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俺たちの慈悲無き漫才ライフ  作者: 宇豪野 衆
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プロローグ

小学三年生の時、その日、俺、宮城 洋一は大変困っていた。周りからは「やーれ」「やーれ」「やーれ」とコールが鳴りやまない、いっそ、そのままソーラン節でも踊ってしまおうか。と思ってしまうほどだった。なぜ、こんなことになってしまったのか。



「みんなでお別れ会をしましょう」その日、クラスから他の県に転校する子が現れた。それに対して先生がお別れ会を開きましょうといった。

 お別れ会、俺の中ではこのお別れ会と言うものが初めてだったのでどういうものか知らなかった、が、みんなの椅子を囲んで、フルーツバスケット、椅子取りゲーム、なんてゲームをする、まず女子が俺をさけて移動する。


近づくものならこの世の醜悪を見るような顔で必死で避ける、フルーツバスケットで隣になったら、「邪魔!!」と言われるのは目に見えている。その位俺は女子に嫌われている自信がある。俺と隣の席になった時、女子全体が、かわいそう、と言う声が聞こえてくるし、それをなだめる男子も俺のほうをチラチラみながら明らかに、下手くそな芸を仕込まれた猿をみるようなバカにする目でみてくる。俺が気持ち悪いとされる理由はいくつかあった。


まず、他の奴が普通に出来ることが出来ないのだ。

針を通すこともできずに、一時間を使ってしまい、しまいには、クラスメイトから借りた針通しを壊してしまい、先生に怒られるほどである。そして、交換日記、こんなことをやってた時期もあった。その時、好きな言葉は? て言う枠があるが、普通みんなは、心に残った名言『あきらめなければ夢はかなう』とか『一生懸命』とか吐き気がするほど当たり障りのないことをかけばよかったんだ。

しかし、俺は『マグネット』、当然、見た人は頭は、はてなでいっぱいになるほどだった。他にも、なぜか紙芝居でダムのようすを描くのに、花畑をかいたことでグループのみんなから避難されて、先生に土下座させられたり、絵があまりにも下手くそで先生にみんなの前で悪い例として、引き合いにだされ怒られたり、植物の世話が出来ず、唯一クラスで枯らせてしまい、先生に怒られたり、そんなことがあって、俺はみんなから、あいつは変わっている、ふれちゃいけない存在とされた。

あれ? こうしてみると先生かなり俺の人生に干渉して来てない? 先生、ダムの時、花畑の絵を褒めてくれませんでしたか? 先生、わざわざ絵が下手くそだからと言ってみんなの前に晒す必要ありましたか? 先生、と、まあこんな感じで俺は先生と言う存在がかなり苦手なのだ、いや、最早、恨みを持っていると言っても良い。

因みに男子とはどういう付き合い方をしているかって? 言うな、これをよんでいる男性諸君なら分かるはずだ、やることなすこと訳が分からない、劣等生、何の特技も無い、もちろん運動はどんくさく、頭も悪い、特別な趣味もない、こんな人間はどう学校と言うコミュニティに関わるか。


それは、いじられキャラだ。

とにかく、バカにされること、これが俺の社会を生きていくための処世術だった。

 俺がなんか変なことをやっていると、クラスのカースト高い陽キャラが俺をいじり、周りに「こいつ、変だよな?」と煽る、もちろん周りはそんな俺を見て、「だな、変だよな」と益々煽って来る。それに女子が気持ち悪いというような顔をしている。

肝心の俺? 決まっている、それを嬉しがるようにへらへら笑っているのだ。笑いすぎて時々、涙が出てくるが、そんなことはどうでも良い、とにかく、どれだけ嘲笑されようと軽蔑の目が襲って来ようと俺はへらへら笑っていればいいのだ。

そんな俺が今回のこのお別れ会に、とても嫌な予感がしている。この宮城 洋一の勘がそう言っている。そしてその予感は当たる。

担任の先生が口を開いた。

「では、その時、出席番号1~31番の子まで、何か一発芸をしてくださ~い」

 は? 俺は耳を疑った。なにが? なんだって? 一発芸? 何の特技も無い俺が? 一発芸? おいおい、これは何かの冗談か? 俺はもちろん戸惑う、その時、クラスの女子は「あの時の練習、やっと報われるね~」と言っているのを見た。

 読めた、このイベントにはイカサマが仕組まれている。

 どういうことか、つまり、これはさっきの女子たちのようにあらかじめこの日の為に自分たちの芸を練習しているものたちによるものなのである。俺以外に困っている奴が見当たらない、みんな、何か練習をしていた、踊り、マジック、占い? 等々、今回のイベントはこういった奴らの出来レースなのだ。俺は恨みに恨みぬいた、先生、あんた、こういうやり方しか考えられないのかい? いつだって、先生と言う者が俺の人生に壁として立ちはだかっている、このことを俺は再確認した。そして、お別れ会の時がやって来た。

 みんな、ダンスだったり、マジックだったり、中には漫才なんてやるやつなんていた。その他でも落語をやる奴もいた。みんな笑っていたが、俺はその間全く笑うことが出来なかった。自分の番が近づくたびに胃がキリキリ痛み出した。

 そして、とうとう「次、宮城くん」となんの気を遣わずに担任教師は呑気な声で俺を指名する。

 終わった、俺はそう思った。俺は輪の真ん中に立つ。ただ立っているだけなのになんてプレッシャーなんだ、おしつぶされそうだ、ていうかこれは何だ? 俺は何か悪いことしたか? 存在が罪? そう言われているのか? もう、クラスメイトの顔がコーヒーカップを全速力で回されるようにグワングワン視線が揺らぐ。

 そのうち、「おい、あいつ、何でなんにもしねぇんだ?」と男の子の声がして「てかさ、さっさとしてほしいんだけど、キモイから」と女の子の声がする、。

「なんでやらないの?」「てか、はやくしてくれよ」「みんな困ってるじゃん」「うわぁ、あいつ吐くんじゃね?」「てか、あいつ何か出来ることあんの?」「ないでしょ、ないない、あいつ、いつも机の上で突っ伏してるんだぜ?」「ああ、ドッヂボール誘った時も動きがきもかったわ」「もう、さっさとしてほしいんだけど」「こんなのに時間とられたくないんだけど」「みんな、やめてあげてよ、かわいそうだよ、こんななんにもできない奴が芸だなんて」クラスメイトたちの声が頭の中でこだます。この会はお別れ会と見せかけて、俺をつるし上げる会なのかとも疑った。証拠に先生は何にもしてくれない、クラスメイトの声なんて聞こえていないのだろうか、相変わらず、大丈夫、君でも出来ると言うような快活の押し売りのような笑顔をこっちに向けている。もういい、もうやめてくれ、わかった、俺が悪かった。もう、止めてくれ。

「やーれ、やーれ」不意に男の子のコールが聞こえてきた。

「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」「やーれ」

 気付けばクラス中がそのコールに包まれていた。

 分かった、全てが分かった、俺が悪かった、俺が、ごめん、俺が、気付かない所でお前らを不快な思いにさせていたんだろ? 正直なにがそんなに気に入らないのかわからないけど、顔か? それとも性格か? 行動か? 運動が出来ない所か? 頭が悪い所か? 手が不器用な所か? 全部??? 分かった、もうわかった、俺が悪かった。

 そう思うと、不意に目に水が溜まって来た。

「あれ? あいつ、泣いてね?」一人の、もう、男の子か女の子かもわからなかったけど、そんなこと言う奴がいた。もうどうでも良かった。

「うわ、泣いてるよ」「キンモ」「てか、自分が悪いんじゃん」「うわー」「やっちまったわー」「てか、このクラスで泣いたのあいつが初めてじゃね?」「きもいきもいきもい」「ありえな」

「男じゃねえな!!」「ギャハハハハハ!!」

 ありがとう教えてくれて、もう俺は学校に来ない。俺は、端っこで独りで細々と暮らして、誰にも目につかない所でひっそり生きて、そして、死んでいくから。

 俺は、俺は、教室から出て行こうとした。

 その時、「やめろよお前ら!! 洋一が困ってるじゃねえか!!」と声がした。

 そこには長身で、髪を上げている男の子がいた。たしか、俺とは違う、クラスの問題児、ケンカばかりしていた。

名前は、たしか……


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