早口言葉オジサン
オジサンと知り合った。
なんとなく、道で話した。
その流れで、なんとなく友達になった。
「派出所の知り合い手術中みたい」
オジサンが、ケータイを見ながら言った。
キチンとは言えていなかったが。
「庭には二羽ニワトリがいるんだ」
そんな自慢もしてきた。
「母校が初出場だって取りざたされてるよ」
そんな自慢もあった。
「僕は骨粗髭症なのよ」
そんなカミングアウトもあった。
一緒に喋りながら歩いた。
「過失致死傷の事件がこの近くで起きたみたい」
そんな衝撃事実も知った。
「古美術商が来場者数を見誤ったって?」
ケータイを見て、そんなことを言っていた。
普段、使わない言葉ばかりだ。
虫の声が、にぎやかになってきた。
「カナカナと奏でているけど、カナブンかな?」
みんな、わざと早口言葉風にしているような。
真相は不明だ。
「腫瘍摘出手術中の主治医がなぜかいるな」
オジサンがそう口にした。
ここは、現実世界か?