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俺たちの慈悲無き漫才ライフ  作者: 宇豪野 衆
7/20

大人しい子どもは親に自己主張しずらい

「「どうも、ありがとうございました」」

「パクリじゃん!!」

「知ってる!! これあれでしょ!? おかんの好きなお菓子が分からないって奴でしょ!?」

「パクリ漫才つまんない!!」

 俺らは今、近くの児童センターに来ていた、観客は全てクソガキだ!! なるほど、先生、あんた、ある意味路上ライブよりきついシチュエーションを考えてくれたよ、そう、子どもと言うのは大人の何倍も残酷で正直だ。つまらないものであれば、見向きもしないどころか、騒ぎ立てる、聞いてくれない、ものを投げつけてくる、そんな愚行の数々を平気でしてくる。無慈悲にもほどがある。

先生、あんたは鬼ですか? と思って先生の方を見ると、先生は感心してるぞ、と言う風に腕を組みながらうん、うん、と頷いている、なに師匠みたいな雰囲気漂わせてんだよ!!!

 ちょっと待て、ていうか、なんで酒をもってきてんだ!? おい、飲み始めんな!! 子どもの前だぞ。と思っていると一人の男の子が、トテトテ、と近づいてきた。

「おにいさんたちの漫才、面白かった」と笑顔を向けてそう言った。

「そうか、そうかぁ、面白かったかぁ」涼盛は感極まって泣きそうになっている。どうやら、子どもたちの反応がそうとうダメージを食らっていたらしい。

「え? あれただのパクリじゃん!!」と再び子どもたちの野次が飛ぶ。また、涼盛や俺にダメージが食らう展開か? と思ったが、駆け寄ってきた男の子は、ちょっと、何言ってるかわからないと言う風に首をかしげて「うーん、僕、その、テレビ、見させられていないからわからない」と困ったように言った。

 俺は、その言葉に妙な違和感を覚えた。テレビを見ていない、じゃなくて、見させられていない? どういうことだ? と思ったが、もしかしたら家族のプライベートにかかわる問題かと思い聞けないでいると「なんや、自分、テレビ見とらんのか?」と涼盛が聞いてきた

 こいつ、よく聞けるな、と思っていると男の子は俯いて「うん、僕が、いい子にしていないから、テレビは見させられないんだって」と言った。

「良い子じゃないってどう言うことや?」

「うーん、テスト、五教科全部を百点にできなかったからテレビ禁止させられた」と言った。

 周りの子どもたちはそんな男の子を「え!? まじで!? おい、みんなこいつんちテレビ見させられないんだったよ!!」「え!? こいつんち、貧乏なんじゃねえの!?」「だから見れないんだ!! かわいそー!!」「あわれ!! あわれ!!」

 ……子どもと言うのは残酷だ、自分の意思に思い切り従う、その割には、変に空気を読んで周りに合わせる所だけは一丁前に大人びている、変な奴を見たらあからさまに嫌な態度をとるし、虐めたり、変な噂を立たせる、自分たちが面白いと思ったことが、いや、周りが面白いと言ったものが全て正義だ、それ以外で好きなものを見つけたら、出る杭は打たれる、たちまち変人扱い、自分たちが普通だと思っている。

だから、俺は子どもと言うのがこの世で最も嫌いだ。

「やめなさい」俺がそう考えていると、先生が子どもたちを窘めていた。

「それぞれ家庭の事情があるんだ、お前たちが自由にテレビを見ている人がいると思えば、そうじゃなくてテレビを見ないように節約する人もいる、それぞれ色々かかえているんだ、お前たちも能天気に過ごしているわけではないだろう?」と先生の窘めの言葉を子どもたちはどう受け止めたか、決まっている「はーい、ねーあっちいこうぜー」「ここつまんなーい」と何の心に響かずに去っていった。もう一つ俺が子どもが嫌いな理由、反省しない、これも追加だな。

 すると、先生は、はぁ、とため息をついて「どうだった?」と笑顔を向けた。

「はい、すごく厳しかったであります!!!」なんで軍人みたいな口調で言うんだよ。

「まあ、子どもっていうのは案外お笑いに関しては結構耳が速い所があるっていうのは分かっていましたが、まあ、反応は予想通りです」と俺は余裕ですと言うような態度をとったが、メンタルは予想以上にボロボロだった。

 すると先生は意地が悪く口を手で押さえて「クックック」と笑い出した。

「そうだろう、そうだろう、まあ、子どもは正直だからな、面白い時は思いっきり笑い出す、つまらないものは、思いっきり白ける、それが子どもだからな、まあ、お前たちにはこういう経験は速めに必要だとおもってな」と先生は言葉を終えると、俺たちに駆け寄ってきた男の子に向かって「どうだった? お兄さんたちの漫才、面白かったか?」と目線を合わせるためにしゃがんで尋ねると、男の子は「うん!! すっごく面白かった!!」と喜んで言った。

「そうかそうか、面白かったか」と先生も笑みを浮かべて男の子の頭をポンッと撫でた。 

 すると、男の子は「あ、もう時間だ」と言った。 

 その言葉が初めは男の子が帰る時間だと思った。しかし違うことをしる。

「おおい!! 譲二!! 何やっているんだ!!」突然怒鳴り声が聞こえたので何だとおもって声のした方向を向く。すると、そこには、髭をたくわえた。ほぼ白いシャツと、ぼろぼろの革ズボン、もう何か月も洗っていないように見えるものを着ている太った男が立っていた。

「お、お父さ」と譲二と呼ばれた男の子はそう言って震えている。

「帰るぞ」男はぶっきらぼうにそう言って、乱暴に男の子に近づいて、手をひったくるように掴んで立ち去ろうとした。

「随分と乱暴に子どもの手をとるじゃないか」先生がそう言うと、男は振り返った。

「なんだ、あんたには関係ないだろ」

「そうだな、でも、関係ないから関わっちゃいけないって決まりは無い、そうは思わないか?」

 先生は明らかに男を挑発をしているようだ。だが、男は挑発には乗らず、下らないと一蹴するように、先生を睨みつけて、その場を立ち去った。

だが、「さてと、帰るか」と先生が言ったので俺は思案をやめて時計を見る、もう七時となっていた。

「じゃあこれからのお前らの課題な、まずはネタ作り、そして、ツッコミとボケの声の出し方だ、じゃあ、解散だ」と言うと俺たちはその場で解散した。


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