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ユメ紡ぎコーヒ店  作者: 狼 悠里
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青年と狐

県でもトップクラスの大学を受験し、見事受かった僕”神郷 蓮”は、とある奇妙な喫茶店でアルバイトをしている。遡る事、数週間前それは起こったーー


大学デビューを果たした僕は、特にやりたいことがある訳も無く入学した大学に通い始めてまだ10日で大学生活には刺激が無く”ツマラナイ”と感じてしまった。…我ながら早すぎるとは思う。

授業が休みのある日、暇つぶしに地域をブラブラと散歩しようと急に思った僕は近くの神社まで行くことにした。その神社で奉られる生き物は狐。いわゆる稲荷神社だ。


「ここも、昔と変わらないなー」

空を見上げると真っ青な世界が広がっていた。変わらず大きな建築物もないこの町では心地よい風が吹き、景色は落ち着いた感じだ。これが田舎の良さなのだろう。

そんな僕は、たまには散歩も良いのでは無いかと感じた。慌ただしく始まった大学生活のふとした休息のような感じがした。


「思い立ったらすぐ行動だな!よしっ」

昔から直感で動く僕は、その直感で神社に参拝しに行くことにした。これから先の大学生活の安定でも祈願してくるか、という軽い気持ちで僕は歩みを進めた。

神社までの一本道をのんびり風に揺られ歩く。田舎だけあって同じ様に散歩して居るのはおじいちゃんやおばあちゃんだ。ゆるりとした田舎の風景そのものだ。

そんなおじいちゃんやおばあちゃんに「おはようございます」と小さく会釈しながら神社に向かう。神社へは、町中から続く大きな鳥居を五本潜って行かなくてはいけない。その鳥居の端ギリギリを歩き潜りながらまたのんびりと歩く。


「確か、神社の鳥居は真ん中通るのはだめなんだよな?うん、確か神様の通り、道?だとか…」

小さく独り言を呟く僕には、神への信仰心などかけらも無いがこの小さな町で散歩といえばこの神社くらいだ。

(神社なんだから礼儀くらいはわきまえないとな)

そうしながら一本、二本、三本と潜るように頭を下げて歩き、どんどん神社に近づいて行く。

すると僕の目の前に一匹の犬のような動物が居た。


「迷子…犬、か?」

僕の目の前には動物が確かに居た。基本的に神社の周りに居るのは猫では無いだろうか?

…でも僕の前には、猫では無く犬に見えた。それも僕の方をじっと見つめているように見えた。…気のせいだろうか?

僕は、不思議に思いながらも犬に近寄り首輪やリードが無いか確認しようと近づく、飼い主が分かるなら迷子かもしれないからだ。よく見るととても毛並みが綺麗に見えた。きっと迷子に違いないと確信した僕の横を犬は、さっと隙間をぬって逃げる。どうやら捕まる気は無い様だ。僕は何度も捕まえようとするが犬はひょいひょいと僕を避けトコトコと先へ進んでしまう。

「ちょ…ちょっとまっ!」

何故か僕は、犬がほっておけなかった。…きっとほっておけばこの先に起きる出来事は起きなかった筈なのに…


(ほっておいて事故なんか起きたら面倒だ)

仕方なく僕は犬の行く先を辿ることにした。心配と不安な僕を余所に犬は、テクテクと進んで行く。

気のせいか犬は、僕をチラチラと確認しながら進んでいる様な気がした。

よく見ると犬の尾は、普通の犬より長く、耳もよく見る犬と何処か違う気がした。ましてよく見ると色が茶色より黄金色に近く、先端に白が混じっているような気がした。

この時僕は、僕が追っているのは犬じゃ無いのかも?と思い始めて居た。


「あれ?ここは?…ちょっ、ねぇ君っ!…待って、ちょっと!?はぁ、はぁ…ったくここどこだ?」

気がつくと僕は犬を追っていた為に、知らない間に神社から遠ざかっていた。しかし、道も本来の道とは離れてしまい、もうこの(かもしれない)について行くしか選択肢は無くなって居た。

今更戻るのも癪だとこの時の僕は思って居たのかもしれない。

その後も僕は、階段の登り降りを何度も繰り返し喉がカラカラに渇いた状態の僕を誘導するかの如く進む(かもしれない)について行った。するとようやく、先導をきっていた(かもしれない)の速度が遅くなり、ようやく一軒の店の前に辿り着いた。

看板前に(かもしれない)が座り込み僕を見つめて来た。


「はぁはぁ…ようやく…っはぁ、止まったぁ…ここは?君はここの子なのか?」

言葉も通じないだろう犬に聞いては見たがやはり、返答は返ってこない。流石に僕は脱力した。

「はぁー、どうするんだよ?此処まで連れて来ておいてさー」

返事なんかくる筈のない相手に質問をする。…なんて哀しいものだろうか…

だが、驚く事に急に目の前から声がした。

『くわぁ〜あ。はぁー、人間は体力ないねぇ〜。ま、いいや。おーい、お客だよ〜1名様ご案内』

急に聞こえた声に反応し顔を挙げるとそれは呑気に欠伸なんかしながらパクパクと口を開いて喋っていた。

「え?な、え?犬、が…喋ったぁ!!」

驚いた僕は、その場で情けなくも腰が抜けてしまった。この歳で腰が抜けるとは…情けない、ほんとっ情けない。

「夢?っ夢だ!夢。…お、落ち着け…落ちつっ」

『アー!ったく、何が夢だ?まぁ、いいや。…ん?あっ!!よく無い!ちょっとまてよ人間さん。私は犬じゃない!狐だ!全く失敬な人間さんだなーー』

と苛立ちをもふもふした尻尾をバタバタと地面に叩きつけながら言う。

「え、あ、すみませ…ん?」

なんと無く謝ってしまったが、ごく普通に会話する犬、では無く”狐”だった。そして余裕で話しかけて来る。これで驚かない訳が無い。さらに動揺する僕はなんとか軽く落ち着きを取り戻しつつ聞いた。

「えぇっと…な、なんで話せるの!?え?なに、やっぱり夢とか??」


先程よりさらに呆れた様子の狐が口を開きかけたその時扉から1人の男の人が出てきた。

「はぁ、クロさん。お客になんて言いかたしてんですかぁ?」

『おーコウ。人間さんの方が失礼なんだよー』


狐と対等に会話するのはすらっとした長い黒髪でタキシードを来た人だった。…ちなみにこの時の僕は、”彼”を”彼女”だとは全くと言っていいほど気づかなかった。

腰に片手を置き、軽くお辞儀し「いらっしゃいませ」と言う彼女は僕と同じもしくは僕より少し年上に見えた。とても綺麗な顔立ちで、今思うと僕のタイプだった。

その姿に目を奪われた僕だったが、狐と何故対等に話しが出来るのか疑問であり、この人が”ただの人”では無いような気がしていた。


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