第3話『穿て、蹂躙の炎』
朝日と別れて家に帰った後、改めてコンパクトをジッと眺める。今夜行われた魔法少女バトルで朝日が私の手助けなしのソロバトルで、近接戦の凄さを見せつけていた。
(でも朝日は遠距離戦を得意とする魔法少女には、めっぽう弱いはず。だから遠距離魔法を持ってる私が朝日のサポートに回れば、最強のコンビになれたりするのかも……)
前回の戦闘には参加していないからポイントは貰っていない。おかげで少し心許ないポイントになっているが、少しガチャりたくなってきた。
「よしっ、思い切ってガチャっちゃお‼︎」
コンパクトのガチャモードを起動して、たった一連だけ回してみる。何が出るかと画面を凝視していたら強そうな技名の魔法を入手出来た。
『ガチャ結果、高火力魔法[蹂躙の炎]獲得』
なんか名前だけでもすごく強そうな魔法を手に入れてしまった。しかも高火力って書いてるから、絶対一発KOとか出来るレベルなんじゃ?
「おー、七海ちゃんが早くもソレを入手しちゃったかぁー。とっても運が良いのかな?」
ケールがガチャ結果の画面を、色んな角度から眺めながら話しかけてきた。ケールが驚くくらいの強運の持ち主って事は、やっぱりこの魔法はスーパーレア級なんだよね⁉︎
「その魔法はね、凄まじい量のMPを消費する代わりに絶大な威力の炎を放つ凶悪な魔法なんだよ。だからソレを撃ちたい時は相手が弱ってる時に撃つのをオススメするよ‼︎ もしかわされたら七海ちゃん、隙だらけになっちゃうから」
「だよね…… 高火力な分隙だらけなのは何となく想像出来たけど……」
「ところで今月にはクリスマスがあるでしょ? その日にも魔法少女バトルをやってるんだけど、七海ちゃんは参加する?」
「クリスマスにやるの? 今は参加するか決められないかなぁ……」
それにその日になったら家族とどっか行くかもしれないから、出来れば家族との時間を優先させたいなぁ。
「まぁ出来たらやるよ。その日になったら教えてね、忘れてるかもしれないから」
「あいさー、そんじゃまたねー」
ケールがいなくなって、しばらくの平穏が続く。
「……さて、お風呂入ろっと」
一二月二二日、今日でやっと終業式になってそれが終わったらほんの少しの冬休みが始まる。そして放課後になると教室では騒がしい人がいつも通りに騒いでいる。
「はぁ…… 今日も日菜の周りには女子が沢山っと。あぁいうのって本人は楽しいのかなぁ?」
どうも女子が周りに女子を配置している図を見ると、ハーレムの様に見えない時がある。何て言うのかよくある女子の勢力が巨大化しただけで、男子近付くなオーラを一言も発さずに放ってる感じって言うのかな?
私はあういうの見てて、あまり良い気はしないかな。
(〜♪)
そして最近は朝日と連絡先をしてから、冬休みに私と何処かに行こうと色んな旅行雑誌のページを写真に撮って送信してくれる。私からしたら嬉しいな、こうして友達がアウトドアだと。
私は純粋な日本人なのに、実は地元の近くしか行った事がない。埼玉とか神奈川くらいしか行った事がなくて、一番遠くに行った時なんて千葉だもん。
《北海道とかどうかな⁉︎ 大自然のホテルで二泊三日とか最高だよ‼︎》
《いいね北海道‼︎ 私も行ってみたい‼︎》
見渡す限りの緑に囲まれたホテルかぁ。確かに良いね、こういう所って。騒音まみれの東京とは正反対だもんね北海道って。
《じゃあさ、クリスマスとか二人で北海道行ってみない⁉︎ お金と時間はコッチで用意出来てるよ‼︎》
《ごめんね朝日、もしかしたらその日は家族と旅行するかもしれないんだ。わざわざ誘ってくれたのにゴメンね……》
《あっ…… 家族旅行なら仕方ないよね。ゴメンねっ‼︎》
《ううん大丈夫、お詫びにお土産買う?》
《じゃあアレ食べたいなジャンボホタテバーガー‼︎ 雑誌で見て美味しそうだなぁ〜って思ってたんだよねぇ‼︎》
《何ソレ?》
《別海って所にあるんだって。根室の近くって言えば分かる?》
《あぁ〜あそこか》
《もし行けたらで良いから、あたしの分を買ってくれたら嬉しいな〜》
《行けたらね? あんまり期待はしないでよ、お父さんが結構固い人だから意見聞いてくれないかも》
《あはは、そっか〜。あんまり期待しないでおくよ。じゃあそろそろあたし帰るよ‼︎ またねっ‼︎》
《うん、また今度ね》
家に帰ってすぐに家族から旅行先が北海道になる事を知らされた。しかも道東あたりで泊まる事になって、それを朝日に連絡したらやたらと喜んでいた。
そんなこんなで訪れたクリスマスの日、私達高宮家は初めて北海道に訪れた。そんで結局のところ朝日とは行く場所が被らず会えない事が確定しちゃった。
お詫びにホタテバーガー買ってあげよう。自腹でね。
「中標津空港を出たら一度お昼を食べに行って、それから別海のホテルに行こうか」
お父さんの運転で街の中を走って行く私達。パッと見た感じだと八王子とはあまり変わらない街並みだけど、やっぱり緑の多さが全然違う。公園みたいな所もかなりの面積があったし、あと何よりも雪が積もってる‼︎
すごいよっ、これが北海道の雪か‼︎
「よし、ここでお昼食べようか」
「「はーい‼︎」」
家族でお昼を楽しみ、すぐ近くにあったゲームコーナーでクレーンを楽しんだり、服屋さんで少しだけ服を買い足したりと思いっ切り楽しんだ。
そしてメインである別海に訪れるとすぐに目に入るのは、見渡す限りの牧場。テレビでよく“別海は酪農王国”って言ってたから、どんな所か一応気になってはいた。そして実際に訪れてみると凄い‼︎ 何処を見ても畑しかない‼︎
「あっ、牛がいるよ‼︎」
「ホントね、牧草を食べてるー、カワイイー」
白黒の牛が何十頭も群がって畑の草を食べている。本物を見てもやっぱり牛は可愛いね。漫画で得た知識しかないけど、結構食べるんだったよね? だとしたらかなりの大食いなんだよね。
「ふぅ〜、ホテルに到着っと。もう昼過ぎになっちゃったなぁ…… 俺は少し休むから、七海は母さんに頼むよ」
お父さんが運転の疲れで部屋に着くなり、すぐ横になって寝ちゃった。そしてお母さんと一緒に歩いて別海の街を散策する事にして。いざ別海町を冒険気分で出発していく。
「おっ、プールがあるし体育館もある‼︎ 結構大きいね〜」
「そうね〜、それにトラック競技場もすぐ近くにあるわね。マラソン大会とかやってそうだね、こういう田舎町なら」
「マラソン大会かぁ。確かに町主催で毎年やってそうな感じがするね、分かんないけどさ」
しばらく歩いて街中を歩いて行くと、寿司屋さんっぽい見た目の店前に一際目立つのぼり旗が。そこには朝日が食べたがっていたホタテバーガーの文字が書かれていた。
(ここか。朝日が食べたがってたバーガーが食べられる所は)
お母さんと一緒にジャンボホタテバーガーを食べ、お互いに食べづらさを感じながらもバーガーとしての意外な発見をした。ホタテバーガーでもいけるねコレ‼︎
「よしっ、そろそろホテルに戻ってお風呂に入ろうかな。七海はどうするの? 一人で歩くの?」
「そうだね、しばらく一人で歩いてよっかな。お母さんは一人で先帰ってて大丈夫だよ」
お母さんと一旦別れて街の中をさらに歩いて行く。雪道を夏靴で歩いてるから滑って転んだりしない様、周りが見たら不審者に思われそうな覚束ない足取りで歩き続ける。
「おっ? あのスーパー見た事ないな。地域ならではのご当地系かな?」
赤い看板が目立つスーパーに入ってみたけど、入ってすぐに目に付くのは綺麗な内装。少し肌寒さがあるけどそれを除けばかなり良い感じのスーパー。
ただ何か買う予定なく入っちゃったから、せめて何かお菓子でも買っていこうと思う。
「ちょっと待って七海ちゃん‼︎ もうすぐで夜七時になるから、魔法少女バトルに参加するかどうか決めてほしいよ‼︎」
「うぇぇぇぇ⁉︎ イキナリ出て来ないでよ‼︎」
お菓子を棚から取り出した瞬間に、その商品の裏からケールがヒョッコリ出て来て私はそれにめっちゃ驚いてしまった。
「ゴメンね、でもあと二分しかないから早めに教えてほしいんだよ。魔法少女に変身する?」
「するよするよ、だから静かにして‼︎」
慌てながらコンパクトを手に取って、魔法少女へ変身する‼︎
「マジカ……‼︎ ル、コーディネート……」
ここが店内で、さらに周りに見られる聞かれる状況を思い出して超小声で呪文を唱えて変身した。
「それで、今度の敵は何処にいるの? 店員、それともバックヤード?」
「まずはお菓子コーナーから出て七海ちゃん。そしたら遠くでケーキを売ってるのが見えるかな。そこに突っ立ってる女の子が見える?」
ケーキ売り場でスマホ片手に一歩も動かず佇む少女が、何かしている様な仕草をとっている。バレない様に歩み寄ってそっとスマホの画面を覗き込むと、画面にはSNSで文字が現在進行形で打ち込まれていた。
《最近思うんだけど、チョコホールとかのケーキを並べてる店にイラつく。これ見てると“男性器”に見えてくるからほんとキモい…… 私達女性を何だ》
(うわ、この人何言ってんの…… たかがケーキなのに?)
なんか一目見てこの人ヤバいと察し、そそくさと逃げ隠れてケールと作戦会議を行う事に。
「ちょっとケール、あの人何者なのよさ⁉︎ 絶対変人だって‼︎」
「とりあえず七海ちゃん、まずはスマホでティッターを開いて。そして“momo”で検索してくれる?」
何そのダサいネーミング。でもとりあえず検索検索っと…… そして出てきたアカウントのつぶやきを一通り見て、確実に思った事がある。
「うーわ、これ絶対過激アカウントじゃん…… 女子校が減ってる事を批判したり、女性専用車両にもガンガン口出ししたりしてるし…… 何なのさ、あの女⁉︎」
「とりあえずその人が魔法少女だよ。名前は追沼不美、物凄く厄介な戦法で戦うから初心者の七海ちゃんにはかなりキツい戦いになるね」
「じゃあ他の人を呼ぼうよ。この地域に住んでる魔法少女とかいないの?」
「それがね…… つい最近いなくなっちゃってさ、もうこの辺に魔法少女がいないんだよ」
マジかよ、そんな田舎なの別海って⁉︎
「それに朝日ちゃんはどうやら家族と羅臼にいるみたいだし、どう考えても無理でしょ呼ぶなんて? だから七海ちゃん一人で戦うしかないよ‼︎」
「戦うって、どうやって……?」
ケールはドヤ顔でピッと私のスマホを指差して、ニッと笑みを浮かべる。
「討論しかないでしょ‼︎」
相手に見られない場所、つまり反対側にある休憩スペースの席に座って魔法少女姿でスマホのティッター画面に向き合う私。既にこれから相手するアカウント“momo”のケーキによるつぶやきは数百程度の反応があり、賛同する反応もあれば否定する反応もある。
ケール曰くこれから行う戦闘方法は、この“momo”のつぶやきに対し私のアカウントを以って論破するという、もはや魔法少女ですらない戦いをするみたいだ。
「良いかい七海ちゃん、相手はとてもメンタルが強いし発言力がある。周りがつぶやきに乱入してきてもガン無視決めちゃって大丈夫だからね」
「野次馬を無視しなきゃいけないの? 脅迫してきたらどうしたら良いのよ?」
「そういう時は報告しちゃえば良いと思うよ。それじゃあ七海ちゃん、返信の準備をして」
スマホに集中して、恐る恐るリプライマークをタップして文字を打ち込んでいく。
(え〜っと、確かmomoさんにはケーキがアレに見えるって言ってたから…………)
過激アカウントに返信を送るなんて、生まれて初めてだからどんな言葉を送って討論したら良いのか分からない。地雷原に自ら足を踏み入れるのと同じだし、最悪自滅で終わるかもしれない。
(…………こんなので、どうかな)
だけどスマホの中の討論なんかでポイントゲット出来るのなら、まだこれは安い方なのかな?
《FF外から失礼します。ケーキがアレに見えるって言うのがよく分かりません、そんなに似てますか? 似てたらそもそも店先に並んでないと思いますけど?》
とうとう送ってしまった。一応コンパクトを見てみるとmomoさんの本名が対戦相手として記名されて、魔法少女バトルが行われている雰囲気の演出が出ていた。スマホでの戦いなのにHPとMP表示もきちんとされてるし、なんか意味不明な状況だよ……
《は、何言ってんの? きちんと写真見てください。ケーキの位置とかちゃんと見ましたか? こんなに露骨なアピールしてるのに何とも思わないなんて、どうせ男なんでしょうね》
うぅ、これはかなりの暴言だなぁ。しかもこれだけで何故かゲージ減ってるし、早めにケリ付けないと反論出来なくなっちゃうからペースを上げないと‼︎
でも過激アカウントって、どう言葉を投げれば黙ってくれるのか分かんないや。そもそも口喧嘩したら私が折れちゃうし…… はぁ、どうして降参しなかったんだろうなぁ、私って。
《ケーキの色とかで男のアレに見えるなら、もっと他の物でも見えるんですか? ウインナーとかソーセージとかもそう見えるって事ですよね?》
あっヤバ、今の地雷だったかも。
《ふざけてるの? ウインナーとかは元々そういう物でしょ? 私達女性に恥ずかしい思いをさせる為だけに作った卑猥で最低な食べ物なんだよ。そんな不潔な食べ物を平気で喜んで口にシてるとは、さすがクソオス。私はクソオスなんかの言いなりにはならない》
…………は?
《私は女性です。そうやって思い込みだけで物の見方や価値観を他人に押し付けないでくれますか? そうやって“私の意見はみんなの意見”と思い込んでるから、周りから批判されるんですよ? そんなのに気付かないアナタはよっぽどの子供ですね》
周りが私のリプに賛同するかの如く煽り文章を送り付けてくる。こういうのは全部スルーするって言われても、相手の反応がすごく怖くなってくる。そしたら案の定、相手が遂にブチギレてしまった。
《ねぇ何で私が怒られないといけないの? 私がこんな必死になって正しさを訴えてるのに、返ってくるのは思考停止したゴミ共が女をこき使いながら送ったクソリプだけとか。そこまで女を下に見てるなら皆揃って女から見捨てられればいい。離婚して路頭に迷って、他の女からストレス発散の道具に成り下がるか、そのまま犬死にしてどうぞ》
《言ってる事がメチャクチャです》
《信じらんない…… 私は真剣になって男女平等を訴えてるのに何でオス共はバカにしたり女性の必死な訴えをネタにするのだろうか? くだらない事してる暇あるなら女性をもっと理解すべき。じゃないと私に賛同する女性が二度と現れなくなるからさっさと消えて》
《不愉快だからって、八つ当たりしないでください》
あぁもう、イライラするなぁ……
「あっ、ブロックされた……」
「あちゃー。これじゃもう討論は無理だね……」
「じゃああの人は一体どうなるの? 好き放題物言って何でも叩いて終わり?」
「うんそうだね。そういう“一部の女”が真の男女平等を名目にしておいて、実際は病的なまでの男性差別と炎上ツイートを生き甲斐とする害悪の象徴だもん。自分の気に入らない事は全て敵。利用出来る人は男でも利用して、自分が叩かれたら男のせい。そいつは決して世の女性の味方でもない、自分こそがルールである事に快楽を覚えた救いようのない人間なんだよ」
「はぁ〜⁉︎ 何よそいつ、すごくムカつくんだけど‼︎ 何かもう直接殴りたいくらい‼︎」
「だったら、まだ店内にいるみたいだし[蹂躙の炎]をブチかましに行ってみる?」
「えっ、今から⁉︎ てかヤバそうなの撃っちゃって良いの?」
「うん、撃って大丈夫だよ。だいぶ相手も必死になって他の物を差別してるからね」
「てか直接攻撃出来るなら、最初から蹂躙の炎を撃っときゃ良かった……」
でもまぁしばらくは他のアカウントに食らい付いてるから、無防備なんだろうね。だからそう考えれば余裕で蹂躙の炎を撃っても大丈夫、なのかな?
「まぁとりあえずケーキの所に来てみたら、まだ魔法少女がいるけど…… ホントに撃っても大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよ‼︎ 声は聞かれるけど、エフェクトは魔法少女にしか見えないよ。多分‼︎」
「じゃあ、小声で…… じゅっ、蹂躙の炎……」
そっと人差し指をmomoに向けて魔法を口にした途端、指だけでなく手の平から猛烈で過激な紅色の光を放つ炎が煌めいた。それを相手へ向けると、炎が火炎放射器の如く伸びて行き魔法少女を広範囲に包み込んでいった。
「ちょっ、コレ本当に周りから見えないよね⁉︎」
「大丈夫だよ、多分‼︎」
「さっきからソレしか言ってないじゃん‼︎」
一応勝敗を確かめる為にコンパクトを覗くと、MP表示が全部使い果たされてゼロになっていた。流石高威力魔法だね。
「うわぁ〜、私フルパワー撃っちゃったのか…… いくら燃えないとは言え可哀想……」
「あの人の場合は救いようの無い魔法少女だよ。ボクにはもうどうしようもないんだ」
慌てふためくmomoをケールと二人で眺めていると、コンパクトからアラームが小さく鳴った。
『戦闘結果、勝利‼︎ 持ち点移動+55pt 現在持ち点190pt(内訳○勝利:25pt 処女ボーナス:30pt)』
たった二回の戦闘でもう200pt超えそうだなぁ。もしかして魔法少女バトルで負けた時、ポイント大暴落とか無いよね⁉︎ 負けただけで100pt減少とかだったら、バランス崩壊で訴えられるよ⁉︎
「い、いつの間に魔法少女が背後に……」
蹂躙の炎が勢いを失くして、ようやくまともに動ける様になったらしいmomoこと追沼不美がスマホをこっちに向けて写真を撮る。
「こっ、これでお前を晒せば…… お前は社会的抹殺待ったなし…… これでアタシの勝ちだ……‼︎」
「きっ、汚いぞ‼︎ あと思考も‼︎」
「うるさいっ‼︎ 魔法少女は魔法で戦うなんて誰が決めた⁉︎ 男か⁉︎ 男は皆揃ってアタシ達女を見下しては差別、差別、差別…… もうウンザリなんだよっ‼︎ 女がクソ共の奴隷になるのはさぁっ‼︎ 男に味方する奴等もみんなこうさ、ネットに晒されて仲良く御陀仏さ。フフフ、フフフフフ……」
スマホに顔を近付けてプルプル震える指を近付けた途端、不美の目つきがガラッと変わった。そしてワナワナしだしたかと思いきや、手の激しい震えでスマホが振るい落とされて画面が私達の目に映る。
「んー? “このアカウントは凍結されています”…… もしかしてコレ、ケールがやったの?」
「もちろんだよ。それに彼女はこの戦闘で持ち点を失ったからね、魔法少女としての戦闘手段に繋がる武器は全没収させて貰ったんだよ。彼女の場合はスマホのSNSアカウント全て、回収しちゃったよ」
ケールのご丁寧な説明を受けた不美は、絶望のあまりその場で膝から付いて肩を落とす。ネットで炎上した人の末路ってこんな感じなのか。
うん、やっぱり怖いなぁネットって。
「はぁ〜、露天風呂最高〜♪」
もうすっかり夜遅くになっちゃったけど、ゆったりと露天風呂でくつろぐ私達。ちゃっかりケールも堪能してる事についてはもう突っ込まないけど、すぐ近くに人がいるから気を付けてほしいんだけど。
「それにしてもお疲れ七海ちゃん。次の戦闘はお正月にやるから、それまでは冬休みの宿題を忘れてパーっと遊びぼうけたりしないでよ?」
「しないしないって、そんな子供みたいな事」
ふとすぐそばで入浴している綺麗な女の子と目が合う。そしたら軽く頭を下げてきたから、私も真似して軽く挨拶する。
「次回からは朝日ちゃんとコンビで挑むとして、その時の説明を軽くやっちゃうね。コンビで戦闘して勝利した時は貰えるポイントが分割されるシステムなんだ。持ち点移動は互いのポイントを可能な限り、平等に増減させているからね。活躍量によって貰えないなんて事は無いけど、コンビになった以上はお互いに協力して戦ってね?」
「はいはい、分かってるよ」
「ホントに?」
「本当だって、私を信じてよ」
「……まぁ、信じるよ」
もう長い間お風呂に浸かってるし、そろそろケールと上がる事にした。その時にまだ浸かってた女の子と目が合ったけど、ニコッと微笑んで手を振っていた。
初めて会ったというのに、彼女は私に対して随分と積極的なのが不思議で堪らなかった。




