消化器の扱いは注意が必要
「うわぁ、なんやあれ、もうめちゃくちゃ人数おるやんけ」涼盛の前には、黒服の男たち、時おり、上半身はだかで、バットを持ったスキンヘッドの男などが波のようにマンションに押し寄せていた。
「こんなんどうしようもないやろ」と言っていると、「はーい、ストップストップ」とあけすけに明るくとぼけたような女の人の声がした。その女の人は長い黒髪、そしてヘアピンをしていた。
「な、綾子先生やないか!!」と涼盛は驚いた。
「おい、なんだ女、わしらはここに用があるんじゃ、女だからって優しくすると思ってんのか!? おお!!??」とスキンヘッドの男が先生を脅す。すると、先生は少し困ったような顔をして、ぽりぽりと頬を掻いた。
「い、いやあ、そのぉ、ね? 私もこのマンションの住人に用がありましてね」と何やらごもごも言っていると「ええからどけや!!」と言って、先生を突き飛ばした、すると、先生は、よろめいたかと思うとマンションの石でできた壁に思いっきりぶつかり、なんと頭から血をだした。
(えええええええええ!!??)涼盛が驚いていると、先生が「ああ、痛い、痛いわぁこれもう脳梗塞になったかもなぁ、慰謝料、慰謝料が欲しい」と先生は頭を押さえて痛がっているような態度をとる。
「んなわけあるかぁ!? 自分からいったやないかぁ!!大体、脳梗塞って外部の傷からなるもんちゃうやろが!! ええから、どけや!!」とスキンヘッドが構わず行こうとするとガシッと先生がすそを掴んだ。
「なんや、はなせやごらぁ!!」
「いや、ちょっと話を聞くだけだから、時間とらせないから、ね? ね? 話を聞くだけだから」と今度は下手くそな接客業、若しくはポンコツ詐欺師のような態度をとった。
もうスキンヘッドは何も言わずに黒服に向かって顎をしゃくり上げた
黒服は頷き、先生を引き離した。
「あ、まって!!」と先生が難なく男たちの取り押さえから抜け出したときに、「火事だー!!
火事が起こった!!」とマンションの住人たちが、出てきた。
「なんやこれ、会長たちは一体に何をしたんや!?」と言って涼盛はマンションの見上げる。
すると、七階に煙が出ているのが見えた。
少し前、「はい、そうです、はい」そう言って会長は電話を切った。手には先ほど、上につけてあったのを回収した遠隔盗聴器をもっていた。
「これで、警察と消防車、救急車をよんだ、それで、何をはじめるつもりなんだ?」
「これを使うんですよ」と俺は手に消火器を持った。
「まさか、貴方」
「はい、そのまさかです」と俺は次の瞬間、消火器を解き放った。勢いよく噴き出した白い煙はたちまち辺りを包み込んだ。そして、とどめの一発「火事だー!! 火事が起きたぞー!!!!」と人生で一番大きな声で叫んだ。
すると、「なんだって!?」と部屋から譲二と春香が出てきた。よし、ビンゴだ!! と思っていると「あれ? あなたたち、さっきの」と春香が俺たちを指さす。
すぐに会長が「今すぐ逃げてください、火事ではありません、貴方たちを追う借金とりの人たちがここに来ているんです!!」その言葉に二人とも顔を青ざめた。
「え? 嘘でしょ? なんで?」と混乱している今がチャンスだと思い、俺は消火器を部屋の中に持っていき煙をまき散らした。そうこうしている内に隣の住人たちが何だ? と言い飛び出してきた。
「な、何が起きたんですか!?」
「はい、火事が起きました、今すぐ逃げてください!!」
「ええ!?」とそんなやり取りをして、住人が少しずつ、声をかけて増やして出てきた。
そして、やがて雪崩のようにどんどん非常階段を下りていく。
「貴方たちも」と副会長の言葉に二人とも頷き、住人にまぎれて下りて行った。
その頃、キュオオオオオオ、キュオオオオオオ、ピーポー、ピーポー、と救急車とパトカーがマンションの元に着こうとしていた。
「まずい!! サツがきたぞ!!」と言って、男たちはたちまちその場から逃げ出した。
「うーん、あいつら、何かやったな?」先生はそう言ってにやりと笑った。




