籠の鳥
どうやらぼくは疲れて寝てしまったようだ。白い部屋なんて夢だといいな。そんなことを思いながら目を開ける。真っ白だった。まあ、そうだよね。
辺りを見回してみると部屋の端に何かあるのを見つけた。
やった!何かある!
急いで近づいてみる。そこには、白く細長いものが壁から伸びていた。それと、近くには白い便器があった。
いつの間にこんなものが。それにどうやって。というかこれ、トイレなのかな。でも仕切りはないんだ。まあ、誰もいないからいいんだけど。細長いのは何かな。
白く細長いものに手を近づけてみる。すると先から水が出てきた。落ちた水は、床の隙間に吸い込まれていく。
水だ。丁度喉が渇いてたんだよね。でも、その前にトイレ我慢してたから済ませてしまおう。
トイレを済ませると水は自動的に流れた。
次に細長い管に口を近づけて水を飲んだ。
冷たくておいしい。
ぼくはしばらくの間、水を飲んでいた。
生き返ったー。
水を飲むことができて、一息つくことができた。
後から考えれば少しは警戒するべきだったんだろうけど、その時のぼくはそんなこと考えもしなかった。
さて、水が飲めるようになったので一安心。トイレもあるし、これでしばらくは大丈夫かな。あとは食べ物。
そう思っていると、少し離れたところから音がした。何か上から落ちてきたみたいだ。
音のした方に近寄ってみる。けれど、何も見当たらない。
もしかして、落ちてきたものも白いのでは。そう思ってしばらく床を探してみる。
10分ほど探すと、白い固形のものを4つ見つける。近くで見るとどうやらキットカットのような感じのものみたいだ。
もしかして、これが食べ物?
匂いを嗅いでみるが、匂いはない。舐めてみる。味はない。
・・・これは食べ物なのか?
よくわからなかったので、ぼくは白いそれを服のポケットに入れておくことにした。
ぼくは嬉しくなった。色んなものが手に入ったから。
ありがとう。これをくれた人。
ぼくは感謝していた。
何もすることがなさすぎて、暇を持て余していた。誰もこない。でも、ぼくを生かすつもりはあるみたい。今頃、お母さんとお父さんは心配してるだろうな。ほんと、なんで誘拐されたのかよくわからない。
そんな風にしばらくは家族のことを考えていた。その後は、なんで誘拐されたのかをひたすらに考えていた。
なんでぼくだったんだろう。子供が好きな変態の大人だったから?でもそれにしては、1度も姿を見てない。そもそもここはどこなんだろう。それにこの白い部屋はなんなんだろう。ぼくを誘拐するためにこんな手の込んだ部屋を作ったのかな。
考えても仕方のない考えが頭を駆け巡る。しばらくすると、さっきまでの嬉しかった気分が嘘のようにまた不安になってきた。
「あー」
大声で叫んでみる。返事などない。
「あー。あー。あー」
叫び続ける。返事はないのに。
そうして時間は経った。
お腹すいた。さっきの白いやつ食べてみようかな。
ポケットから白い固形のものを取り出して、食べてみる。
味はない。けど、食感はカロリーメイトのような感じだ。一応食べ物なのだろう。・・・たぶん。
4本食べ終えると、お腹が膨れたからか眠くなってきた。眩しいのでうつ伏せになって腕を組んで寝ることにした。
そうして、その日は終わった。