第14話 炭鉱の攻防
ご覧いただきありがとうございます。
作品中に残酷な描写が出てきます。苦手な方はご遠慮ください。
気づいたときに、誤字脱字の修正、言い回しの修正、言葉足らずな部分の加筆などを行っています。
基本的なストーリーの変更はありません。
第14話 炭鉱の攻防
太陽が南中に差し掛かり強い日差しが照り付けていた。雲はなく太陽から身を隠す場所もなかった。地面は木や草が少なく、その代わり石や岩が多くあって、ごろごろして歩きにくかった。
グウィンたちは炭鉱を目指して進んでいた。馬は5頭いたが、グウィン、フドウ、オイチ、ミサトとサヤカ、ルルナとリアンが乗っていた。
ばさっ!ばさっ!ばさっ!
イチタを乗せた魔白鳥がグウィンの前に降りてきた。
「グウィン様、これより先、約半日も歩くと炭鉱があります。このままいくと到着は日が沈むころになると思います。」
イチタがグウィンに報告した。
「ワイナ!ワイナはいるか!」
と、グウィンが呼ぶと
「はい!ただいま!」
と言ってワイナが走ってグウィンの隣にやってきた。
「夜になるとドワーフはどうなる。」
グウィンはワイナに尋ねた。
「はい。暗くなる前に宿舎に入れて、脱走しないようにがっちりカギを掛けて、朝まで監禁しておくと思いますね。私たちのところはそうでした。」
ワイナが答えた。グウィンの眉間の宝珠が光り始めた。
「良し、分かった。今夜は夕月だ。月が沈む前に方を付ける。」
グウィンはそう言って、作戦を指示した。
夕日が沈み始めて、あたりが薄暗くなってきた。西の空には月がかかっていた。
炭鉱へ行くためには進入路を通らなければならなかった。進入路の両側には山の斜面があり、進入路の先には大きな石垣と門扉があった。そこから中へ入ると広場があって、周りには、司令塔、兵舎、倉庫、ドワーフの宿舎などの施設が多数並んで建っていた。
「おら!さっさと入れ!」
「まったく、どいつもこいつもぐずぐずしやがって!」
炭鉱では3000人のドワーフが奴隷として働かされていた。坑道から出てきたドワーフを兵士が槍を片手に30棟ある宿舎へそれぞれ誘導していた。
炭鉱の施設の中で一番立派なものが司令塔と呼ばれる建物であった。その司令塔の執務室にいる監督官のところへ兵士が報告にやって来た。
「監督官殿、無事全員収監しました。」
「うむ、ご苦労であった。さて、明日には交代の部隊がやってくる。一か月ぶりに我が家に帰ることができると思うとほっとする。」
と監督官は夕焼けを見ながら感慨深げに言った。
そこへ別の兵士が駆け込んできた。
「監督官殿、大変です。不審な集団が現れました。」
「なんだと?」
監督官は慌てて外へ飛び出した。
外へ出ると約250名のドワーフの集団が炭鉱目指して近づいて来るのが見えた。
「あいつらは何者だ?守備隊長はいるか!」
監督官が叫ぶと守備隊長が走ってきた。
「はい。お呼びでしょうか?」
「お呼びでしょうかじゃない!いったいどうなっている!」
「申しわけありません。謎の集団としか申し上げられませんが、万が一に備えて、全兵士を守りにつかせております。」
「そうか、分った。後は任せたぞ!わしは戻っている。」
監督官はそう言って自分の執務室の戻ろうとしたが、その時、司令塔の屋根の一番高いところに一人の猫耳の獣人がいた。
グウィンは司令塔の屋根の上で呪文を唱え始めた。すると、辺りには何やら黒い霧のようなものが漂いはじめ、グウィンの周りをぐるぐる回転し始めた。
「神の愛 天の恵み 無限の恩寵 苦役からの解放 死徒よ!今こそ永遠の安らぎをもたらせ!来たれ!死の祝福!!」
グウィンの詠唱が終わると、薄暗くなった空に漆黒の闇が現れた。その闇が回転しながらだんだん大きく空に広がっていった。
兵士たちがざわめき始めた。
「なんだ?」
「なにが起こっている?」
「怪しい呪文だ!気を付けろ!」
数名の魔道士がマジックシールドを詠唱し始めた。
「こ、これは、うわさに聞いたことがある!魔王の死の呪いだ!」
「逃げろ!!」
だがすべて遅かった。
ヒュウウウウウン!
ヒュウウウウウン!
ヒュウウウウウン!
大きく広がった闇の中から無数の黒い影が現れ、ものすごい勢いで炭鉱にいるすべての兵士たちすり抜けていった。ほんの一瞬であったが、一人残らず命が刈り取られていった。
「ふうう、終わった・・・・」
そう言うと、グウィンはふらっと倒れ、屋根から転げ落ちた。その様子を見ていたサヤカが馬を猛然と走らせグウィンのもとに駆け寄った。
「グウィン様!グウィン様!グウィン様!大丈夫ですか?」
サヤカがグウィンを抱き起こすと
「ああ、大丈夫だ。魔力を使いすぎて力が抜けた~ははは、はぁぁぁ、しばらくは立てそうもないな。」
グウィンは力なく言った。
そこへ、他の親衛隊が集まってきた。
「ワイナ!ワイナはいるか?」
グウィンはワイナを呼んだ。
「はい。ここにおります。」
「お前は、ドワーフを指揮して、宿舎のドワーフを開放しろ!」
「はい。任せてください。」
「フドウ!オイチ!イチタ!お前たちは炭鉱の周辺を警戒してくれ!」
「「「承知いたしました。」」」
「俺は少し休む・・・」
そう言うとグウィンは意識を失った。
司令塔の一室のベッドでグウィンは寝ていた。ベッドの周りにはミサト、ルルナ、リアン、サヤカがいた。ミサトは一生懸命グウィンの体を舐めてグルーミングをしていた。猫又族のグルーミングには癒しと回復効果があった。
そこへワイナが現れた。
「グウィン様のご様子はいかがですか?」
ワイナが誰に言うともなく声をかけると
「今、おやすみ中です。一気に魔力を使われたので、お疲れになったのでしょう。ところでドワーフの皆さんはどうですか?」
ミサトがグウィンの体を舐めながら応対した。
「はい。全宿舎のカギを開けました。今は全員広場に集まっております。いかがいたしましょうか?」
ワイナがミサトに尋ねた。
「そうですね。どうしましょうかね。」
ミサトがあたりを見回すと、サヤカが口を開いた。
「ドワーフの回復術は魔力も回復できると聞いているんですけど・・・優秀な術士を集めてグウィン様の魔力を回復するというのはどうですかぁ?それ以外のドワーフの人たちは・・・グウィン様がこの状態だから、今日のところはもうゆっくり休んじゃってもいいんじゃないかなぁ。」
サヤカがそう言うと、
「それは素晴らしい考えですね。ワイナさん、お願いできますか?」
と、ミサトもサヤカの意見に同意した。
「分かりました。大至急集めてきます。」
ワイナはそう言って出ていった。
しばらくして、ワイナがドワーフを引き連れて戻ってきた。
「紹介します。こちらの女性はアイノとロウヒです。こっちの男4人はレンミン、マリネン、カイネン、ハイネンと言います。見てくれは良くありませんが、優秀な術士です。任せてください。」
そう言って、ワイナと6人の術士たちはグウィンのベッドを取り囲むと、回復術を始めた。
「大丈夫ですよね?グウィン様はお目覚めになりますよね?」
サヤカが心配そうにワイナに尋ねた。
「そうだね~あとはサヤカちゃんのキスがあれば目覚めるんじゃないかい?」
ワイナがそう言うと、サヤカの頬が真っ赤になった。
「あっはっはっはっ、冗談だよ。後はおばさんたちに任せておきな!」
と、ワイナは笑いながら言うと
「私はおばさんじゃないけどね。」
ロウヒが小さな声でぼそっと言った。すると周りのドワーフから笑い声が起こり部屋の中が一気に和やかな雰囲気になった。




