《番外》 冬香のために
今回は春香視点です
冬香は変わった。
正確には、あの忌々しい病が冬香を変えてしまった、だろう。
私は冬香が好き。
私のわがままにも付き合ってくれるし、なにより一緒にいる毎日が楽しいからそう思う。
ゲームだって、冬香と一緒にやったらきっと楽しいだろうな、なんて思いながら広告見ているだけで自然と笑顔になった。
でもある日、冬香はゲームができなくなった。
それだけじゃない、私の顔さえ目で追えなくなってしまっていた。
お母さんは遺伝性の病気だと言っていた。
だったらなんで私は健康なんだろう。それが私たち双子が唯一違う所。
できることなら私の片目をあげたい。冬香の苦しみを、障害を、少しでもいいから一緒に背負いたい。
そんなのできないって.......わかってる。
毎朝、私が起きる頃に冬香は家を出る。冬香は口に出さないけど、本当は早起きがとてもつらいって絶対思ってる。双子だから、ずっと一緒にいたからわかる。
でも冬香はなにも言わず靴を履こうとする。
病気がなければ早起きなんてしなくて済んだのに。
病気がなければ一緒の学校に行けたのに。
病気がなければ中学校で一人にならなくて済んだのに。
病気がなければ、なんて、病気にかかってない私が言えるわけないけど。
私はずっと一緒だったはずの冬香に、どういう態度をとればいいのかいつの間にかわからなくなっていた。だって私は病気にかかっていない。冬香にとっては完全に嫉妬の対象でしかないだろうと思ったから。
どこまで気を使えばいいのか、どこまで今まで通り接していいのか、わからなかった。
そんな私のせいで、いつの間にか冬香との距離は取り返しのつかないほど遠くなっていた。
冬香が苦労している所を目の当たりにすると心が痛い。冬香を見るたび涙が出そうになる。
何か私にできることはないのか、どうにかして冬香の本当の笑顔を少しでも見ることはできないのか。
高校に入学してようやく一つの答えを見つけた。
近頃話題の体感型ゲーム機。説明文や原理や仕組みを一通り目を通して、冬香の病気を完全に無視できるかもしれないという希望が芽生えたのだ。
私はいつ完成し発売に至るか見当もつかないそれのため、バイトを始めた。そしてそのお金で冬香の分のゲーム機を絶対に買うのだと決心した。
死に物狂いで働いた。それでも成績は落とさないように勉強もした。
正直、体が持つはずがなかった。それでも冬香のためだと思うと休んでなどいられないという気になり体が勝手に働いていた。決意は揺らいでいなかった。
それでも十一月、私は倒れた。
それからお父さんお母さんに怒られたりしたけどこの生活を止める気はなかった。
そしてついに体感型ゲーム機が発売された四月、私の貯金はかろうじてゲーム機一台を買うことのできる額は溜まっていた。
すぐにでも買おうと思った。
でも買ってどうする、なんて冬香にいえばいいのか。
私は止むを得ずお母さんに相談することにした。
「お母さん、相談があるんだけど」
「なに春香、あなたが相談なんて珍しいわね」
「これさ、冬香に買ってあげたいの、もしかしたら冬香も不自由なく遊べるかもしれないから。.......でもね、私なんて言ったらいいかわからなくて」
「......なるほど。今日ね、あの子もこれが欲しいって私に言ってきたの」
「え」
「条件を受け入れたから買ってあげることにしたのよ。高いから全額の半分は冬香の貯金から出してもらうけど」
「それさ、全額か、そうじゃなくても冬香が払う分は私が出したいの。そうしないと私の気が済まない」
「そのために一年間働いてきたんでしょうからね。いいわ、冬香の方も半分払いなさい」
「冬香のほう?」
「あなたの分もあなたが半分払いなさい。もう半分は私が出すわ」
「え、いいの!?」
「あなたは少し頑張りすぎよ。とにかく少しは休んだほうがいいわ」
「ありがとお母さん!!」
「ふふっ」
願わくば冬香と一緒に遊べればいいな。
それよりまず現実の方で冬香との距離を縮めないとね。




