青年と奇妙なバイトの始まり2
今度はヘソを曲げてしまったクロさんに対し「はぁ…」と項垂れるコウさん。意外とよくある様子だったらしい。実際”この後”僕にとってはいつもの光景になった。
「ま、説明するね。クロは、ほっといてさ。」
「はぁ」
『ほっとくなよ!』と小さく抗議するがコウさんは知らん顔で話しを続ける。
「私達は、神様に仕える狐の化身。ま、見習いみたいなものかな?神様に仕える狐になる為に私達は、人間界に店や自宅を持ち人の生活に一定期間加わる事がある。」
『こほん。そこで、人間さん達の悩みや不安を聞き、癒しを与える事で人間さん達に幸福を与える。』
「そう。そしてより幸福を与えた狐が次の神様に仕える権利を得る事が出来る。見習い終了で一人前になるって事。」
「それで、なぜ僕を?」
急に始まった彼らの話をふむふむと真剣に聞き頭に入れようとしていた蓮だが、ふと疑問に感じた。神様に仕える狐というのがほんとに居て、修行じみた事をするなら何故一般人を雇うのだろうと。
ならばお偉い狐さんに選定してもらえばいいんじゃないか?と疑問に思った。
「ふふっ、話にはまだ続きがあるんだよ。自宅を持つ場合はまた別なんだけど、店の場合。店員さんの中に一人だけ人間を雇う事が条件にあるんだよ。」
「何故ですか?」
『あくまでも私達狐は、人を癒す事が重要とされている。だから選ぶ基準は人間さんにあるんだよ。私達が身内の中で決めては有利不利があるからね。」
「はぁ…それで僕、なんですか」
「今回はクロに”決定権”があるからね。」
「決定権?それは人間を決める権利って事ですか?」
僕がそう聞くとコウさんは僕の膝の上に居るクロさんの頭を撫でながら答えた。
「そう。私は白狐。彼女は黒狐。毎回この選定が始まるたびに白狐が人間を選び、次の時は黒狐が人間を選ぶ。平等でしょ?」
「まぁ。と言うことは今回はクロさんが僕を選んだと言うことですか?」
『御名答だ。人間さん』
ふふん。と言いながら膝の上で誇らしげなクロさん。
誇らしげにされても僕に何の意味があるのかよく分からないと言い返す蓮に畳み掛ける様にクロは言った。
『試しに、やってみればいいんじゃないかい?人間さん。何もかもを知らなきゃ出来ないなんてつまらないじゃないか?』
「それは…」
クロさんの言う通りだと感じた僕は何も返せなかった。確かに僕は、平凡な毎日より刺激ある毎日の方が魅力的だし楽しいのではないかと考えてはいる。
だからこそ…クロさんは言ったのだ。僕の心揺さぶる言葉を…
そしてこの日から僕は”ユメ紡ぎコーヒー店”の店員になった。
クロさんの言葉”変化に困らん日々”に惹かれバイトをする事になった。




