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国は裕福では無いけれど

 僕らの国は孤児院を作って小さい子供の最低限の生活を保障するぐらいには豊かだ。けれど、この国で貧乏な人を探すのと裕福な人を探すのでは裕福な人を探すことの方が難しいだろう。それはそうだとしか言えないと思う。

 

 だって貧乏だから僕達は捨てられたんだから。

 

 様々な理由があると思う。

 

 もしかしたら違うかもしれない。


 やむを得ない理由があったかもしれない。

 

 けどね、理由なんてどうでもいいんだ。だって結局捨てられたことに変わりはなく、捨てたことにも変わりはないのだから。僕らは親を許せないのだから。けれど僕はこの国の良いところを知っている。貧乏でも読み書きは習えるし、魔法学校にも8歳から通えるのだから。

 つまり僕も来年から通い始める。

 僕は8歳になった。

 つまり魔法学校に通い始める年だ。

 僕の育った孤児院は山の方だったから人が全然いなかった。だから学校って聞くと少しワクワクする。

 明日が入学式だから今日は学校まで移動するための移動日になる。

 なんて言ったって全寮制だから。

 

 だから当然・・・いる。

 

 「俺の名前はルートだ!よろしく!」

  

 ルームメイトがいる。

 校長の挨拶が終わり一年生は魔力測定を行う。

 この世に魔力を持ってない人はいない。だから測定といっても測定器に手をかざして色の変化で魔力の質をみるんだ。魔力の質がいい人程明るい色になる。少ない人は変化が乏しい。質が悪いと暗い色になる。だからと言って魔法が使えない訳ではない。質は生まれついてのものだけど量は鍛えると改善できる。

 デフォルトの色はグレーだ。

 ちなみに測定は席順だったから僕の出番はかなり後だ。僕の席は廊下側の先頭で僕の隣の席にシルが座っている。シル後ろはルートの席だ。

 

 名前も知らないクラスメイトを眺めてしばらくするとシルの出番が来た。

 「はい次。君は?」「シルです」

 遠くからシルと先生のやり取りが聞こえる。

 「では、手を測定器にかざしてください」

 予定調和だなー。

 「色は?」「ミントグリーンです」

 「良い色だな」「ありがとうございます」

 先生が驚いている。

 どうやらシルは魔力の質がいいみたいだった。

 嬉しそうにこっちに向かってきている。

 「ロアー何色だったでしょう?」

 シルがニコニコしながら質問してくる。

 先生の反応は良かったから良い色なのは間違いないだろう。 

 「青竹色?」

 「正解はミントグリーン」

 ミントグリーンかー。

 僕も明るい色がいいなー。それにしても笑顔のシル可愛いな。


 おっと、ルームメイトのルート君もこっちに向かって来ている。

 「ローーアーー」

 声がでかいなー。テンション高いなー。

 「俺の色何だったと思う?」

 ちょっとボケてみることにする。

 「グレー」

 「変化してねーじゃん」

 キレが悪かったかな?

 「紫か?」

 「おしいけど違-----う!」

 うるさいなぁー。

 「何色なの?」

 「黄色」

 ルートも良い色かー。

 ルートで良い色なら僕も良い色だろうな。


 少しおいて僕の出番が来た。

 「はい次・・・」「ロアです」

 僕は先生とのやりとりが面倒なので言われる前に手をかざす。

 僕がてをかざすと色は黒くなった。

 「色は?」「黒です」

 黒かー。ん⁉黒?どういうことだ。僕は見間違えたのだろうか?

 「ん?もう一回言ってみろ」「黒です」

 先生も驚いているらしい。

 だって黒だもんなー。

 測定器はデフォルトから明るい色には変化することが多い。暗い色の人は(まれ)だ。黒だから僕の色は質が悪いってことになる。色の中で一番暗い色だし。細分化すると更に暗い色はあるんだけどパッと見て黒は黒だ。ここまでくれば最早暗いって言っても誤差の範囲だ。


 僕は測定が終わったので取り敢えずシル達の方へ行った。よく見るとシルとルートともう一人いる。

 「色何だったと思う」

 二人に質問した。

 「赤」「茶色!」

 どうやら二人は良い色ではないのを聞いてはいたみたいだ。だけど・・・。

 「違う。黒」

 「「ん?」」

 どうやら黒だとは思はなかったみたいだ。

 というか君たちいつから仲良くなったんだ。

 まあ、それはいいか。

 「シル。そこにいる子は?」

 「この子はポーラ。ルームメイト」

 シルに紹介されたポーラは僕の前でおどおどしてた。

 「僕の名前はロア。よろしく」

 「わ、私の名前はポーラです」

 ありきたりな挨拶をした。

 「魔力測定全員終了。各自解散ー」

 先生の合図と共に僕らは寮に帰った。

♦ 

 翌日。

 「ロア。放課後職員室に来てくれないか?」

 先生に呼ばれた。

 しかもこの先生、僕のクラスの担任だし。

 確か名前がターザ。性別男。未婚28歳だ。

 面倒ごとは嫌いなんだよなー。


 放課後になって職員室に行くと先生が話しかけてきた。

 「ロア。論文でプラスの魔力質とマイナスの魔力質について発表されたことを知っているか?」

 「初めて聞きましたよ」

 僕はプラスとかマイナスとか言われても良くわからないんだが。

 孤児で知れる情報なんて限りある。ただ、その話は興味ある。先生に質問することにした。

 「だろうなー。その論文が発表されたのは昨日なんだけ・・・・」「先生!その話僕に詳しく教えてください」

 先生は分かったと言って僕に論文のことを教えてくれた。

 どうやら、論文の内容が正しければ明るい魔力はプラスの魔力。暗い魔力はマイナスということみたいだ。

 「先生。プラスとマイナスでは違いがあるんですか?」

 「当然ある」

 先生が答えてくれたことをまとめる。

 

 【プラスの魔力は整えることに長けている】

 【マイナスの魔力は乱すことに長けている】

 【ただし、どちらの魔力も魔法の分野ごとに性能差は出るがどの分野でもプラス・マイナス関係なく行使可能】

 大体こんな感じのことを言っていた。

 「どうだロア?マイナスの魔力だからって気にするなよ」

 「ターザ先生、良い話ありがとうございました」

 いいことを聞けた。面倒ごとだと思ってごめん先生。


 この黒い魔力も捨てたものじゃないな。

 一つ聞き忘れていたんだが、魔力質の論文書いた人は誰なんだろう?

 まあ、誰が書いたとかどうでもいいか。

 ここはガイア王国魔法研究所。

 「王国孤児院から魔法の逸材が二人も出たそうではないかターザ先生」

 「ブレス博士。ちょっかいはかけないでくださいよ」

 僕の平穏は、僕の知らない場所で終わろうとしていた。

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