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ユメ紡ぎコーヒ店  作者: 狼 悠里
7/8

奇妙なバイト業務 2

黒ワイシャツに灰色のベスト。首元には真っ赤な蝶ネクタイをしっかり結び、足を長く見せるような黒のスーツ生地ズボンスタイル。まるで執事服のような仕事着に身を包みそれぞれ扉に近づく。

これが僕、クロさん、コウさん3人の仕事スタイルでありお客さん対応の仕方である。


カランコロン


店の扉が開く。休憩時間後のお客さん。いつでもどんな時でもお客さんには笑顔で対応!これが飲食店の基本だ。

店内に入られた初めてのお客さんに対し、それぞれが自身の胸に手を当て斜め45°をキッチリ守りお辞儀をする。服装だけでなく対応まで、まるで執事さんだろう。それもそのはず、この店はイギリスにあるようなお客様ファーストの心意気をモチーフに店長のクウさんが考えたらしいのだ。よって服装から対応までがこの状況なのだ。

だからこそ、初めての時は緊張感して上手く出来なかった。普通はやらないでしょ?どっかの執事喫茶かよ?って思いましたよ、ほんと。だが今になっては完璧だ。

だから自信をもって言える。


「「「ようこそ、いらっしゃいませ。カフェ”ユメ紡ぎ”へ」です。」人間さん。」


どうだ、このなじみ感!我ながら良いと思う対応の仕方。こんな感じでスタッフそれぞれの迎え方が、言い方があるが基本はこのスタイルだ。

そんな僕達を他所に、最近では見かけない女性二名のお客さんは、一瞬面喰らったかのように驚いた表情を浮かべたが「なるほど」と呟き途端に顔を見合わせとたんに笑顔になる。

お客さんが僕以外のクロさん達の姿を見て驚いた理由それは…

人間の姿には無いはずの特徴的なそれぞれ違う色の三角の獣の耳。それと腰から生えるフワフワの尻尾が全てのスタッフに付いているのだ。


(毎回思うよ、このカフェはキャラがぐちゃぐちゃじゃないのか?って)


だが、この姿での接客にも理由があるのだそうで…クロさん達が言うには自分たち狐の中で力がある狐の事を”妖狐”と呼び、他の狐とは違い”試練を積む事”で神にも仕える事が出来る、いわば選ばれた狐みたいなものらしい。

しかしいくら妖狐と言えど”完璧”に人になれる訳ではない。感情が昂ぶったり力を使うと狐に戻りかけてしまう事もあるらしい。

よって店長曰く


「バレてしまう恐れがあるなら、初めから隠さないでいた方がいっそ清々しいだろう。」

と言うわけでこんな感じである。


そして元々妖狐の中には、完璧に人に化ける者と中途半端にしか化けられない者とが居るらしい。だから丁度いいらしい。


(まぁ、もふもふが見れるならこれでもいい気がするけどね。)


因みにクロさんは、後者の方である。出来ないわけではなく長時間保たないだけだが…と本人は言っているが。



「お客様どうぞこちらの席へ。」


(「店員さん、カッコイイね!」

「耳も尻尾も本物みたい!かわいい、もふもふしてるぅ」)


意外とこれはこれでお客さんには高評価らしい。後ろを小声で喋っている内容がちらりと聞こえるたびに良かったって安心する。

いつもこんな感じで聞かれたり不思議に思われないから実は実際聞かれた時にどう対応していいかとか知らない。しかも最近では考える事をやめている。 僕は、勝手に納得してくれた事で難を逃れた。


(いつも通り根掘り葉掘り聞かれず一安心。)


初めて来店したらしいお客さん達の反応を見て、僕以外のスタッフは厨房の後ろで小さくハイタッチをした。

その後も次々来るお客を席に誘導し、当店自慢のコーヒーとサンドイッチを提供する。するとあるお客さんの言葉がきっかけとなり急に状況は変わった。


「あのぅ…」


注文されたコーヒーをテーブルに乗せ終えたばかりのお客さんが急に辺りをキョロキョロと落ち着かない様子で小さく声をかけてきた。


「どうかなさいましたか?」


「えっと…あの店員さんは、女性ですよね?」


内心”なんだそんな事か”と思いつつ指を指されたクロさんを見た。

実はこの店の衣装は、男性でも女性でも気兼ねなく着ることが出来、お客さんにも新鮮感を持って頂けるようにとのコンセプトのもと男女統一で作製されている。

だから男に間違えられても仕方ないと思う。

またクロさんは、姿が分かりやすいようにと後ろで一つに束ねた長い黒髪だからわからない事もない。最近そういう人もいるからね。そして狐の耳をひくひくとさせ聞いていただろうクロさんがお客様にも見やすいようにと髪を片手で持ち上げ言った。


「この通り女ですよ?人間さん」


2人のお客様は、頰を真っ赤に染め恥ずかしそうに「そうですよね」と言った。

相変わらず人間さん呼びはやめた方が良いんじゃないか?と思いつつ僕はその場を軽く会釈して下がる。


その後も次から次とお客が入り出した。店内は昼間だけあって大盛況だった。が、来店客の殆どがその都度小さな声で呟いた言葉。


(ここ、コスプレカフェだって!)

(本物みたいで可愛い!尻尾もモフモフしてる!)


小声で話すがクロさん達には自慢の耳がある為すぐに聞こえた。


(まぁ、きっと人間から見たらコスプレなのだろう。ってかコスプレイヤーで良いんだろうか?)


少々謎に思いつつも業務をこなし、昼間の忙しい時間帯を難なくこなした。

案外クロさん達の格好が”コスプレ”という形で人間に受け入れられているのだと分かった。溶け込んでいるんだと実感する。


夕方からの時間。ようやく僕達が待ち望んだある”出来事”が起きたのだ。クロさん達の言っていた”試練”がこの日ようやく始まったのだ。

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