶさってくる。なんて言うか、キスしてきそうな勢いで近い‼︎

「で、でも私……」

「知ってるよ、新人なんだよね。あこが手取り足取りで教えてあげるから、身を委ねてればきっと……」

 あこが急接近してくる。こういうのって、流れでオーケーさせようって魂胆が見え見えなんだよね。

「……ごめんね、あなたの願いは叶えられない。私にはもうパートナーがいるから」

 だからハッキリと断る。あこの願いを。私をパートナーにしようとする願いを。

「……そっか、ザンネン」

 ガッカリしながら立ち上がって大きく背伸びをしてから、また口を開く。だけど今度は「諦めない」とか「負けないから」じゃなく、「さようなら」だった。

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