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宝クジを買う老人

作者: 久賀 広一

ワシは、狂ってなどおらん。


たとえそれが、「貧乏人ほど、宝クジを購入してる率が高い。プアー・ルーティンだ」とか、「北海道につまようじを落として、それが全道のどこかにいる自分に当たるぐらいの低確率である」とか言われてもな。


それでもワシは、くじを買い続けるんじゃよ。


なぜか?

まず第一に、あれはよくできておる。


ある日とつぜん思い立ったとして、「ジャンボ」をお主が購入したとするわな?


そして外れる。

もちろん、当たりかもしれんし、自分で当落を調べることもできるが、万一の見落としがあってはいかん。


そこは店頭に出向き、機械で点検してもらう。

少額の当選は必ずあるし、まあ、その払い戻しであちらも客を逃がそうとしないわけじゃがな。


……そこでお主は、店先でまた気づく。

「あれ? もう次のクジが売られてるのか」


1枚200円の地域クジ……

一等が3000万程度か。……まあ、ついでだから買っておこう。


それで、しばらくして当選確認に行ったら、もう次の「ジャンボ」じゃ。


特に今は、ハロウィンだのオータムだのと、いくらでもクジがジャンボ化しよる時代じゃ。

(ロトなどは、いったいいくつまで数字が増える?)


「ーーまた来たか。俺はタイミングが良い男」と、次々と流れるように買っていっても仕方のないことじゃろう。


……。

しかしまあ、ワシがくじを買い続ける理由は、二つ目の方が大きいじゃろうな。


どんなに「宝クジの収益金は、公共のバスや車イスの購入に使われていますよ!」と叫ばれたって、その運用組織の上部は相当な金額を給与として猫ババっているであろう。


……おっと。これは邪推が過ぎたな。

そんな天下りみたいなおいしいポストがあれば、取り合いになってすぐ問題が暴露されるであろう。


とにかくまあ、二つ目の理由である。


皆も一度は、考えたことがあるじゃろう。


「誰の子供に産まれるかで、人生があまりに違いすぎる」と。


医者の子供は医者に、政治家の子供は政治家になりやすい。

正確な統計がどうかは知らんが、まあ男医者の場合だと、よほどアッパッパな女と結婚しなければ(学力は、主に女性のものが子供に反映されやすいらしいからの)、大抵は知的な息子として育つであろう。


異論はめちゃくちゃあるじゃろうが、まあそこはそれ。

とにかくワシは、「宝クジをよく買う親」という因果を、この世に残しておるんじゃよ。


ワシの子、そして孫もクジを買い続けるとする。

「北海道に落ちたつまようじが、旅行中のワシのひ孫に当たった!」

というような具合で、いつか幸運が訪れるかもしれん、と思っておるんじゃな。


人生は一度きりだと、大抵の人は言う。


しかしそれは間違っている。

誰からどう見ても「上がり」ではない人間は、何度でも前世の罪と善功を背負いながら、また生きることになるんじゃな。


だから、ことさら死を恐れる必要はない。

ごくまれな聖人君子以外は、みんなまたやり直しじゃ。


……ただ、前世の功績によって「親」と「能力」、「生まれてくる地域」なんかは違ってくるから、間違ってもあきらめて暴走するような人生を送るなよ?


ちょっとずつでも、積み重ねはきちんと反映されて美人や美男に産まれるのじゃ。


……だいぶ話がずれたが、まあワシは、今の自分のためだけには宝クジを買っていない、ということじゃな。


子や孫でもいい。

生まれ変わった自分でも。


大金を手にして幸せになれるかどうかは別問題じゃが、まあ、降って湧いた幸運を想像しながら生きるだけでも、なかなか楽しいしの。


晩年、当たらない宝クジに切れて、販売女性を切りつけ……!


などということにはならんよう、お茶でもすすりながら吉報を待っておるよ。


ーー今日も、妻は台所に立ち、ワシは縁側で新聞を広げている。

「おっ、かあさん。また、200万円当たったみたいじゃよ」。


……実はワシは、一等以外ならけっこう当たっておるんじゃよ。


ひょほほ。

ーーではさらばじゃ!













ちなみに、「上がり」の人物は生まれ変わって何になるのかと言えば、僕は勝手に、”美しい風景” ”誰にとっても、ほんのりと幸福を感じられるような何か”になればいいなあ……と思っています。


まあ、すべて仮定の話ですけどね。


いつもながら、強引な話にお付き合い、有り難うございました!

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