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勇者de焼き肉パーティ  作者: 吾妻ゆきと
11/27

第10話 勇者(アステル)de焼き肉パーティ

残酷な描写が出てきます。苦手な方はご遠慮ください。


気づいたときに、誤字脱字の修正、言い回しの修正、言葉足らずな部分の加筆などを行っています。

基本的なストーリーの変更はありません。


第10話 勇者アステルde焼き肉パーティ


「はあはあはあはあ~早く逃げなければ、何なのだあの村は。死体が動いている。」

銅鉱山の警備隊長は一人で逃げていた。50名の部下は村から出てきた動く死体に全員噛み殺されてしまった。


バサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッバサッ


警備隊長が空を見上げると10人のガルダ族がいた。

「逃がしはしねえよ!」

警備隊長はガルダ族に抱えられて、ユリン村へ運ばれていった。


「ザラ伯爵を殺し、王国の兵士を殺したのはあなた達ね。」

アステルはグウィンを問い詰めた。そこへ生き残った村人たちが集まってきた。

「アステルさん、何か勘違いをしているようだね。私たちの村はいきなり王国に襲われ、何の罪もない人たちが大勢殺された。そこの猫又の人は私たちを助けてくださったのだよ。」

村人の一人が言った。

「し、しかし、王国が何の理由もなく村を襲うはずがない!それに私は見た。死体が動いて兵士たちを殺していた。この村には何かあるのだろう。」

アステルは納得していないようだった。


「あの、多分私のせいです。」

ルルナが口を開いた。

「ルルナさん、どういうことかね。」

村人がざわついた。

「ザラ伯爵の娘は牙狼族との戦闘で死にました。その場に私がいたので私が牙狼族と手を結んで娘を殺したと思ったようです。それから・・その後、私がザラ伯爵に銅鉱山を止めてくださいって言ったのです。そうしたら村の人たちを皆殺しにするって言いました。それで私はグウィン様と一緒に村の人たちを助けるために来たのです。」

ルルナの説明に村人たちは頷き合っていた。

「そんなはずはない。それだけの理由で皆殺しなどと。」

アステルはなおも食い下がった。

「お前はさっき死にそうだった奴か?お前を殺そうとしたのは誰なのだ?そしてお前を助けたのは誰なのだ?もう忘れたのか?」

グウィンはアステルを睨みつけた。

「いや、それは・・・(確かにザラ伯爵は私までも殺そうとした。なぜなのだ。)」

アステルは返答に窮した。


そこへガルダ族が現れた。

「この警備隊長さんが知っているぜ。」

スパーナが縄で縛った警備隊長をみんなの前に引っ張ってきた。

「おお!スパーナの姉貴!」

グウィンがそう声をかけると、

「おまえ?もしかしてグウィンか?大きくなったな。」

スパーナも嬉しそうにグウィン見たが、グウィンの成長した姿を見てスパーナの頬は一瞬ピンク色に染まった。

「ほら、さっき言ったことをもう一回ここでも言いな!」

スパーナは気を取り直して警備隊長に言った。

「ザラ伯爵は言っていました。その・・・王国は無敵だ。獣人の次はエルフを平定すると。」

警備隊長がそう言うと村人から一気に非難の声が上がった。警備隊長へ石を投げつけるものもあった。

「ま、待ってください。私はザラ伯爵に命じられてしかなくやったことなのです。どうか、どうか許してください。」

警備隊長はその場で土下座してしまった。

「そんな馬鹿な。王国とエルフとの間には相互不可侵の約束があるだろう。」

アステルが警備隊長へ言うと、

「はい、ザラ様はおっしゃいました。『それがどうしたのだ。』と。本当です。嘘じゃありません。」

警備隊長は土下座しながら答えた。

「うーむ、信じられない。」

アステルがうなっていると、その場で村の代表に選ばれたエルフが話始めた。

「我々はもうここには住めません。カナトの森へ行って長老と今後のことを相談しようと思います。そちらの人間にも一緒に来てもらい証言してもらいましょう。よろしいですか。」

警備隊長は土下座しながら頷いた。

「明日、カナトの森へ出発します。その前に亡くなった人たちを埋葬したいのですが皆さんの力を貸していただけますか。」

村の代表の言葉で村人の埋葬が始まり翌日のお昼ごろには終了した。さすがに王国兵の埋葬をしようというものはいなかった。

グウィン、ルルナ、リアンそしてスパーナはルルナの両親のお墓の前で手を合わせていた。そこへ村人とアステルと縄につながれた警備隊長がやってきた。

「グウィン様、この度は助けていただきありがとうございました。私どもはこれからカナトの森へ出発します。アステルさんも一緒に行ってくれるそうなので心強いです。何と言っても元勇者様ですから。」

村の代表が何気なく言った言葉にグウィンは思わずアステルの顔を見た。

(そうだった。こいつどこかで会ったと思っていたら、母さんを食べた勇者の一人だ!殺してやる!)

グウィンは全身が怒りに震え、アステルに飛びかかろうとしたとき、後ろからスパーナが思いきり抱き締めて抑えた。

「グウィン、やめるんだ。」

「父さんと母さんの仇だ!この場で殺す!」

「ダメだ!今はダメだ!お前の正体が皆にばれてしまう!」

「姉貴!放してくれ!」

「そんなことをしたら、お前の目的が果たせなくなるぞ!」

「目的!?」

「七色宝珠を全部取り戻すんだろ!今はその時ではない。堪えろ!」

「くうううううう」

グウィンはスパーナの腕を強く握りしめた。


「どうかしましたか。」

小声で話をしているグウィンとスパーナを不審に思った代表が尋ねた。

「何でもないです。大丈夫です。こいつもお父さんとお母さんを亡くしたばかりなので、その、辛いことを思い出しちまったみたいで。」

スパーナはその場を取り繕った。スパーナの腕からは血がしたたり落ちていた。

「姉貴!血が出ている!」

グウィンは驚いてスパーナを見た。

「ああ、それでお前が落ち着くのなら、腕の一本や二本どうってことないさ。」

スパーナの腕をつかんでいるグウィンの指先からは爪が伸びてスパーナを突き刺していた。

「す、すまない!そんなつもりじゃなかった!許してくれ!」

グウィンは慌てて爪を引っ込めた。

「ああ、分かってるよ。気にすんな。」

スパーナはグウィンの大きな背中に顔を埋めてさらに強く抱きしめた。

「それでは、我々は出発します。皆さんもお気をつけて!」

代表がそう言って歩き始めようとしたとき、

「あのーすみませんが、お願いがあります。」

銅鉱山の警備隊長がグウィンを見て思い出したように話し始めた。

「銅鉱山には約250名のドワーフの奴隷がいます。このままだと餓死してしまうかもしれません。この食糧庫のカギを渡しますので、開けていただけますか?」

警備隊長の言葉にアステルが反応した。

「待て、銅鉱山に兵はいないのか?」

「はい、今回の戦いで全滅しました。誰も残っていません。」

「そうか。」

アステルは警備隊長からカギを受け取った。


「お前たちに聞くが、もし銅鉱山へ行ったら、ドワーフをどうするつもりだ。」

アステルはグウィンに聞いた。

「当然、解放する!」

「か、解放だと!そんなことは許さない。ドワーフは王国の奴隷だ。一番近い炭鉱に連れていく。」

「ドワーフは奴隷じゃない!お前たちにドワーフの自由を奪う権利はない!」

「黙れ!ドワーフは王国がこの数十年間戦ってきた成果なのだ。王国こそドワーフを奴隷にする権利があるのだ。」

アステルは、弓を構えてグウィンに狙いを定めた。

「申し訳ありません。私はカナトの森へ行けなくなりました。皆さんで行ってください。」

アステルは村の代表に伝えた。

「そうですか。分かりました。それでは私たちは出発します。ですがグウィン様に手荒なことはしないでください。私たちの恩人なのですから。」

村の代表はそう言って、カナトの森へ出発した。

その様子を見ていたスパーナも

「グウィン、俺たちも帰るぜ。後は好きにしな。また、いつか会おうぜ!」

と言って、ガルダ族を引き連れて去っていった。


グウィンとルルナとリアンとアステルの4人だけがその場に残った。

「昨日から隠れている2人!いい加減に出てきたらどうだ!気付かないとでも思ったか!」

アステルが弓を構えたまま目をやると、オイチとフドウが現れた。

「牙狼族か、お前たちもグウィンの仲間か!」

アステルは弓を引き絞り臨戦態勢に入った。

「お前は奴隷をどこへ連れていくつもりだ?」

グウィンはアステルに尋ねた。

「銅鉱山から真南へ行くとドリア・ズーファ公爵領の炭鉱がある。そこには約3000人のドワーフの奴隷がいる。公爵の兵も600人いる。そこへ連れていけば大丈夫だろう。お前たちも私の前から立ち去れ!今回は見逃してやる。」

アステルが言うと思わずルルナが笑った。

「何がおかしい!」

アステルはルルナを見て怒鳴った。グウィンはその一瞬のスキをついてアステルに鋭い爪で斬りかかった。

「甘い!」

アステルは素早く大きく後ろに飛び退いた。もとよりアステルはグウィンたちを見逃すつもりはなかった。わざと隙を作りグウィンに攻撃させて討ち取るつもりであった。

アステルは矢を放とうとグウィンを見たが、目の前に弓をつかんだ自分の両腕が落ちていた。


「なにいいいいいい!」

アステルの両腕は肘から先がなく、血が噴き出していた。

「バ・・バカな。なんという速さだ、いったいこいつは・・・」

大量の出血で意識が朦朧となり、アステルは膝をついてしまった。

「私とて勇者のはしくれ!両手がなくても魔法が使える・・・このまま死ぬわけには・・・」

アステルが最後に見たものは回転する景色だった。アステルの首はグウィンの剣のような鋭い爪で斬り落とされ転がっていた。


「これで残り6人だ!この首は記念にもらっておくか。」

グウィンはアステルの首を拾い上げ、さらにアステルの持っていたミスリル製の弓とナイフを拾った。

「ルルナ、リアン、弓とナイフのどちらが欲しい?」

「私にはナイフをいただけますか?リアンには弓をお与えください。」

ルルナがそう答えると

「分かった。」

と言ってグウィンはルルナとリアンにそれぞれ与えた。

「グウィン様にお聞きしたいことがあります。グウィン様はこれからも勇者を殺しますか?人間を殺しますか?」

リアンがあどけない表情で質問した。

「勇者は殺す。親の仇だからな。ほかの種族を差別して殺そうとする人間とは断固戦う。だが、もし平和を望む人間がいたら殺さないかもしれないな。」

「私は人間を殺したい。パパ、ママの仇、それからお姉ちゃんも殺された。ここにいるお姉ちゃんは死人。私は家族の全員を人間に殺された。だから、人間を・コ・ロ・ス。」

ルルナはリアンと昨晩再会してから、ルルナの身に起こったことをすべて話したようだった。

「グウィン様が人間を殺す時、私もお手伝いがしたい。私も力が欲しい。私に魔王の祝福を与えてください。」

リアンはそう言ってグウィンの前に跪いた。

「ルルナ、いいのか?」

グウィンはルルナの意見を聞いた。ルルナはリアンのそばに来てしゃがんだ。

「パパもママも死んでしまいました。私も死んだ。私はこれからリアンの為だけに生きていきます・・死んでいますけど。リアンが死ぬときは私も死にます・・もう死んでいますけど。リアンが天国へ行くときは私も一緒に行きます。リアンが地獄へ行くときは私も一緒に行きます。リアンのやりたいことは私もお姉ちゃんパワーで手伝います。」

「お姉ちゃん、ありがとう。これから一緒にたくさん人間をコロソウネ。」

グウィンはリアンに魔王の祝福を与えた。リアンの体はひと回り成長したがそれ以上に肌の色が変化した。今まで淡いピンク色だった肌が、全身薄紫色になったのだ。

「リアン!具合は大丈夫か?」

グウィンが尋ねると

「とっても気分爽快です。早く人間を殺したい!うふふ!」

リアンはそう言って笑った。

「グウィン様、ご心配はいりません。リアンはダークエルフになっただけですから。」

ルルナがリアンの変化について説明した。


「よし、それではこれからこの女の心臓を食べるぞ!」

グウィンがそう言うと

「はい。ただいま準備いたします。」

そう言ってオイチがやってきた。フドウは周囲を警戒していた。

「グウィン様、私の家で食べましょう。」

ルルナはそう言ってリアンと一緒に焼け落ちたルルナの家に向かった。オイチはアステルを引きずりながら後をついて行った。道すがらオイチはグウィンに話しかけた。

「グウィン様、少々お尋ねしてもよろしいでしょうか。」

「おう、なんだ?」

「この勇者はグウィン様と己の力の差というものに気が付かなかったのでしょうか?普通なら尻尾を巻いて逃げても不思議ではないと思いましたが。」

「宝珠ボケというやつかもしれん。」

「宝珠ボケ?」

「ああ、これまではいつも宝珠の力でとんでもなく強化されてきたから、素の自分の力が分からなくなっていたのだろう。」

グウィンの説明にオイチは感心して聞いていた。


ルルナの家に到着すると、

「グウィン様、私に調理させてください。」

と、ルルナが申し出てきた。

「大丈夫か?吐いたりしないか?」

グウィンは笑いながら言うと

「ご安心ください。あの頃の私とは違います。」

ルルナも笑いながら答えた。

「リアン、火を起こしてくれる?」

「うん分かった。」

リアンはそう言ってかまどに行った。

「私も手伝いましょう。」

オイチがそう言って、ルルナと一緒にアステルの服を脱がせた。ルルナはミスリル製のナイフで解体を始めた。

「まずはあばら骨を外してと、これが心臓、これが肝臓、子袋も美味しいし、胃と腸は煮物にしようかな、後で腸詰作ろうかな、あとどこの肉がいいかな。太ももの肉と肩肉とふくらはぎも美味しそう。あそうだ、グウィン様、先ほどの頭を貸していただけますか?」

ルルナはそう言って、アステルの頭を受け取った。そしてアステルの口を大きく広げ舌を付け根から切り取った。

「お姉ちゃん、火起きたよ。」

かまどには二口あった。

「鉄板とお鍋載せてくれる?」

「はーい」

「おっぱいも忘れちゃだめだよね。はい、リアン、鉄板の上にこれものせてね。」

ルルナはアステルの乳房を切り取りリアンに渡した。

「グウィン様、肉が焼けるまで心臓を先に食べてください。あ、そうだ。塩、塩。」

そう言いながら、ルルナは心臓をスライスにして塩を振りかけてグウィンに出した。

グウィンは青の勇者アステルの心臓を食べ終わると、体がピンク色の光で包み込まれた。空には黒い雲が現れ渦巻いていた。黒い雲がどんどん大きくなった時、グウィンと黒い雲の間に巨大な光の柱が現れてまばゆい光を放った。そして、その光は遠くからでもよく見えた。


「スパーナ様、グウィン様は勇者相手に大丈夫でしょうか?」

ガルダ族の兵士の一人がスパーナに尋ねた。

「今のグウィンなら心配はいらねえよ。宝珠を持っていない勇者なんか瞬殺だろうぜ!」

そう言うと、スパーナは空を飛びながらグウィンのいる方角を振り向いた。その時巨大な光の柱が現れ、強烈な光を発した。

「「「おおおお」」」

それを見ていたガルダ族の兵士たちからはどよめきが起こった。

「グウィン!おめでとう!出来ることなら今すぐ側に・・・」

スパーナはそうつぶやくとガルダ族の城へ向かって飛んでいった。スパーナは胸の奥の高鳴りに気が付いていた。


「今何か光らなかったか?」

「え?雷?雨が降るかもしれないから急ごうぜ!」

カナトの森を目指しているエルフ達は先を急いだ。


ガルダ族のガルトマン王はスパーナの双子の妹ケネスと一緒に居城から空を眺めていた。

「ケネス、今の光を見たか。」

「はい。お姉さまたちがいる方角です。」

「うむ。いよいよ始まるのか。」

ガルトマン王は新たな戦いの始まりを予感した。


賢者の洞窟の入り口からブロンテスが下界を見下ろしていた。

「おおおおお、あれはグウィン様の光!9代目!魔王様の誕生だ!」

ブロンテスが感極まったように叫んだ。


グウィンは、そんなことが起こっているとは全く知らず、焼き肉を食べていた。

「うーん、美味しいいいいいい!」

グウィンは初めて食べた焼き肉のたれに舌鼓を打っていた。

「我が家の手作りのたれですがお気に召していただけたらうれしいです。」

ルルナは嬉しそうに説明をした。

「お姉ちゃん、私も食べたい。」

「もう少し待ちなさい。」

「俺はもう充分だ。残っている肉は食べていいぞ。」

グウィンの言葉にリアンは喜んでアステルの肉を切り取りに行った。

そこへフドウがやってきた。

「グウィン様、イチタたちが到着しました。」

イチタたちは馬が苦手なミサトに配慮してゆっくり馬を走らせてきたので、到着が遅れたのだった。

フドウの後に続いて、ミサト、イチタ、サヤカも入って来た。

「うわああ!いい匂いですね。」

ミサトが言うと、

「ほんとだぁ、あああ、お腹すいたぁ!私も食べた~い!」

サヤカも叫んだ。

「サヤカ!いきなり失礼なことを!申し訳ありません!」

イチタが謝り始めた。

「ははは、遠慮するな!みんなで食べよう!」

グインがそう言うと

「皆さん!こちらへどうぞ!」

ルルナが全員を案内し、青空の下、焼き肉パーティが始まった。

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