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第零話「序幕」
「――あなたの一番大切なものはなんですか?」
†
『魔法』――・・・
それは、御伽の世界にのみ現れる不思議な力。人の夢を叶え、希望も絶望も生み出す全能の力。
空想でのみ存在したその力を、人間は長き年月を経て現実のものとした。
同時に、気づいたのであった。
本来、『魔法』と対となるはずであった力、『科学』の限界点こそ、人々が夢見続けてきた『魔法』の正体なのであると。
やがて、時は流れ――
御伽の世界の『魔法使い』は、科学の力によって“創られる存在”となっていた。
彼らは人智を超えた力を持った『兵器』として、当然のように戦い、傷つけ、傷つき、殺し、そして死んでいった。
「人が手にすれば、どんなものでも『兵器』に変わる。夢の力であった『魔法』も、それを使う『魔法使い』も」
「……それなら壊すしかないね。全てをさ」
†
方舟から、一羽の鴉が放たれた。
唄を護るため、虹の橋をかけるため、世界の全てを壊すため、新たな世界を創るため――?
「本当に……そうなの?」
「あなたは、なんのために戦っているの?」