始まりは
好きな人と一緒にいたい。
人なら誰しもそう思うだろう。
「好きだったんだけどな」
口から零れるのは後悔ばかり。
昔から僕は普通ではなかった。
具体的には魔力が大きかった。
それだけだったならまだ良かったんだ。
僕は昔から※※の言葉を話せた。そして、決定的に普通とは違う事があった。
僕は※※に生まれてきてから一度も襲われたことがないんだ。
正直これは普通に生活していたら知らなくていいことだった。
だってそうだろ、普通に生活できていたのなら※※を見ることだってほとんどないんだから。
だから気付けなかった。
普通ではないことに・・・。
♦
僕には両親がいない。だから僕は山の近くの孤児院で育てられた。
その孤児院には10人の子供がいた。
両親のいない僕には名前が無かったんだってシスターに教えられた。
だけど他の子供たちにはしっかりと名前があったんだ。
ただ、僕はそれでもよかった。皆がそんなことでは除け者にしなかったから。そして子供たちから名前をもらったから。ロアという名前をもらったから。
孤児院の子供たちの中にはリーダーがいた。
名前はシル。
7歳の女の子だ。
僕の好きな子だ。
性格はお人好しだった。
そして髪の毛は特徴的な青い髪だから人混みの中でも見つけやすいと思う。まあ、孤児院が人混みになったら一大事だが。
僕とシルは同い年ぐらいだと思う。僕は正確な自分の誕生日が分からないし、僕は赤ん坊の頃に魔物の森に捨てられていたから。
♦
僕らは基本的な生活は国で守られているので苦労がない。だがお腹いっぱいに食べるには少し食料が足りないのでよく森などに調達に行く。勿論、魔物とかが出ないって保証されているところにしか行かない。
僕とシルはいつもと同じように小さい子たちを連れて山で山菜採りをしていた。
キノコ食べたいなー。
そんなこと思っていたらシルが声をかけてきた。
「ロア・・毒キノコには気を付けてね」
どうやら僕は心配されていたらしい。
やっぱりシルはお人好しだなーって思った。だから安心させようと思っていった。
「大丈夫だよ。シル」
少し見栄も混じっていたかも知れないけど安心させれたかな?
ただ、それを聞いたシルは信頼するように僕の方を一瞥して他の子にどのキノコが食べられるかなどを丁寧に説明していた。
シルは本を読むことが好きだ。だからよく図書館に行って図鑑などを読んでいる。だけど決まって僕のことも図書館に連れて行く。何でなのかはよくわからない。まあ、いつも助けられているから僕は黙ってついていくんだけれど。
そんなことを考えながら山菜を取っていたら気が付いたら籠の中がキノコでいっぱいになっていた。これではキノコばかりで山菜採りではなくキノコ狩りである。そんなことを考えていたらシルが近づいてきて僕の籠を見た。
「ロア」
「何?」
これから言われることが容易に想像できてしまう。
「タケノコとか他のも採って」
ああ、やっぱり言われた。ちょっと嫌な気分だ。けど、とりあえずシルには嫌われたくないので苦い顔をしないで分かったと返事をしておこうとすると・・・
[何その顔、不満があるの?]
どうやら意識していたが顔には出ていたらしい。
「ちょうど僕もそのことを考えていたから言われたくなかった」
シルは申し訳なさそうな顔をして言った。
「ロア、ごめんね」
「シルは、やっぱりお人好しだね。謝んなくていいのに」
(むしろ僕が謝るべきなのに)
シルはいつもそうだ。何でもかんでも相手の思いを汲み取りすぎている。もっと我儘になっていいのに。色々考えたがやっぱり僕も謝るべきだろう。
「僕も注意してくれたのに嫌な顔してごめん」
「いいよ、許すよ」
シルは器がでかいなぁ。僕はある意味逆ギレしていただけなのに僕のことを許してくれた。まあ、そうでなければ最初から謝らないよな。
あーだこーだしながら僕たちは山菜採りを終えた。