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ブラインドソード(盲目の剣)  作者: 雛月いお
ソロプレイヤー脱出
7/29

南国を観光できると思いきや

「お買い上げありがとうございます」


道具屋のNPCはいつも通り、回復道具を買った私に頭を下げた。


ボスリザードの討伐に成功してからというもの、私は受注可能クエストを着々と増やすことに専念していた。しかしボスリザードのような巨大生物とは未だ出会うことができていなかった。色々な情報を掲示板や先駆者のブログなどで集めていくうち、あのボスリザードと次に正規のクエストで出会うことができるのはもう少し先だということが分かった。そして乱入クエストをクリアしたプレイヤーは極めて少ないことも分かった。


『炎弾直撃ワロエナイ』

『運営のドSっぷりがよく理解できたようん』

『マジでうるさかった』


掲示板を見ていて皆私と全く同じことを感じたことが面白くて笑ってしまった。これから巨大生物を討伐した後は掲示板を見ることを習慣づけてもいいかもしれないね。



ここはプレイヤーが集う街≪カルガスク≫。今私は街の海沿いにあるベンチに腰掛けて半透明で板状のキーボードとウィンドウをなんとなく見つめていた。ゲーム内でプレイヤーが手に入れたアイテムを販売することができるシステムがこのブレイブソードにはあって、先駆者たちが好きな名前を付けて開いているお店を見あさっていた。現世でいうネットショッピングと同じ感覚である。


特に私が重点を置いているカテゴリはずばり服なのですよ。

今私が着ているのは初期コスチュームだ。同じ服を着ているプレイヤーを飽きるほど見てきたからいい加減新しい服が買いたくなってきていたのだ。せっかく目が見えるからおしゃれもしたかったし。


現実だとどれだけ着飾っても自分じゃ見ることができないから正直服とかどうでもよかったんだが、ここでは違う。着飾れば着飾った分だけ喜びに代わるのだから着飾らない理由がない。私も一応女の子なのだ。


出品されているコスチュームは課金して回すことのできるガチャで手に入り、それは全て運営側がデザインしたものである。現時点ではそれ以外に存在しない。


....とはいったものの、まだサービスが開始されてそう長く経っていないせいか非常に数が少ない。しかもいまいちピンとくるものがないという有様。なんてこった。


これはアップデートを待つしかないかな。別に今の服が気に入らないわけじゃないし。


私は大量に開いたウィンドウをすべて閉じ、目の前に広がる広大な海を眺める。



何年ぶりだろうか、海を見るのは。

頭に浮かんだのは、小さいころ春香と海水を掛け合った時の記憶。


懐かしいな。



私は軽く息を吐き、一伸び。ベンチから立ち上がると、ここから一番近いカルガスクの南端にあるクエスト受注所兼酒場を目指して足を動かしていった。


今日も今日とてクエスト攻略といこう。




ーーーーーーーー





「ふぅ」


今回のクエストもボスリザードに比べてしまうと天と地ほどの難易度差があった。ウサギ型の中型エネミーの討伐が目標だったのだが、その目標の動きがいくらなんでも遅すぎる。大真面目に剣を振っていたら一歩も動くことなく力尽きていってしまった。流石に可哀想に思えてくる今日この頃。


だってちょっとかわいかったんだもん。


しかしボスリザード以来初めてやや大きめのエネミーと出会った。もしかしたら何らかの巨大生物討伐クエストが受注できるようになったかもしれない。


酒場に戻ろう。



ーーーーーーー





酒場に戻った途端、私の視界に見たことのない「!」のアイコンが出現した。


とりあえずそれに触れてみた。


『 海岸エリアにて未確認生物の大規模な反応を確認。海岸エリアへ赴き、調査をお願いします。

    新エリア≪海岸≫へ行けるようになりました。      』


おお、なんか盛り上がってきたね。


私は即座にクエストを受けるべく、カウンターに近づくことで現れる「クエスト一覧を見る」アイコンに触れた。


すると一覧の下に先ほど出た海岸エリア探索のクエストがあった。その上にはなんと「ボスリザード討伐」のクエストがいつの間にか表れていた。


ウサギ型エネミーを倒す前は確かにこのクエストは一覧に載っていなかったはずだ。多分、本来はボスリザードを倒さないと海岸エリアに行くことができないんじゃないだろうか。チュートリアルで倒したから二度目は必須ではないですよ的な運営の思いやりだろうか。


まぁうるさいから二度も戦いたくないけど。


私は大人しく「海岸エリア探索」のクエストを受注することにした。




ーーーーーー


ーーーー≪海岸エリア≫ーーーーーー


そこはまるでというか、まさしく南国だった。

頭上から激しく照り付ける太陽、白い砂浜、透き通る海水。絵に描いたようなそれに私はしばらくの間目を奪われてしまっていた。

砂浜にはヤシの木みたいな植物も生えているし、見渡せば岩場も広大に広がっていて、白い砂透き通る海水に見飽きるということは無さそうだ。


私は探索と観光を兼ねてゆっくりと海岸エリアを歩いて回ることにした。



私は海外に行ったことがなく、沖縄にも行ったことがない。だからこんな素晴らしい海は見たことがなかった。時折吹き抜ける優しい風がとても心地良い。

この景色を見れただけでも、私は仮想空間に来れて本当に良かったと思う。正直戦闘なんかどうでもよくなるくらいに感動している。



そんな私の視界に『ルチアがパーティに参加しました』という通知が小さいウィンドウで現れた。見ると、いつの間にかクエスト参加人数は二人になっている。


ブレイブソードは他プレイヤーが受けているクエストに途中参加することができる。まぁこれはオンラインゲームの定番というやつだろう。ちなみに限界人数は四人らしい。

参加可能条件として、参加するクエストが自身のクエスト一覧に出現済みでなければならないらしい。私は今の今までずっとソロプレイだったから細かいことはわからないが。


これは合流するかとても迷う。このクエストに参加できるということは少なくともボスリザードを討伐しているはずだから、それなりに実力を持っているはずだ。だったらわざわざ合流するより手分けして探索したほうが効率はいいかもしれない。


悪いけど一人で行動してもらおう。


私が一歩踏み出そうとした時、岩場のほうからとても大きな爆発音がした。


火山は見当たらないから爆発音が定期的に響く地形ではないだろう。だとしたら噂のルチアさんが既に巨大生物との戦闘を始めているのかもしれない。


私は岩場を全力で駆け抜けていった。




ーーーーーーー





岩場には思ったより木が生えていて、私は岩と木の根の両方をうまく踏み分けて進んでいった。

しばらくして、爆発音の発生地点の近くで私は木の枝に止まった。下を見下ろすと、岩が入り組んでできた洞窟があるらしく、岩と岩の間から中の様子が多少だが見ることができた。


私が、洞窟内にいる人物が小柄な女の子であることを確認したと同時に、その女の子は自身の真正面から放たれた巨大な水弾によって吹き飛ばされてしまった。女の子がどこにどこまで飛ばされたのかまでは確認できない。

女の子の後を追いかけるように、私が見ていた隙間には首の長い巨大な生き物がゆっくりと歩ていくのが見えた。


私は木から飛び立ち空中で剣を抜く。高所からの落下は初めてだが、スカイダイビングやバンジージャンプを好き好む人たちの気持ちが分かったような気がする。清々しい。


振りかぶった剣を巨大生物の首目掛けて振り下ろした。落下の勢いが加算された私の剣は、巨大生物が持つ長い首の鱗を何枚か削ぎ落とすほどの威力を持っていた。


着地し、女の子と生物との間に割って入るように距離をとる。




「ここからは...私が相手だよ」

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