時の流れはひたすら残酷に
この世界では15歳の春に成人式が行われる。それと同時に僕達孤児院の子供たちも子供から大人になる。つまるところ卒業ってことだ。僕は魔法学校にいる間に10個の魔法論と、50のオリジナル魔法を開発した。
「魔法学校中等部3年主席ロア。卒業おめでとう。卒業後の君の活躍に期待する」
「ありがとうございます」
僕はこうして魔法学校を卒業した。
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僕は今でも成人式のことを嫌なぐらい覚えている。
僕が全て…………だから。
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「この国に帰って来るのはいつぶりだろうか」
僕のこの問いに対して回答してくれる人はいない。今僕の後ろにいるのは全て魔物だ。 僕は今25歳ぐらいだったと思う。僕は自分の正確な年齢を覚えていない。僕は10年前に大切な人を全て失った。
それは、突然の出来事だった。
僕らが住んでた国は他国と戦争をしていた。この世界ではすごくありきたりのものだけど、当時の僕には凄い悲劇に感じたんだ。だって僕らは戦争に駆り出されたんだから。
戦争は酷いものだ。
僕の習ってきたもんは意味がないのだから。
僕の大切な人を数日で全て奪って言った。
最初はシルの死亡報告を風の噂で聞いた。
僕のシルはお人好しだから長くは生きられないとは思っていた。正直それでもあんまりだと思った。いつ僕らが悪いことをしたんだって思った。シルは市民をかばって死んだと聞いた。やっぱりシルらしい死に方だと僕は今なら思える。僕はシルに一度も好きだって伝えれていなかったのに。正直告白したとしても成功するとは思えなかったけれど。
僕らは魔法は習ってきたが戦争で人を殺す方法を習ってきている人は一人もいなかった。シルの次はポーラ、ルート、ターザ先生、ブレス博士、他の同級生という具合にどんどんと僕の知り合いは……大切な人たちは僕の手が届かないどこかへ消えていった。
僕は最後まで生き残ってしまった。
敗戦国の兵士の未来なんて知れている。【奴隷】か【処刑】だ。
僕は鉱山奴隷にされた。鉱山奴隷は毎日鉱物を掘っていく道具だ。
道具は結局消耗品でしかない。使い潰されて、ゴミみたいに捨てられるんだから。ただ、僕ら鉱山奴隷も結局は人だ。会話はするし仲良くだってなる。
僕が鉱山奴隷として2ヶ月たった頃だった。
僕が仲良かった人が鉱山内の落盤で死んだ。
僕はまた、簡単に失った。
(命ってこんなに軽いものなのか・・・・・。なら、僕の命も軽いんだ)
僕は間違いなく狂っていた。
僕はダイナマイトで自殺を謀った。だが、失敗した。僕の自殺する為に作ったダイナマイトは僕自身を殺すほどの火力が無かった。僕は死ななかった。ダイナマイトなんて使用すれば鉱山なんだから落盤も起きた。また、僕だけが生きていた。多分だが、僕の魔力質が原因なんだろうってすぐに分かった。
僕は周りに本当に誰もいなくて寂しいって思った。
正直絶望していたんだ。
だから僕は脱走した。
魔の森に・・・・。
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僕の目の前には執事服を着た男の吸血鬼がいる。
「魔王様。そろそろ国に戻りましょう」
「ああ、戻るか」
僕はそう言って、育った国に背を向けた。
(シル、ルート、ポーラ、君たちにまた会いに来る。僕はまだそっちには行けそうにない。許してくれ)