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勇者de焼き肉パーティ  作者: 吾妻ゆきと
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プロローグ

残酷な描写がありますので、苦手な方はご遠慮ください。

◎プロローグ


ヘリオス王国の王宮では、5歳になる王女メーディアが暖かい寝室で柔らかなベッドに横たわり、クマのぬいぐるみを片手に祖母に絵本を読んでもらっていた。絵本は『魔王退治』という本で、最近王宮が発刊したものであった。

時に、ヘリオス歴(ヘリオス王国の年号)降魔50年の寒い冬の夜であった。


祖母は真新しい本の匂いのする絵本を片手にベッドに腰かけて読み聞かせをしていた。

「魔王の一族はね、1000年もの長い間、七色宝珠という魔法の道具を使って人々を苦しめて世界を支配していたのよ。」

「1000年も!?おばあさま、怖い!」

メーディアは祖母にしがみついた。

「そうよねえ。怖いわよね。」

祖母はメーディアの頭をやさしくなでながら話を続けた。

「でものね、人間は気づいたのよ。人間こそが神様が作った最も優秀な生き物だということにね。その人間が邪悪で下等な生き物に負けるわけがないわ。それでね、今から50年前に人々は勇気を出して悪い魔王と戦い退治したの。それは人間が自由を手に入れるための崇高で偉大な戦いだったわ。そして、それを記念してその年を降魔元年としたのよ。」

祖母は優しく微笑みながら話を続けた。


今から約1000年前、この世界にある人物が現れた。後に初代魔王と呼ばれたこの人物は、赤の宝珠、橙の宝珠、金の宝珠、緑の宝珠、青の宝珠、藍の宝珠、紫の宝珠と呼ばれる7つの魔法の腕輪を作った。この腕輪は七色宝珠と呼ばれこの世界にいる各種族(人間族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、巨人族、小人族、ガルダ族、蛇竜族)に対して分け隔てなく恩恵を与えていた。多くの人々は初代魔王を神とあがめ尊敬していた。


初代魔王が亡くなった後も、代々の魔王は初代の遺志を継ぎ、七色宝珠を使って人々の暮らしを豊かにしていた。しかし、初代が亡くなってから700年後、5代目魔王の時、人間の王国(ヘリオス王国)では、『魔王は神ではなく真の神は別にいる』そして、『人間こそ真の神が創った最も優秀な生物』であり、『人間は魔王の支配から独立して自由を手に入れるべきだ』という思想が広まっていった。そして、王国は機が熟したとみるや、5代目魔王を襲撃して殺害し、当時の魔王の城を奪い、七色宝珠を略奪した。(第1次降魔戦争:降魔元年)


「よかった。魔王はもういなくなったの?」

メーディアはほっとした表情で祖母を見上げた。

「それがね、魔王の一族の生きのこりと、それに従う亜人族や獣人族がいてね。ある時人間に襲いかかってきたのだけれど、王国の人々は力を合わせて見事撃退したのよ。」

「やった!すごいね!」

メーディアは嬉しそうに目をキラキラさせて聞いていた。

「そうよね、すごいわよね。そしてみんなが人間ほど素晴らしい生き物はいないって強く確信したのよ。それで法王様がおっしゃっていたわ。『この世界は人間が治めることによって、平和で豊かな世界になる。これは神様の御意思でもある。』とね。」

祖母はここぞとばかりに力説した。


5代目魔王が殺害された後、6代目魔王は奪われた城や七色宝珠を取り返そうと一族の力を結集してヘリオス王国に戦いを挑んだが、逆に七色宝珠を使う人間に倒され魔王一族は勢力を失っていった。(第2次降魔戦争:降魔3年)


その後、王国は、まず手始めにドワーフの領土ほぼ制圧し、多くのドワーフを奴隷として働かせ、ドワーフの独自技術であるミスリル製の武器や防具を作らせた。そして準備が整うと巨人族、獣人族の領土を侵略していった。七色宝珠とミスリル製の武具を使う王国軍に対して、両種族は劣勢になり、徐々に領土を奪われていった。


「でもね、その後、しばらくして、人間の心臓を食べてしまうそれはもう残忍で恐ろしい魔王が現れたのよ。しかも死の呪いを振り撒いて多くの人の命を奪っていったわ。メーディアのお爺様も懸命に戦ったのよ。でも、戦いの中で命を落としてしまったの。本当に悲しかったわ。それで、私たちにはどうすることできなくて、もうひたすら一生懸命神様にお祈りしたわ。」

祖母はとても悲しそうな表情をした。

「ええ、お爺様が・・・それでどうなったの。」

メーディアは祖母の手を握り、真剣なまなざしで聞いていた。

「そうしたらね、ある時7人の勇者様が現れてね、魔王をやっつけてくださったのよ。」

「良かった~悪い魔王は全部いなくなったの?」

「それがね、まだ残っているのよ。それでメーディアのお父様が勇者様と力を合わせて、私たちの幸せのために、今も魔王たちと戦っているのよ。」

祖母もメーディアの手を握り返し、メーディアを優しく見つめた。


7代目魔王は人間の心臓を食べることで強力な魔法を手に入れることに成功した。そこで、王国に侵略されていた巨人族、獣人族、ドワーフ族の残党と協力して魔王軍を結成し王国に戦いを挑んだ。


魔王軍は王国軍を次々と打ち破り追い詰めていったが、王国に勇者と呼ばれる7人の人間が出現した。7人の勇者は一般の兵士が宝珠を使う場合よりもはるかに大きな力を引き出すことができた。そのため、非常に強力な軍隊を創り出すことができた。

7人の勇者により7代目魔王は討ち取られ、魔王軍は一気に崩壊した。そして、残された魔王の一族も滅亡に瀕した。(第3次降魔戦争:降魔35年)


7代目魔王との戦いで大きな被害を出した王国は、その後15年間、荒廃した国土の復興と軍備増強に力を入れていたが、この年(降魔50年)、魔王軍に加わった巨人族と獣人族に対して攻撃を再開した。そして、生き残った魔王一族の殲滅の準備を始めた。


「勇者様はすごいですね。」

「本当にそうね。でも大勢の人の命が奪われて大変だったわ。それで、みんなで力を合わせて国を立て直そうと一生懸命働いたのよ。でも、魔王たちとの戦いはいつ終わるのか分からないの。メーディアも大きくなったら、おじい様やお父様のような立派な男の人をお婿さんにして世界の平和を守るのよ。」

「えへへ、素敵な人と結婚できるかな?」

メーディアは照れ笑いを浮かべていた。

「大丈夫よ!メーディアは世界で一番かわいい子だから、世界で一番素敵なお婿さんが来るわよ。」

祖母はメーディアを見つめ、力強く断言した。

「うれしい!」

祖母の言葉に、メーディアはまだ見ぬ王子様に心をときめかせていた。


10年後(降魔60年)、祖母の三回忌の夜、15歳になったメーディアは城の屋上から星空を眺めていた。十三夜の月がメーディアを明るく照らしていた。

「いよいよ魔王と最後の戦いが始まります。神様、どうか人間にご加護をお願いいたします。一日も早く平和な世界が訪れますように!」

メーディアは心から祈りをささげるのであった。

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